第九話 浦島太郎
《海沿いの砂浜:桃太郎》
「ちかっぱ懐かしか~! 桃ちゃん全然変わっとらんけんね!」
「浦ちゃんこそ全然変わってない!」
「そんなことなかよ。男子三日会わずんば刮目してみんといかんっちゃけん!」
「えぇ!浦ちゃんが言い出したのに!?」
「ばってん、なんでこげんところおると? 他の
そういうや否や、
浦ちゃんは遠くから歩いてくる、
栗太郎と朔夜さんを見つける。
「桃ちゃん、あれってもしかして」
「うん! 栗太郎と朔夜さんだよ!」
「おぉ!やっぱそうか! おぉーい!!!」
二人めがけて大声で手を振る様子に、
栗太郎は手を振って返す。
朔夜さんは多分「げっ!」て言った。
聞こえてないけど絶対言った。
小走りでかけてきた栗太郎が
浦ちゃんに声をかける。
「浦島よ、懐かしいのう」
「栗ちゃんもかわっとらんね~。それに朔夜! 会いたかったばい!」
「そうか、会えてよかったな。さようなら!」
「相変わらず冷たか
「そうだね、久しぶり! 元気そうで何よりだ! さようなら!!」
「そんなところも好いとーばい!」
「ありがとう! さようなら!」
何が何でも別れを告げる朔夜さんに僕たちは笑う。
「なぁ、桃ちゃんがここにおるってことはそういうことと?」
急に浦ちゃんが少しまともな表情で栗太郎に聞く
「んむ。残念じゃが
「そっか。あの二人も強かけん大丈夫と思いたいけど、心配やね」
「さようなら!」
朔夜さんは空気を読まない。
そんなことより、この話の流れだと、
多分、浦ちゃんもだ。
「浦ちゃんも僕が鬼って知ってたの?」
「そりゃ当たり前たい。他の五太郎も知っとるよ? 俺たち桃ちゃんより年が上やけん、親方ともよく遊んでもらっとった記憶もあるけんね」
「親方? もしかしてお父さんのこと?」
「そうそう。俺は親方って呼んどったばい。あの人はすごかけんね~」
そっか。
やっぱり知らなかったのは僕だけだったみたいだ。
「なぁ、桃ちゃん」
思うところがあった僕に、
浦ちゃんは昔と変わらず気さくに声をかけてくる。
「桃ちゃんが鬼でもそうでもなくても関係なかやん! 俺たちの関係に何かかかわることでもないし、そもそも俺も鬼やけん」
そういって浦ちゃんはツノを出す。
「な? むしろほとんどみんな鬼やけん、むしろ一緒でよかったばい!」
「ん~。まぁそう言われたら確かに」
「なら、なんも気にせんでよかことやない?」
そう言って浦ちゃんはニッと笑った。
今までも浦ちゃんのこういう無邪気な所に
僕もみんなも何度も救われた。
「で、桃ちゃんたちどこば行きよっと?」
「んむ。
「あー! 龍馬たいね! あの男も面白かよ~。案内しちゃるけんついてこんね!」
「さようなら! 不息災でな!!」
「またまた〜。ほんと照れ屋っちゃけん」
「浦ちゃん変わらないね」
「ちくわ大明神」
「そうじゃのう」
「「「「……えっ?」」」」
朔夜さんはいつまでも別れを告げている中、
ふと誰かの声が混ざっていた。
僕たちは周りを見渡したが誰もいない
「おい、今声したよな」
「うん。でも周りにだれもいないよね!?」
「ふ~む。聞き間違いじゃないはずじゃが」
「あ、下です下。ハイ」
下?
