第四十話 興味はないね
《義経の屋敷:桃太郎》
「てめぇ! 駿河に何をしたんだ!!」
弁慶さんはそう叫んで背負っていた
『
「くっくっく。危ないねぇ」
偽物はまるで当然かのように
少ない動きでかわした。
そして、偽物の頭部には気づけばツノが生えていた。
「桃太郎君下がって!!」
ティナさんが僕の前に立つ。
「おい、お前ら! こいつは俺が引き受ける!! 駿河のおっさんの場所も聞かにゃならんしな!! お前らは先に行け!!」
「弁慶さん!!」
「心配するな。こんな雑魚、さっさと倒してすぐ追いついてやっからよ!!」
そう振り返らずに弁慶さんは言った。
「ここは弁慶に任せてワシらは行くぞ」
「……行こっ、桃太郎君」
ティナさんは僕の手を取り走り出す。
「おいおい、俺抜きで話を進めるのはやめて欲しいんだが」
そういって偽物は軽々しく弁慶さんを飛び越して僕に迫る。
「行かせっかよ!!!」
弁慶さんは偽物の脚を掴む。
掴まれた偽物は身体を翻らせて、
鋭利になっている指先を弁慶さんの顔へと伸ばす。
だけど、弁慶さんはそのまま力づくで
偽物さんを畳にたたきつけた。
「行け!!!」
怒鳴る弁慶さんに応えるべく僕も走り出す。
「やれやれ。お前さんみたいなのは苦手なんだがね……」
「そんなの知らねえな。お前はここで俺に倒されろ」
二人のそんなやり取りを背中で聞いて、
僕たちは壺の下の通路へと逃げていった。
──────────────────────
《草間町:ロミオ》
僕はスノウと別れて町を東へと歩いていた。
本来だったらもうじき門につくところだったが
現実はそうじゃない。
僕はとんでもないモノを目にしていた。
「止まれ!!!」
僕はソイツを制止させようと声をかける。
「……なんだお前は?」
とんでもない奴らは複数いる。
大きな人間。これが鬼だろうか。
だが中でもこいつだけは許せない。
逃げ惑う親子の親を狙い、
それもわざと殺さぬよう脚だけを狙う手段。
泣き叫ぶ子を見て笑い、
子どもの前で親の頭を打ち抜く所業。
「それ以上はさせない。この外道め!!」
ソイツは服を見る限り、
矢を撃ちこまれたのだろう。
数か所に穴が開き、
周りには血が付着していた。
ただし、傷はもうふさがっているようだ。
頭部にはツノが生えている。
獲物は弓。
僕との相性は悪くない。
「誰だお前はと聞いている」
「君に名乗る名は持ち合わせてないね。これだけわかっていればいい。僕は……君を裁く者だ」
「世迷言を……」
そう言ってソイツは僕に弓を向ける。
いくつもの矢が僕をとらえ向かってくる。
が、
威圧感がまるでない。
僕は迫りくる矢を『剣』で切り払う。
「貴様、どこからそれを出した?」
「答える義務はない」
僕は剣をソイツに突きつける。
「ふんっ。まぁいいが、そんな離れたところからどうするつもりだ?」
「こうするつもりさ。『
僕の
これはいわゆる
僕は間髪を入れずその
無数の散弾は奴を襲う。
「なんだこれは!!」
奴はすっとんきょうな声を上げ、
手を自身の前にクロスして防御に徹した。
雨が降り注ぐかのような銃弾が
奴の肉体を突き破っていく。
「くそがぁ! どいつもこいつも!!」
奴は自身から翼をはやし、空へと場を移した。
「死ね! 死にやがれ!!」
そう言って無作為に打ち続けるが、
先ほど同様、僕には児戯にしか見えない。
「どうやら君はテンパると精度がすさまじく落ちるようだね。唯一の長所だったようだが……」
僕は僕に当たりそうなものだけを選別し、
かわし続ける。
幸い、空に飛んだことで距離が開く。
さっきよりも随分と容易だ。
すると、後ろに気配を感じた。
振り返ると拳を振り下ろす大きな鬼。
その対応に気を取られていると僕の足元に矢が跳んできた。
