第十一話 世界とは鏡のようなもの
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「浦島殿、あれほど口外してはいけないと!」
すごい剣幕で
「悪い! この三人は幼馴染で嘘つけんっちゃん!」
「そうだぞ! 浦島は馬鹿だから嘘なんて器用な真似出来んのだ!」
「お主、それフォローになっておらぬぞ」
異国の使者が来ることを
サラッと言ってしまった浦ちゃんに対して、
怒りだした時貞さんへの
朔夜さんの謎フォローと栗太郎のツッコみで
なんとなく緊迫な状況にならなかった。
「お三方、本件については知らないことにしていただきたく。では浦島殿参りましょう!」
「仕方ないばい。みんなまた後で飯でも食いにいこう」
そう言って二人は足早に去っていく。
「異国の使者が来るんだってよ。龍馬、お前何か知ってるか?」
「おぉ~。なんか異国からは戦士が来るとか言ってたぜよ」
「ほぉ~ん? 異国の戦士……むふふふ」
さっきもニヤリとしていたけど
悪い予感しかしない。
「栗太郎、もしかしたら朔夜さんが……」
そう言って栗太郎の方を向いた時、
仲間がいないことを確信した。
「異国からの戦士ということは、バシレイア産の魔具が見れるのじゃろうか。それともアトムポリス産の
これはもしかして……。
「「よし、異国の戦士を見に行くぞ」」
思った通りのセリフが出てきた。
寸分の狂いもなくハモる栗太郎と朔夜さん。
そんなところで
仲良しスキルを発揮しないで欲しい。
「はっはっは! 行ってくるぜよ! 俺は寝る!!」
そう言って龍馬さんはタンスに戻る。
布団すぐそこにありますって!!
「行くぞ桃! ちんたらしてる場合じゃない!!
朔夜さんに手を引かれ
僕たちは龍馬さんの家を後にした。
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僕たちは、行きの三倍の速さで
天来港へと戻ってきた。
二人が走るからである。しんどい。
僕たちが着いた時、
港には多くの人が集まっていた。
「むぅ。人が多くて見えぬのう」
「どけ! 私が通る!」
「すまぬのう。すまぬのう」
二人はぐんぐんと進んでいく。
「待ってよ!!」
二人は僕が見えていないようだ。
人ごみに揉まれて流されて、
僕だけ違う方向へ進んでいく。
僕は知らない人にぶつかって、
やっと動きが止まった。
「君、大丈夫かい?」
知らない人は僕の腕を取ってくれて
体制を整わせてくれた。
「ありがとうございます。……すごい人混みですね」
「そうだね。クインピアの戦士が珍しいのだろう」
「僕、人が少ないところからこの街に来たんですけどこんなに人多いの初めてで。みんな何かに夢中になったらまわり全然見てないものなんですね……」
流されながら、肘をぶつけられ、足を踏まれ。
散々だった。
「人が集まり『集』となるとき、それは一つの生命体に等しいんだよ。そこに『個』の思考は存在しなくなる。一つ勉強になったね君」
僕はその時、初めてその人の顔を見た。
後ろで黒髪を束ねており、
背丈をまるまる包むような黒い外套という
もの珍しい格好だ。
片方だけに眼鏡を付けている。
両手の白い手袋には奇妙な形の六芒星。
そして、その中には五つ葉が入っていた。
見たことのない模様だ。
「さて、君。一つ聞きたいのだが……この世の中をどう思うかい?」
「『この世の中』ですか?」
「そうだよ。今、世界は二極化に進んでいる。『他』を重んじて『個』を捨てる考えと、『個』を優先するために『他』を犠牲にする考えさ」
僕は急に難しい話を投げられた。
でも、僕が思う答えは一つだ。
「僕は『他』を重んじたいです。僕が今ここまで生きているのは『他』の人達が僕を大切にしてくれたらからですから」
じっちゃんやばっちゃん、栗太郎と朔夜さん。
浦ちゃんを含めた五太郎の皆。
そして、会ったことはないけれど
お父さんとお母さん。
僕が今まで平和に楽しく山で生きてこれたのは
みんなのおかげだ。
「そうか。それも一つの答えだろうね。ただ、その『他』とはどこまでを指すのだろうね。自分の周りの『他』を重んじる結果、大きく見た『他』を蔑ろにしてるとは思わないかい?」
「大きく見た『他』ですか?」
「わかりやすく言おう。例えば国と国が戦争をしたとする。自分の家族や友人を守るために。そして自分の国の民を豊かにするために、相手の国を倒し色々なものを得たとする。君の周りの多くの人たちは救われることとなるだろう。だが、代わりに相手の国の人達は多くの犠牲を得るだろう」
「そう……ですね」
「じゃあ、その国の人も含めて助けようとするとそのほかの国が割を食うだろうね。それを突き止めた結果、被害が被るのは何だと思う?」
「突き詰めた結果……。世界の人々を全員救った結果ってことですか?」
「そう考えてもいい」
全員救ったのなら
全員被害はないんじゃないのかな。
「いないんじゃないですか?」
その答えに、その人はため息をつく。
「そう思うだろうね。……被害者は『星』だよ」
「『星』?」
「あぁ。私たちの住むこの惑星『アトラスフィア』が被害者だ。いや、もっと言えばこの世界だね」
『世界』が被害者ってどういうこと?