声に従って僕たちはいっせいに下を見る。
そこにいたのは亀だった。
そういえば鬼たちは何かを足蹴にしてた。
「危ないところを助けていただきありがとうございましたハイ。いやはや、浦島様にまた助けてもらうとは奇遇というか運命と言いますかハイ」
「ほ? 俺前も助けたっけ??」
「あ……いえ、私の勘違いでしたハイ。この御恩は皆様が龍宮に来られることがございましたら是非お返しさせていただきますハイ」
「龍宮?なんだそれは」
「聞いたことがないのう」
何故みんなカメが話していることに
驚かないんだろうか。
「竜宮とはバロック連邦にございます、連合街の一つ
、水中都市オラトリオにあるミコト式料亭ですハイ」
「ミコト式? なんだ異国でも食べれるのか?」
「左様でございますハイ」
「それは一度いってみたいのう」
「バロックって国もあるんだねぇ」
「竜宮……。聞いたことあるような無いようなって感じばい」
「浦島殿、私の勘違いだったと思いますハイ。変な事を言って申し訳ないですハイ」
「そーと? まぁ気にせんでよかばい! 俺も忘れるし」
「感謝いたしますハイ」
これで異国の楽しみがまたひとつ増えたなぁ。
「そんなことより金出せ金!」
「や、やめんか朔夜」
「カメはお金を持ってるって聞いたことがある。ゼニゼニって鳴くんだぞ」
「それは水色のかめじゃ。こやつは緑。しかも水色の亀も別にお金は持っておらぬ」
「あははは。朔夜は何も変わっとらんね~」
最後までカメはお金を持ってる!
と疑っている朔夜さんを引っ張って、
僕たちは浦ちゃんの案内で
龍馬さんの家に行くことにした。
カメさんは今回用事があってこの国に来たらしく、
砂浜でそのまま別れた。
「そういえば浦ちゃん、小鬼をどうやって倒したの? 刀とか持ってさそうなのに」
見間違いじゃなければ、
浦ちゃんは小船を降りた後、
小鬼を一人ずつ切り倒しているように見えた。
「あぁ、簡単なことばい。これで切ったっちゃん」
そう言って指すのは釣り竿。
「釣り竿なんかで切れるの!?」
「いいか桃ちゃん。本物って奴は『物』じゃなくて『技』で切るんよ」
「『技』?」
「そうばい。『技』で切れば刀じゃなくても。木刀でも釣り竿でも。なんなら素手でもモノは切れると」
そういって浦ちゃんはニカッと笑う。
「浦島あまり調子に乗るなよな〜」
「全然乗ってなかよ? だって俺より栗ちゃんや朔夜の方がすごかろ?」
「まぁな! わたしがさいつよだ!!」
浦ちゃんがまだ山にいた時、
朔夜さんと浦ちゃんの戦績は朔夜さんが高い。
もちろん、最強は栗太郎なんだけど。
「浦島が本気でやればわからんがのう」
「ほ? 俺はいつでも本気ばい?」
「ふむ。ならそういうことにしておくかのう」
「栗、何を言ってるんだお前は」
そう言われてみれば確かに、
浦ちゃんはいつも本気でやってないように思える。
「なーんか納得いかんなぁ。おい浦島、私と久々に模擬戦だ!」
「もうすぐ龍馬の家に着くけんまた今度しよ。まずは龍馬を優先ばい」
「そうじゃの」
そう言って浦ちゃんは足を早めて進んでいった。
半刻ほど僕たちは歩いていると、
大きな灯台が見えてきた。
その灯台まで歩き続けた僕たちは
ほったて小屋のようなものを見つける。
「これが龍馬の家たい!」
「ふっつーの小屋だな」
「じゃの」
それは見たまんまのほったて小屋。
あんな大きな船を運転できるような人が
住んでいる所には見えない。
「意外やろ? あいつは船と剣以外には全然興味ないけんあんなとこに住んでても何も思っとらんとよ」
そう言って浦ちゃんは戸に手をかける。
「おーい、龍馬~! お前に客がきとるばい!!」
浦ちゃんの声が小屋の中に響く。
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読んでいただけてありがとうございます(˘•̥⧿•̥˘ )
船と剣が大好き龍馬さん!
むか~し、龍馬がゆくを読んだはずなのですが、
土佐弁、全然覚えてませんねぇ……。
破天荒だったのは覚えてます!
ミトクロの龍馬さんはどんな感じなんでしょうか。
というわけで!
また次話にてお会いいたしましょう!!
ありがとうございました!
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