「危ないところだったよ。この組み合わせは厄介だ」
僕は迷わずに大きな鬼の頭を打ち抜いた。
だが、鉄板に撃ちこんだような甲高い音が鳴るだけで、
傷一つついてはいなかった。
「……さてどう対応しようか」
恐らくこの大きな鬼は
時貞くんが言っていた『剛鬼』だろう。
空には弓師、地上には数人の『剛鬼』
どちらかを相手にすると
どちらかの攻撃を見逃すことになる。
「どちらかだけに絞るのなら。狙うのは当然こっちだ!」
僕は空へと銃を向ける。
「
幸い奴は察知して逃げてるわけじゃない。
動き回ることでよけている。
だったら簡単だ。
奴の動きを読み、二つに分かれた小銃で
空を動く奴の弓の中心を打ち抜く。
「なんだと!?」
「残念だったね。弓使いとは良く戦ってもらってるからさ」
「クソっ! クソっ!! こんなはずじゃ!!!」
「どんなはずでも、興味はないね」
弓のない奴なんて脅威などどこにもない。
奴もそれを察して逃げようとしている。
僕はまわりの『剛鬼』から距離を置くため、
近くの民家の上へと飛び登り
奴にとどめを刺すためにまた銃の形態を変える。
「
「ここまでくれば、あんな銃なんて……。ぐっ! なんだあれは!? アイツの武器はどうなってやがる!!」
奴が振り返って何か言ってるようだけど、
わからないしどうでもいい。
「判決の時だ」
僕が打ち出した銃弾は、
鋭く、素早く、一閃を描いて奴を撃ち抜く。
奴の身体を貫き、役目を終えた銃弾は
宙をしばらく飛んで魔力の塵へとなり消えていった。
「さて、残りは君達だ」
僕は『剛鬼』に向き直り銃を構える。
「恥ずかしい話だが、今の僕の魔力じゃ一日一色が限界でね。どうかこれで倒れて欲しいものだよ。『
僕は左手を刀剣と化した銃に備えて唱える。
「『
『剛鬼』は拳を僕に振り下ろす。
その腕に合わせて僕は緋色に変わった刃を振るった。
『ゴトンッ』と腕が落ちる音がする。
「良かった。これなら通るようだね。さて、君の身長だと僕からは首が取れない。悪いが、脚を切らせてもらうよ」
剣の腕は並みの剣術師レベル以下の僕だが、
こんな単調な動きしかできない奴らレベルなら
あっけなく一太刀を入れることが出来る。
「終わりだね」
数人の『剛鬼』に脚を切り落とし、
僕は銃をしまう。
「ふぅ。相変わらず『
銃の玉(刀剣銃の場合は刀身)に能力を付与するこの技は、
習得したばかりでまだ扱いなれていない。
次の入れ替え戦の為の
他の人に手伝ってもらうわけにもいかないし……。
ミコトグニの滞在中に仕上げたいところだ。
「それにしても、鬼っていうのはここまでやるものなんだね」
鬼を倒した安心感からか、
お礼を言いに来る人がいっぱいいた。
だが、それ以上に
依然として泣き続ける人の方が多かった。
「スノウがどう判断するかわからないけど……。僕はこの国から鬼の脅威を取り除きたいところだ」
こんなふざけたことを容認しているのは
鬼の頭首とか呼ばれるボスだろう。
子どもが泣くような世界を作る者は『悪』だ。
「鬼の頭首は絶対僕が倒してみせる」
僕は強く、そして静かに決意した。
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読んでいただけてありがとうございます!(˘•̥⧿•̥˘ )
『
『
また数字が入ってる……。
みんなに弱い弱いと言われているロミオくんですが、
実はすごい結構強いと思います。
まぁ、皆は
確かに
銃いっぱい持ってる兄ちゃんと変わらないですからねぇ……。
というわけで!
また次話にてお会いいたしましょう!
ありがとうございました!!!
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