返答する手紙


 学校も終わり、バイト先の本屋へ向かおうとしたとき手紙の存在を確認した。


 朝の時点では確認できなかったことを考えると恐らく日中、もしくは放課後に入れてるのかもしれない。そんなことをかんがえつつ、バイト先へ向かう。


 とはいっても、最近本屋の利用客が多いから手紙を確認するタイミングがないので、とりあえず、家に帰ってからにしよう。



「にしても、最近は利用客が多いですね。店長」

「そうだね、まぁこの時期はなにかと落ち着くころだからね。割と利用客が増える時期なんだ。電子書籍の利用もあるから昔よりかは少ないんだけどね」

「まぁ、そうですよね」


 最近は学校でも授業でタブレット教材を扱う学校も増えているため、こうして本屋を利用する客層も限られてしまう。

 学生なんかの若年層はあまり多くなく、ご年配の方や紙の本が好きなもの好きのような人しか利用しないという、悲しい話だ。


 紙には紙にしかない魅力というモノがあるというのに。残念なことだ。



「それはそうと、耕平君。今度隣町のほうにある図書館へ本の寄贈をしなければならないんだけれども.....手伝ってくれるかい?」

「あ、大丈夫ですよ。ちょうど二輪免許を取得したの足はありますよ」」

「本当かい?それなら有紀ちゃんじゃなくても大丈夫かな?いやぁ、助かるよ。有紀ちゃんの都合があわなそうだったからね。最悪店を耕平君にまかせないといけなくなりそうだったからね。もちろん交通費は支給させてもらうから安心してね」

「あ、ありがとうございます。.....有紀さんも忙しいんですね」


 今この本屋で働いているのは僕と店長、そして大学生の成宮有紀なるみやゆきさんの三人だ。ほかにも主婦の方が働いていたんだけど.....家の都合上でやめてしまったのでこの三人になってしまった。


 有紀さんは.....まぁ僕らとはまた違った文学趣味があるらしく、大学の授業のため本屋にて働こうと思ったらしい。あ、文学趣味ってあれだ。いわゆる大人向けのほうらしい.....まぁ藪蛇をつつくつもりはないのでこの辺で抑えておこう。


 で、最近は卒論だとかなんだとかで忙しいらしく、時間が確保しにくいらしい。


 そのため、基本は店長がメインになって自分が出勤している時なんかは裏方に回っているらしい。

 いつもご苦労様です。



 そんなやり取りをしながら、勤務時間がすぎていった。






「じゃ、耕平君。もう閉店の時間になるから上がっちゃっていいよ。いつもありがとうね」

「あ、はい。わかりました」



 あっという間に時間が過ぎ去って、退勤時間となったようだ。


 店長に挨拶をすませ、帰宅する。









 自室に戻り、ひと段落すませる。



「さて、ようやくか」


 今回はなんだかんだで10日ほど時間がたった気がする。

 確か、手紙を靴箱に入れてから6日たったぐらいの時に手紙が亡くなっていたんだよな。そこから4日でこの手紙が入っていたわけだから......。

 きっと手紙は見てくれたんだろうな。どんな返答が来ているのやら。



 そんなことを考えながら手紙の封を開ける。

 そこに書かれていたのはこうだった。



『親愛なるあなたへ


 あなたからのお手紙、確かに頂戴しました。


 あなたが私に対してどう感じているのか、言葉の節々から感じられるようなお手紙に私はとても嬉しく思います。私のこの思いがすこしでもあなたに伝わっていると思うと期待で胸が膨らんでおります。


 しかし、私はあなたに私のすべてをお伝えする勇気ができておりません。私がどのような人なのか気になっていることは先のお手紙からひしひしと伝わり、心苦しく思います。


 このように手紙を通して、貴方を思う気持ちのみお伝えするこの私をどうか許してください。また、こうしてあなたとお話する機会があることを心待ちにしつつこの手紙を送らせていただきます。


 あなたへの思いを込めて、■■■■■■より』




 ..........そうきたかぁ。

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