第三十七話 雪女ではない

《義経の屋敷:桃太郎》




「僕が……鬼、ですか?」

「うん。それもちょっと重要な鬼さん」

「なんで……そう思うんですか?」

「なんとなくだけど桃太郎君に朔夜さんと同じような違和感を感じたの。朔夜さんは鬼だから、桃太郎君も鬼なのかなって」

「特別な鬼っていうのは……?」

「朔夜さんってお母さんが前の六芒鬼だったんでしょ? その朔夜さんと桃太郎君は幼馴染で、それに栗太郎君もような気がするの。それで桃太郎君だけ何もないってのはないんじゃないかなぁって」


 ティナさんはニコニコしながら、

 自分の見解を話す。


「それにね? 私の知ってる子で金太郎君って子がいるんだけど、その子に聞いたことがあるの。その子も私たちと同じで親がいない子だっていうから子供の頃どうしてたの? って」


 金太郎君……。

 間違いない。金ちゃんのことだ。


「で、その子が言ってたの。俺は『先々代の鬼の頭首』の所で六人の子供と過ごしてたって。そしてそのうち五人は鬼だったって」


 心臓が高鳴る。

 まるで頭の中に心臓があるみたいに聞こえる。


「それでね、金太郎君は『ち~む五太郎』っていうメンバーの一人だったって。……それって、栗太郎君と浦島君。そして桃太郎君じゃないのかなって。……どうかな?

「えっと、あの……」


 僕は言葉が詰まって出てこない。


「ごめんね。言いたくなかったらいいの。ただ、金太郎君が話してた人なのかなーと思ってね」


 そこで栗太郎が口を開いた。


「よい。ティナの言う通りじゃ。……金太郎は元気にしておったか?」


 ティナさんは栗太郎の方を向いてニコッと笑う。


「うん! クインピアを出発するときも見送りに来てくれたよ!」

「そうか。奴は今異国におるのじゃな。元気であればそれで良い」


 栗太郎は嬉しそうに微笑む。


 僕も同じだ。


 今の今まで高鳴っていた心臓も、

 すぐに落ち着きを取り戻す。


 僕たちにとって『ち~む五太郎』と朔夜さんは

 血のつながりはないけれど兄弟なんだ。

 無事ってわかっただけですごくうれしい。


 でも……。


「ティナさん。お願いがあるんです」

「うん、大丈夫。誰にも言わないよ」

「えっ?」

「理由はわからないけれど、その感じだとバレたくなかったんだよね?」

「……はい」

「なら言わない。ロミオ君とスノウちゃんは金太郎君とそんなに面識ないだろうから大丈夫だけど、ペルちゃんは……んー。鈍いから気づかないかもしれないけどわかるかもしれない」

「金太郎がお主にワシらの話をしたのであれば問題はない。アヤツは筋肉馬鹿の単細胞で鈍感で阿呆で早とちりも多いが……」


 めちゃくちゃ言うなぁ。


「じゃが、人を見る目はある。アヤツ自体が人見知りもあるからじゃが、信用出来ている者以外とは余計なことをしゃべらんからのう。お主にその話をしてるということは信用たる人物ということじゃ。ペルも然り」


 確かに。


 金ちゃんは僕たちの中でも一番用心深い。


 石橋を渡る前に叩いて調べようとして

 その叩くために使う槌の素材と製造方法から

 調べようとするような人だ。


 僕に十年黙ってたくらいの秘密を、

 異国だからいいや! って喋るタイプではない。

 だから多分、大丈夫だろう。




「お主の考えておる通り、辰夜は鬼じゃ。そして普通の鬼ではない。現 鬼の頭首が辰夜なのじゃ」




──────────────────────

《草間町:スノウ》




 

「おいおいマジか。せっかく最強の妖怪と名高い六花りっかを殺れるチャンスと思ったが……。まぁいいか。おい、雪女! 痛い目にあいたくないなら六花を呼んで来い。お前くらい強かったら雪女の中でも顔が利くだろ?」

「残念ですが、私は雪女ではないので。その六花という方を存じ上げません」

「ハハハ、あくまでシラを通す気か。俺様を怒らせると怖いぜー?」

「シラも何も、私が雪女ではないというのは事実ですので」

「あぁーそうかい。なら痛めつけられた後に考えな!!!」


 そういってこの話を聞かないわからず屋は

 なにやら両こぶしを握り……。

 なんでしょう、その……。

 気合でも入れているのでしょうか。


 あぁ、なるほど。

 ツノが生えてきました。

 鬼化したのですね。


 ただ、朔夜さんのものとは違います。


 なんか体の表面は黒くつやつやしていて、

 虫みたいな感じです。

 甲人族ビートルギアの人達に似ています。


「ハッハー! 俺様のこの姿を見てビビっちまったか!? 怖いだろう? 恐ろしいだろう!?」

「はい。部屋に出て欲しくないタイプの見た目をしています。気持ち悪いです」

「……どうやらお前は勘違いしているようだな。見たことなくて恐ろしさをわかっていないな?」

「いいえ、見たことあります。私は甲人族ビートルギアの王とも面識があるのでそれに比べたら……文字通り『羽虫』といったところでしょうか」

「はい、カッチーン!! 俺様を怒らせてしまったようだな!!!」


 そう言って『羽虫』さんは虫の翼を広げて、

 剣を携えてこちらへ飛んできました。

 はっきり言って、気持ち悪いです。


 思ったより早い『羽虫』さんの攻撃。

 かわせないかもしれません。

 

 だったら、凍らせてしまいましょうか。


 そう思って手をかざした途端、

 『羽虫』さんはそこから上昇をして、

 何やら匂いの強い液体を撒いていきました。


「……なんですかこれは」

「はっはっは。小便だよ!! ざまぁみやがれ!!!」


 小便? 私に??


「しかもただの小便じゃねぇぜ? 見てみな!」


 見てみると私の服が、肩が、腕が。

 かかったところが解けていきます。


「俺様の小便は特別製でな。強い酸性なんだよ! アーッハッハ!」


 どんどんと溶けていく。

 ……そんなことよりも匂いがきついです。


「随分と程度の低い攻撃ですね『羽虫』さんは」

「ぐ……、お前俺様を本気で怒らせたようだな……」


 そう言って『羽虫』さんは大きく息を吸いました。


 なんでしょうか。

 大きな声で怒るのでしょうか。


 小便を巻き散らかしたり、

 大声で怒ったり、子どもでしょうか。


 ですが、あることを思い出します。


 クインピア十三国の一つ『天河』に生息する虫。

 織姫さんいわく夏を彩る風物詩。

 大きく力強い鳴き声で夏を感じさせる虫。


 捕まえようとすると

 小便を引っかけて飛んでいくという……

 『セミ』という虫を。



「みなさん、耳をふさいでください!!!」



 私は大声で皆さんに伝えましたが、

 遅かったようです。






 音の爆弾が全ての音を飲み込み爆ぜました。






──────────────────────



読んでいただけてありがとうございます(っ ॑꒳ ॑c)


ちーむ五太郎の四人目!

そしてクインピアのお姫様の名前!

出てきましたね〜。


小出ししすぎて誰が出てるかもうわからぬ。

作者もわからんなら、読者もわからぬ。

へへへー!!


既にぽい人は何人か出ているでござるね!

誰かエクセルにまとめてください!!


というわけで!!

また次話にてお会いしましょう!!


ありがとうございました!!!







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