第十五話 天下五剣
《
僕達はティナさん一行。
つまり、異国の使者のみんなと
牛車に乗って天草街道を進んでいた。
「へぇ、朔夜さんの武器ってそんなすごいんだねぇ」
「じゃぁ、朔夜の実力じゃないわね。すごいのは武器よ」
「あーぁ、ヒトデマンは負けた理由を探すのに必死だなぁ」
「は? 『ひとでまん』って何よ」
「序盤のジムに出てくる雑魚だ」
「誰が雑魚よ!!」
「だってお前みずでっぽうで戦うじゃん。あ、バブルこうせんも使えるんだっけ?」
「今すぐ表に出なさい!!」
「黙れ敗者!!」
「ちょっと、喧嘩はやめようよ……」
朔夜さんの
ペルさんと朔夜さんのわちゃわちゃに巻き込まれる
みんなのやり取りが聞こえる。
今は、栗太郎がお楽しみ。
武具お披露目会の最中だ。
ちなみに時貞さんと浦ちゃんは
表で牛を操縦している。
「しかし、噂通りですね。ミコトグニはすべてが異質。武具までも特徴的とは聞いておりましたが、このような武具はめったにお目にかかれません。魔具とは根底が違うようです」
スノウさんは八具仙を見つめながら言う。
「左様じゃ。この国の武具は確かに面白くてのぅ。進化する武具というのはミコトグニでは常識じゃが、異国ではそうではないらしいの」
「そうかも。力を引き出すって意味ならこっちにもいくつかあるんだけど、ミコトグニには名前まで変わる武器があるんだよね?」
誇らしげな栗太郎にティナさんは聞いた。
「そうじゃな。全ての武具とは言わんが、優れた武具を優れた使い手が使えば成ることがある。その時、真名を知ることになると言われるのう」
「すげーよなぁ。卍解みたいなもんだもんなぁ。なぁ、八具仙。お前の真名って奴、私に教えろよ〜」
「アンタじゃ無理よ。聞いてなかったの? 優れた使い手って言ってたでしょう」
「八具仙~。デンタルクリニックがなんか言ってるぞ~」
「……? ハッ! だれが歯医者よ!!!」
朔夜さんとペルさんは相変わらずだなぁ。
「騒がしい奴らじゃのう……」
「ペルちゃんってば、いいお友達が出来たみたいで、私もうれしいな♪」
「その真名を引き出されたっていうような有名な刀はあるのかい?」
「いい質問じゃなロミオよ」
「僕もそれ気になる!」
伝説の武器! みたいなのは
いつの時代も男の子の憧れだ!
「ミコトグニには有名な刀剣がいくつかある。その中でも特に有名なのは
「天下五剣? 聞いたことある気がするような」
「ロミオが知っていてもおかしくあるまい。古来より伝わる刀じゃからのぅ」
栗太郎はまるで自分の刀を褒めるかのような
ドヤ顔で天下五剣のことについて語り出す。
「天下五剣の真名は『
「か、かっこいい!」
思わず僕は口にした。
大体の男の子は『四〜〜』とか『五〜〜』とか
称号みたいなのに憧れるのだ。
もちろん、これは僕も例外ではない。
「これらの刀剣は他の刀剣と決定的に違うところがあっての。刀が主と認めなければ鞘から引き抜くことすら出来ぬのだ。よって、いつの時代も天下五剣を扱えるものは一目置かれる。使い手の居ない時代もあるくらいじゃからの。そして、人々はそんな使い手のことを『
「へぇ。なんだかロマンがあるね」
「んむ。ロミオもわかってくれるか」
「勿論さ! こういう話は大好きだよ!」
どうやらロミオさんもしっかり男の子だった!
そんな中、ペルさんとわちゃわちゃしていた
朔夜さんが会話に入ってくる。
「聞いて驚け! 私の母はその天剣使いだったんだぞっ!」
「へぇ。アンタのお母さんは凄いのにアンタは自分の刀の真名も引き出せないのね」
「そんな奴に負けたお前はさぞ辛いだろうな。うんうん、お察ししますぅ〜」
「アンタ本当にムカつくわね!!」
「まぁまぁペルちゃん。落ち着いて? でも朔夜さんのお母様は凄い人だったのね」
ティナさんに褒められてドヤ顔の朔夜さん。
その時、表から時貞さんが戻ってきて
僕たちの会話に参加した。
「その天下五剣ですが、実は今ほとんど行方がわかっていません」
「げっ、浦島は!?」
「いえ、私だけ休憩です」
時貞さんに浦ちゃんのことを聞く朔夜さん。
浦ちゃんドンマイ。時貞さんは話を続ける。
「
えっ? 鬼の頭首ってことは僕のお父さんも?
