第二十三話 『食』を知った気になるな

《草間町:桃太郎》




「雪梟……。ううっ……」


 軍配が朔夜さんにあがり、

 スノウさんはショックを受けていた。


 表彰台に上がることになった

 朔夜さん、スノウさん。

 そして、僅差だったがなんと大五郎さんが

 三位ということで表彰されることになった!


「カメムシとヒトデマンは三位にも入らなかったか。ふっ、貧弱め」

「くそっ、あいつ言わせておけば!!」

「た、たがが大食いじゃないの!」

「やーいやーいざーこざーこ!」

「「ぐぬぬぬぬ!」」


 相変わらず好き放題だな、この人は……。


 半ば泣きそうなスノウさんと、

 「うっぷ、ちょっと座りてぇ」と言ってる

 大五郎さんを余所目にドヤって立つ朔夜さんに

 優勝商品である雪梟の卵が授与される。


「この卵は六花りっか様より授かりし精霊の一種ですです」

「此度の目玉になれぇ〜ばと、渋々授けてくださったありがたぁ〜いものだぁ〜ね」

「普通の卵と違って温めるのではなく、とことんとことん冷やして下さいさい」

「二〜三週間ほどすれば孵化するそうだぁ〜よ」


 そう言って朔夜さんに卵が渡された。

 なかなか大きな卵だった。

 身体の前で両手で支えるくらいの大きさだ。


「おぉ、冷たい! いや〜、キンキンで美味いんだろうなぁ〜!」

「「「「「えっ?」」」」」


 会場がどよめく。


「えぇ〜っと、何か聞き違えたようだぁ〜ね」

「今、美味いって言いましたした? まさかまさか食べるつもりではないですですよね?」


 皆の心を代弁してくれる司会さん達。


「当たり前だろ?」


 当然、と言わんばかりの顔の朔夜さん。


「よ、よかったぁ〜ね。食べたと知ったら六花りっか様のお怒りが……と心配したぁ〜よ」

「ですです! ただえさえ嫌がってたのを鞍馬様にお願いして出してもらいましたしたので……」

「ん? だから、食べるんだぞ? あっつあつの米にキンッキンの卵をかけた、卵かけご飯にするぞ!」

「「「「「ええええええ!!!」」」」」


 驚く会場。

 いま何十人前の食べ物を食べた人の発言とは

 とても思えない。


「ゆ、許せません!!」


 隣には燃えるような怒りが目に見えるスノウさん。


「雪梟は絶対かわいいです。貴方にこの子は任せられません」

「でも、お前負けたじゃん。勝てばよかったじゃん」

「それとこれとは別です。生き物なんですよ」

「たった今、その生き物の肉を揚げた奴、めちゃたべてたじゃん」

「私が食べなくてもこの唐揚げになった鳥たちは用意された時点で既に死んでいます。食べなければ殺された彼らがかわいそうです。ですが、目の前で生きていたら殺して食べてません。その子はまだ生きています。殺してはいけません。それは悪の所業です」

「それは都合良すぎじゃないか? さっきの唐揚げの鳥も、お前の代わりに誰かが殺してくれてるんだぞ。殺すのが悪いみたいなこというなよ。その認識だと、お前が食べるために誰かが手を汚してくれてるんだ。そんな言い方は良くないぞ」

「そ、それはそうですが……」


 朔夜さんの食論に返す言葉がないスノウさん。


 確かに朔夜さんは食いしん坊だからか

 食べ物に関してめちゃくちゃ厳しい。


 何かを残すことは絶対に許さないし、

 美味しい部分だけ食べて

 美味しくない部分は食べないなんてしない。


 余すことなく出来る力や知識を総動員して、

 限界まで食べようとする。


「お前の思想を私は変えようとは思わんが、私の思想も変えようとは思わん。お前が残せば私が食べればいいだけだ。だけど、だ。生物だろうが植物だろうが、『何かを食べる』という行為は色んなものが関わって誰かが苦労して、何かが犠牲になってるんだ。それを知らずに食べるという行為だけで『食』を知った気になるな。背負ってる物を知れ」

