第二十六話 負けず嫌い
《義経の屋敷:桃太郎》
「とまぁ、そんな感じだな」
僕は、弁慶さんの話を静かに聞いていた。
……そして泣いていた。
「はっ。お前何泣いてんだよ」
弁慶さんは笑う。
「ごめんなさい。なんか勝手に出てきちゃって」
「別に謝ることじゃねぇよ。……ありがとな」
「いえ……」
義経さんと弁慶さん。
互いが互いを尊重してるんだ。
だからあんなにも仲がいいんだ。
「あぁ~。なんかこっ恥ずしくなってきたな。余計な話までした気がするぜ」
「全然恥ずかしくないです! 話してくれてありがとうございます!」
「やっぱお前、
「なんでですか?」
「なんかあの人の前だったらついつい話してしまうんだよな。何でも聞いてくれそうって言うか、素直になれるっていうか」
「そうだったんですね」
「あの人が鬼ヶ島に拾ってくれなかったら俺は多分さっさとくたばっちまってたよ。……まっ! お前はまだまだ未熟だけどよ!」
そう言って弁慶さんは立ち上がっていった。
「お前はいつか、この国を変える気がするぜ。その時を楽しみにしとくよ。栗太郎って奴と、あと馬鹿だけど朔夜。
「はい! がんばります!!」
弁慶さんはフッと笑ってそのまま歩いて行った。
背中越しに手を挙げて返事をして。
僕は弁慶さんを大好きになっていた。
ぶっきらぼうで少し口が悪いけれど
本当はすごく優しい弁慶さん。
なんだかんだで朔夜さんにも
付き合ってくれてるし。
僕はすがすがしい気持ちになっていた。
今ならぐっすり眠れそうな気がする。
僕は満足げに自分の部屋に戻った。
────────────────────────
《草間町の外:ティナ》
「はっ! これで私の勝ちね!!」
「負けてない! 卑怯だ!」
「アンタだって最初の時後ろから切りかかってきたじゃないの!」
「あれは技だ! お前のは騙しだ!!」
「知らないわよバーカ!」
私は今、ペルちゃんと朔夜さんの戦いを
見に来てます♪
「これで三勝三負二分ね!」
「この前のあれは途中で終わったからなしだ!」
「でもあのままやってたらアンタの負けだったじゃない」
「でもわからなかったもん! ノーカンだ!」
「何言ってるの! ティナ! あれ私の勝ちよね!?」
「自分の姉に聞くのはずるい!!」
「ふふふ、どうなんだろうねぇ」
「いいぞティナ!」
「ちょっとティナ!?」
ペルちゃんったらあんなに必死になっちゃって。
もともと負けず嫌いだったけど、
朔夜さん相手だと本当にムキになるんだから。
「二人共、本当に仲良しさんだね」
「「そんなことない(わ)!!」」
「息ぴったりじゃない♪」
ペルちゃんは強情で誤解されがちだから、
朔夜さんに仲良くしてもらえて私すごく嬉しい♪
「ねぇ、朔夜さん。これからもペルと仲良くしてあげてね?」
「別に仲良くしてないけどな」
「そうよ。どこが仲良く見えるのよ」
「ペルちゃん朔夜さん相手だといっつも元気じゃない?」
「わー。お前私のこと好きなの? 気持ち悪い~」
「こいつがむかつくこと言うからよ!」
「ふふふ。桃太郎君も朔夜さんはペルちゃんのこと気に入ってるみたいって言ってくれてたし」
「うわ~。こんな奴に気に入られるとか私嫌だわー」
「桃、絶対ぶっ飛ばす」
二人共、素直じゃないんだから♪
二人がその後もわちゃわちゃと仲良くしてた時、
私は少し遠くに、あるいくつかモノを見つけた。
それは大きく、そして動いていた。
……そして近づいてきているのが分かった。
「ねぇ、二人共。あれなんだと思う?」
私が声をかけると、
二人はお互いの頬をつねりながら
私の指の差した方を見る。
「はひよはへ(何よあれ)」
「はんは、ははのひゅうおひひゃはいは(なんだ、ただの中鬼じゃないか)」
「とりあえず、二人共その指を離してもう一回言ってくれる?」
ペルちゃんが指を離した後、
朔夜さんはあれが中鬼だと教えてくれた。
中鬼が数体。
朔夜さんが言うには
中鬼って、力はすっごく強いんだけど、
戦闘力で言えばすっごく弱いんだって。
「ほれ、ペル。お前鬼退治に来たんだろ? あれ倒して来いよ」
