第三十一話 不死身
《草間町:東門》
ごぉーん。ごぉーーーーーん……。
「やってくれたようでおじゃるね」
自身が『弓の霊鬼』を撃ち落とした以上、
誰かが鐘を鳴らしてくれると思っていた
想像以上に早く鳴った鐘の音に安堵した。
残る『霊鬼』は三人。
一人は見つからないが、
残りの二人はすぐに場所が分かった。
一人は門の近く。
だがそっちには門兵が多くいる。
だがもう一人の方は……。
こと切れた門兵が多く横たわっている。
いるのは『槍の霊鬼』。
「どういう原理かわからないけど、かといって無視はできないでごじゃる」
鶴姫は『槍の霊鬼』と戦うことを決めた。
一度仕留めたと思った相手だ。
倒せなかったのは自分の責任だと鶴姫は思っている。
先ほど撃ちこんだ矢は確実に急所に入ったはず。
なれば近づいて確認するしかない。
鶴姫は複数の矢を撃ちこみ駆ける。
矢は頭部、心臓、そして首元へと刺さる。
『槍の霊鬼』の動きが止まる。
その間に付近へと近づけた鶴姫は気づいた。
死体の数に比べて切断された腕や脚が多いことに。
「つ、鶴姫さん!!」
「これはなにがあったでごじゃるか!?」
「コイツ、切っても切っても死なねえです! 腕も、脚も!! 切ってもすぐ元通りになってしまうんでさぁ!」
「そういうことでごじゃるか」
手足が多い理由は納得した鶴姫。
だがそれは現状がさらに難しくなったことを
再認識できただけであった。
「イタイ! 見たい? 遺体になりたい!?」
『槍の霊鬼』は自信を射抜いたであろう鶴姫を睨む。
「結構でごじゃるよ」
普段怒ることの少ない鶴姫だが、
この時ばかりは怒りが芽生えていた。
(あっちの人はさっき飲み物をくれた人)
(そっちの人は日に焼けたらいけないって傘をくれた人)
(皆、みんないい人だったのに!!)
鶴姫はしゃがみ込み手をつく。
「あらら? ほららのこらら?」
降参したのかと考えたのか、
『槍の霊鬼』は鶴姫へと近づく。
途端、地面より複数の木が生えてくる。
それらは木であるのにもかかわらず、
ツタのように『槍の霊鬼』に絡みついて
ねじれるように成長を進めからめとる。
「ピンチ! SAN値ピンチ!!」
慌てる『槍の霊鬼』。
「さすが鶴姫さん!!
「やめてくださいでおじゃる。私はもう朽葉の人間じゃないでごじゃるから」
「あっ、すみません!!」
悲しそうな鶴姫の横顔に、
失言だと気づいた門兵は話を変える。
「ま、まぁこれでこいつが不死身でも関係ねぇや! あとはどうにかできる奴に任せて他をどうにかしましょう!!」
門兵がそう言った時、異変は起きた。
『剣の霊鬼』がいた方から轟音がしたのである。
少し離れているとはいえ、
その距離は百十間(200m)程。
音は衝撃波のように鶴姫たちを襲った。
「いったい何が起きたのででごじゃろうか……」
「……すっげぇ音でしたね」
「みんな倒れているでごじゃる!」
「あっ!アイツ飛んでいきますよ!!」
『剣の霊鬼』を指をさした門兵。
「そうはさせないでおじゃる!!」
鶴姫は弓に矢をつがえ、放つ。
しかしそれは不可解な動きで避けられる。
「鳥とは違う……。あれは虫でごじゃるか?」
何度も何度も矢を放つがすべてかわされ、
『剣の霊鬼』は街へと入っていく。
そして、異変はそれだけではなかった。
「つ、鶴姫さん! あれ!!」
『剛鬼』が暁尖へ向かって一斉に走り出したのである。
「いったいどうなってるでおじゃるか!?」
鬼の襲撃。
不死身な『槍の霊鬼』
『剣の霊鬼』と謎の轟音
そして『剛鬼』という異質な小鬼とその行動。
平和になれていた者たちにとっては
全てが寝耳に水である。
「驚いている場合じゃないでごじゃるな。申し訳ないでごじゃるが私は暁尖殿の助太刀に行くでおじゃるから、この『槍の霊鬼』を……」
そう鶴姫は言いかけて気づいた。
「なっ! アイツ!?」
「どうやって抜け出したでごじゃるか!?」