「そ、それでも……」


 いつもおふざけな朔夜さんだけど、

 こういう時はものすごくかっこいいと思う。


 僕は小さな頃から朔夜さんに言われているから。

 同じような考えを持っているから。

 だから、賛同してるだけかも知れないけれど。


 でも、朔夜さんのこういうところが好きだ。


「わかりました。今回の件については少し私も考えを改めます。確かに都合のいい主張だったかもしれません。申し訳ございませんでした」

「ん。別に私に謝る必要はないけれど、スノウの気持ちは受け取ったぞ。なら、とりあえず誰か米持ってきてくれ!」

「それだけは考え直して下さい!!」


 スノウさんが大声で頼み込んでる。

 スノウさんって大声出せるんだ。


「スノウって大声出せたのね」

「僕は初めて聞いたよ」


 ペルさんとロミオさんも驚いていた。


「え〜。絶対美味しいのに〜」

「何でもしますから」

「何でもするって言ったな?」

「……はい」


 スノウさん、それは禁句だ。


 朔夜さんに借りを作ると、

 とんでもないことになる。


「お前、ロミオを氷にしたってことは氷いつでも作れるんだろ?」

「えぇ、まぁはい。ある程度はどこでも作れるかと思います。大気中からでも」

「なら、私が食べたいと思った時にいつでもかき氷作ってくれるか?」

「そんなことならお安い御用です!」


 スノウさんの表情がパァッと明るくなる。

 

 でも、甘い。

 絶対それだけじゃないはずだ。


「じゃあスノウは今度から、私が獲った肉を冷凍することと、飲み物を持ち運び、冷やしておくこと。かき氷を作ること。そのシロップを常備すること。決定な!」

「えぇっ。増えてますが……」

「なら、卵かけご飯にする」

「わかりました。私にその仕事を任せてください……」

「はい! 約束〜! じゃあ今日からスノウは三号な!」

 

 こうして朔夜さんはしれっとパシリを増やした。

 二号は僕、一号は浦ちゃんだ。


「では、早速その卵を……」

「本当に出来るかまだ見てないから今かき氷試しに作ってくれ」

「まだ食べられるんですか??」

「当たり前だろう。まだ腹七部だぞ」

「……ミコトグニはやはり異質です!」


 スノウさん、違う。

 それその人だけだから。

 ミコトグニもう関係ないんです。


 そしてスノウさんは粉雪を、

 ふわっと固めた物を生成し朔夜さんに渡す。


「わぁ、ふわっとしてすごい! 舌でサーッと溶けるぞ!?」

「お気に召してもらえたのなら……」

「これ私が作れっていったらすぐ作れよ〜。なら、ほい! 卵!」


 そう言って大きなたまごをスノウさんに投げる。


「わっ! わっ! なんてことをするんですか!!」


 スノウさんが必死に卵を受け止める。


「スノウをあんなにテンパらせるなんて朔夜ってちょっと凄いのね……。少し見直したわ」

「確かに。スノウを困らせれるのはアリス様くらいかと思っていたよ」


 感心するペルさんとロミオさん。

 朔夜さんの破天荒はワールドワイドだったみたい。


「な、なにはともあれ! 第一回 大食い選手権は朔夜殿の優勝でしたした!!」

「思った以上に盛り上がったぁ〜ので、また来年もするかぁ〜もしれないねぇ!」

「それでは数時間のお付き合い!」

「ありがぁ〜とうね~ぇ!」

 


 こうして、大食い大会は終了した。


 これをきっかけに大食い大会は、

 闘技大会とセットで行われることになり、

 草間町の目玉が増えることになる。


 その時、『伝説の美少女剣士 朔夜』

 という名前が必ず上がるのだが、

 それは今の僕たちはまだ知らなかった。


 まぁ、知らないままでも

 別に困らないのだけれどね。


 ちゃんちゃん。





──────────────────────


読んで下さってありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )


大食い大会おわた!

なんでこれに数話使ったのかはわからない……。わら


さて、早速スノウさんの仮面がはがれてきました!

私が絵を描けたら書きたいくらい頭の中のスノウさんは

美少女なんですが伝えられないのが悔しい。


頭の中では各キャラの表情も仕草も目つきも

出てるのに悔しい。絵を描けるようになりたい。


ちなみに朔夜さんはジト目です。すき。


てなわけで!

また次話にてお会いいたしましょう!!


ありがとうございました!!








 





 

 




 


 

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