聞こうと思ったけどそれより先に
栗太郎が話に食いついた。
「なんじゃと? 最空が居なくなったじゃと?」
「はい。二年前、
「……誰がやったのじゃ」
「それがわかってないのです」
「わかっていないじゃと?」
「生き残った者は一人としていません。それに今も殿宮院は廃墟となっています。真実は何もわかっていません」
「……そうか」
「その結果、今わかっている天下五剣は
「その天剣使いってのは強いの?」
ペルさんが時貞さんに尋ねる。
「はい。五人が五人ともミコトグニの中で比類なき強者です。鬼丸国綱の使い手の『鬼の頭首』は歴代頭首でも三本の指に入ると言われてましたし、大典太光世の使い手の『妖怪の長』は七百年弱もの間、妖怪族を束ね続け鬼と戦い続けたお方。
三日月宗近の使い手『先代 夜叉』は辛勝ではありましたが、異国の海賊の親玉二人を単独で撃退しました。そして最空さんも前述の三人には劣りますが、最高峰の剣技を持ち、闇の仙術に長けている人でした」
「もしかして、その海賊ってバンダーデッケン兄弟かい!?」
ロミオさんが驚く。
「ええ、確かそんな名前だったかと」
「待って待って待って」
ペルさんもめちゃくちゃ驚く。
見ればティナさんとスノウさんも
口に手を当てていた。
「いかがなさいましたか?」
「アンタ達は知らないかもしれないけど、異国じゃその海賊を知らない人はいないのよ! まさかミコトグニの伝説の侍が、朔夜の親だったなんて……」
「なんだなんだ! 母は伝説の侍とか言われてたのかっ?」
朔夜さんはどことなくうれしそうだ。
ティナさんが答える。
「その海賊のバンダーとデッケンって人はね、世界中を荒らしまわる困った海賊さんで全世界共通で指名手配されている『
世界中で指名手配……。
とんでもないことじゃない? それ。
「そのバンダーデッケン兄弟がミコトグニに侵略を開始したって聞いたから、各国協力の下、同盟軍を結成して、ミコトグニを助けに行こうとしたの。そしたら、ボロボロにされてるバンダーデッケンの一味が海にさまよってるのを見つけたらしくてね。捕まえた一人の船員に聞いたら海賊はたった数人に負けて、しかもバンダーとデッケンはそのうちの一人の剣士に負けたって。それで世界中で盛り上がったのよ。ミコトグニにはとてつもない剣士がいるって」
「うんうん、そうだ。母は強いのだ」
「結局、バンダーもデッケンも見つかっていないけれどあれから名前を聞かないわ!」
「んむ。母の大手柄だ!」
これ以上にないくらいでドヤ顔だ。
朔夜さんは本当にお母さん大好きだなぁ。
「その数人とは、当時はまだ頭首ではなかったですが、先代頭首と後に六芒鬼になられた面々ですね。今も
話を時貞さんが引き取る。
お父さんたちやっぱりすごかったんだ。
僕もそんな風になれるのかな……。
頭首になるなんて言ったけど、
僕が目指す先はとても高い場所だったみたいだ。
「まって。鬼ってそんなに強いの? それと戦うってやばくない??」
「……確かに。今回、私たちは戦力や目的の調査でしたが、これは
ペルさんとスノウさんが言った。
ロミオさんは何か考え込むような顔をしている。
その様子を見て時貞さんが言う。
「それはご安心を。先ほども申し上げましたがその面々は先代。今の鬼の頭首は違う者です。……ただし、実力はまだ未知数ですが。最近、変わった鬼の確認もあがっておりますし、わかってないことが多いです」
「変わった鬼とはどんな鬼じゃ?」
「鉄と同等以上の硬度を持った小鬼です。幸い戦力も小鬼と同等の為、逃げるのも容易く大体が無視されてます。区別するために皆は『
その時、表から浦ちゃんの声が聞こえる。
「お~い、草間町が見えてきたばい~」
「おっ、そろそろか!」
そう言って朔夜さんが外に出た。
僕たちも外に出てみた。
そこには大きな町。
見えるだけでも天来港の三倍は横に広い!
「わぁ、大きいのねぇ」
ティナさんが顔の前に両手を合わせて驚いていた。
他の面々もそれぞれの表情が豊かだった。
と、その時。
僕たちはもっと驚くことになる。
「あ、あれって!?」
「ちょっと!」
声をあげるロミオさんとペルさん。
僕たちは、草間町の真ん中から上がる
大きな炎と黒煙を目の当たりにしたのだ。
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読んでいただけてありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )
天下五剣!かっこいい!!
刀剣乱舞やってたなぁ……(遠い目)
『十戒』
また強そうな名前が出てきましたねぇ。
『
ちなみに『
スノウたちの国『クインピア』の警察みたいな組織です!
第二章『
てなわけで!
また次話にてお会いいたしましょう!
ありがとうございました!!
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