捕まえていた木から抜け出し、
既に『槍の霊鬼』は街へと駆けだしていた。
「なんてこった! 危なかった! !」
「くそっ!! 待て!!!」
「やーなこった! パンナコッタ!!」
鬼の身体能力には並の人間では追いつかない。
鶴姫は門兵の肩を掴んで止める。
「不甲斐ない結果ではおじゃるがもう間に合わないでごじゃる。それよりも暁尖殿を助けに行かなきゃでごじゃる!!」
「俺も行きます!」
「……言いにくいけど、多分行っても無駄でごじゃる。私もそんなに役に立たないくらいでごじゃる。それよりあそこにいる負傷者でまだ助かりそうな人の救助を行って欲しいでする」
そう言って鶴姫は『剣の霊鬼』がいたところを指差す。
謎の轟音で倒れた者。
そした『素手の霊鬼』にやられた者は横たわっている。
「もう鐘はなったでごじゃる。中は中でいろいろと動いてくれるはずでする。門を守れなかったのは不甲斐ないでごじゃるが、草間町のみんなはそんな弱くないでする。そうでしょう?」
「……はい!」
門兵は強い瞳で鶴姫に答えた。
「負傷者をよろしくお願いしまする」
そう言って鶴姫は駆けた。
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「かかか。こんなもんか!」
暁尖は次々と『剛鬼』を薙いでいく。
『
全てを喰らい『剛鬼』は倒れていく。
「もっと! 『
知能のない『剛鬼』たちは何の策もなく、
暁尖へと向かっていくばかり。
だがしかし、状況は悪化している。
倒れた『剛鬼』は死ぬことがないようだ。
それは腹部から下だけで向かってくることからも察せられる。
逆は?
腹部から上は??
そう、それらもまた動くのだ。
『剛鬼』を切り分ければ切り分けるほど。
倒せば倒すほど足場がなくなっていくのである。
そして、その時は来る。
足場を作るため、
倒れた『剛鬼』をも攻撃し小分けにしていた暁尖。
ゆえに、死角も増えてくる。
いや、これを死角と考えられるものは少ないだろう。
なにせ、その死角とは倒れた『剛鬼』の下の隙間。
本来なら人一人も入れない隙間。
腕一本だからこそ入れる隙間だからである。
隙間にあった腕が暁尖の脚を掴んだ。
「なっ!?」
こんな状況を想定できる者は中々いないだろう。
そもそも、不死身で巨大な多数の生物を相手する。
そんな経験を持つものが世界にどれだけいるのか。
経験がなければ予測で動かねばならない。
しかし、此度は実戦中である。
たかが小鬼だが、その力は本物である。
知能がなく、速さがないからこそ弱いだけで、
集団であり不死身ともなれば十分な脅威。
ゆえに、剛の者である暁尖とて余裕はなかったのだ。
「不覚だったの」
とはいえ、すぐに死を認めるほど
暁尖は諦めのいい男ではない。
『剛鬼』を一人でも減らす。
その一心で出来る範囲で『
勿論、後ろの『剛鬼』には届かぬが、
視界に入る範囲程度の『剛鬼』は薙ぎ棄てた。
「ここまでのようじゃの。
そして、口には出さぬものの、
もう一人の馬鹿息子を思い出す。
「あの世でまた会おうぞ」
背後の『剛鬼』は
暁尖へと無情なる一撃を振り下ろした。
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読んでいただけてありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )
『
空間ごとかじりとるだなんてちょっとチート武器!
でもネーミングの感じが
ヒノカミカグラに引っ張られてるのは否めない。
あと漢字がごたごたしてる。
中国とか沖縄の赤い建物の装飾みたいね!
あ、本編に触れなきゃ!
某カードゲーム予告風にまとめますね!
次回、暁尖死す!?
迦楼羅スタンバイ!!
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