「今、私たち人間はわかっている歴史上で一番人が多い状況だ。生態系を壊し、資源を吸い上げ、星は悲鳴を上げている。『人』を救い『人』の為に生きること。それは『人』以外の『他』を犠牲にしているのさ」
言われている意味は分かる。
「つまり、最初の問いに戻ると、何を選んでも結局『他』を犠牲にしているのさ。『他』を重んじるのは不可能というのが私の見解さ。私も昔は君と同じ考えだったのだがね」
ふと、寂しい瞳をしてその人はつづける。
「いいかい? 世界とは鏡のようなもの、それを変えるには自分を変えるしかない。世界を変えるために私は自分の考えを変えたのさ」
「世界を変える……ですか?」
「遅かれ早かれ滅びゆくこの世界を、どう終わらせるかを変えるのさ」
その時、港では歓声が広がった。
近づいていた船が港に上陸したようだ。
気が付くと、さっきの人はいなくなっていた。
とたん、僕はまた流れに流される。
もみくちゃになり、
方向もわからないままもがいていると、
偶然、先頭に来たようだ。
そして、異国の人達が下りてくるところだった。
金色の髪に白と黄色の服で包まれた人と
そのすぐ後ろに対照的な銀髪の髪で
白と水色の服の耳の長い人。
驚くことにその顔は瓜二つだった。
そして、少し遅れて降りてくる
全身真っ白で肌も髪も全てが純白と言っても
言い過ぎではない綺麗な女性。
それと、空のような薄い水色の髪に
眼鏡をかけた爽やかな笑顔の男性。
降りてきたのは四人だった。
あの人たちが、異国の人なんだろうか。
船の着いたところには見覚えのある人たちもいた。
浦ちゃんと時貞さん。
そして、あれは……。栗太郎と朔夜さんだ。
絶対迷惑をかけている。時貞さんの顔が怒ってる。
もう間に合わないだろうけど、
二人の蛮行を止めるために僕は駆けた。
そういえばさっきの人、何で異国の船ってだけで
クインピアの戦士が来るって知ってたんだろう。
結構みんな知ってたことなのかな?
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「あれが、今代の……か」
人ごみから船へと駆けていく少年を見て
私はつぶやく。
「タケルの意志は彼に継がれたのだろうか。君と私、どちらが正しいかはわからないけれど、それは彼が教えてくれることとなるのだろうね」
そうつぶやいた後、私は姿隠しのマントを羽織る。
クインピアの戦士たち。
それも
さて、東に向かうとしよう。
ファウストを探しに行かねばならない。
「まったく、彼は何年私を待たせるつもりなんだろうか」
不満を風に乗せ、宙へと飛び立つ。
「さて、急ごう。
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読んでいただけてありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )
謎の人物、出ましたね!
王道ですね! コッテコテですね!!
多分ですけど、
めちゃ重要なワードだと思います←
てなわけで!
また次話にてお会いいたしましょう!
ありがとうございました!!
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