「いやよ、めんどくさい。アンタが行きなさいよ。自分の国でしょ?」
「そうかそうか悪かった。お前じゃ勝てないよな。気づいてやれなくて悪かった」
「はぁ!? 余裕よ! 今のところはアンタと同じ戦績なのよ?」
「何言ってんだ。この前のは無しだって言っただろ。私の方が上だ!!」
「そうね。今のところは引き分けだけど、ここで私の勝利を減らしておかないともう勝てないものね。 そりゃ必死になる訳だわ。惨めね」
「なんだお前~!」
「アンタこそなんなのよ!!」
ペルちゃんたちはまた戯れだす。
……もう、仕方ないんだから。
その間にも徐々に街に近づいてくる中鬼。
「朔夜さん、アレ倒しちゃっていいの?」
「ほんはいはい(問題ない)!」
多分、問題ないって言ってるから
あれは私が倒しちゃうことにしようかな。
私は両手に魔力をこめる。
左手の魔力は弓の形へ。
右手の魔力は矢の形へ。
両手を合わせ、光の弓の弦に光の矢を当てて
十分に引き絞り……、空へと放つ。
矢は大きく光を放ちながら更に大きくなり、
それは空高くではじける。
はじけた光がいくつもの矢へと変わり、
中鬼に降り注ぐ。
「
矢達は中鬼を刺し貫いては小さく炸裂する。
十体弱いたであろう中鬼たちは、
すべて消えてなくなっちゃった。
「流石ティナね!」
「ま、まぁまぁ強いなティナは」
「そうよ! ティナは強いのよ!」
「なんでお前が自信満々なんだ!」
「双子だからよ! ティナが強いってことは私も強いのよ!」
「お前は雑魚だろヒトデマン!!」
ふふふ、本当に仲良しなんだから。
私は可愛い妹と、その中の良い友達を見ながら、
幸せだなー。って思いました。
……だけど、今のが中鬼かぁ。
すごく呆気なかったな。
でも、朔夜さんは『霊鬼』で、
上から二番目の位って言ってた。
私も朔夜さんと戦うってなると大変だろうし。
鬼退治。
……簡単にはいかないだろうなぁ。
そんな私の心配とは裏腹に、
また戦いを始めたペルちゃんたち。
まっ、スノウちゃんもいるし大丈夫か♪
そんなことを思いながら、
私は仲良く二人を見守るのでした。
────────────────────────
《草間町のどこか》
昼間のにぎやかさからは想像もつかない静かな夜。
とある場所の木の下に静かに座る者がいた
風が吹いた。
木々は揺れ、木の葉がさざめく。
「……出発したようです」
「そうか……」
一人と思っていたが、
どうやらそうではなかったようだ。
「様子は?」
「すでにもぬけの殻。行っても無駄とは伝えたのですが」
「まぁ、そうはいかぬよな」
「はい」
「このことをどう見る?」
「闘技大会を中止し、この場を離れるべきかと。冥桜山にも使いは出しております。獅子虎がごねるかもしれませんが、六花がうまくやるでしょう」
「冥桜山を空けるわけにはいかぬからなぁ」
「仮にどちらかが残っても、今代の五人もそれなりに戦えます。半分ほどがこちらに向かえば事足りるかと」
「そうか」
木々の隙間から月の光がこぼれる。
だが、座っている者の姿は見えない。
「……これも一つの試練か」
「ここを離れないおつもりで?」
「いざとなったら……ワシが戦えばよい」
「承知いたしました」
風が吹いた。木々が揺れる。
「……約束は、必ず守る」
月下。
一人で呟く、誰に届けた訳でもない言の葉は
ひらりひらりと地に落ちた。
──────────────────────
読んで下さってありがとうございます!(˘•̥⧿•̥˘ )
お姉ちゃんであるティナさん!
水を使うペルさんと違って、
ティナさんは火と光を主に使います!
彼女が使う魔法は『光武具の生成』
ペルさんの使うのは『水の生物の生成』なので
すこーし対照的ですねぇ……。
最後は意味深なシーンでしたが
そろそろ物語が動き出すのでしょうか?
というわけで!
また次話にてお会いいたしましょう!!
ありがとうございました!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます