5月も3週目


 5月に入り、席替えも終わり新しい場所でまた日常が始まった。


 どうやら後ろの席の男は久瀬雷夜くぜらいやというらしく、一言で言えばバカうるさいやつ_ムードメーカーみたいなやつといえばいいのか.....めちゃくちゃ話しかけてくる。かと思えばすぐ別のやつに話しかけたりしてるからどう対応すればいいのかようわからん。最近は久瀬の隣の席の読書家?なのか物静かな江藤浩二えとうこうじと話していることが多いからぶっちゃけ被害が少なくて済む。

 .....だけどさ、授業中に話しかけるのはやめてくれんかね。


 で、隣の席の女子は綾瀬夏美あやせなつみさん。この人もなんというかうるさい.....というか人懐っこいというのか、とりあえずパーソナルスペースにぐいぐい入ってくるようなタイプの人間。席替えしたときの日なんてめちゃくちゃ質問されたんだけど.....最近の女子ってこんな人が多いんかね?


 あ、あと俺の前の席の佐々木海華ささきうみかさん。確か保健委員になっていた人だけど、まぁ物静かなんだけど女子同士では結構話すタイプの人みたいだ。

 まぁ、それに関しては普通のことかもしれんわな。


 で、俺含む5人が1つのグループ活動する班になっている。

 どうやら5月以降から集団学習なんかも始まるため班活動ができるように近くの席5人一班でグループを形成する必要があったとか。


 そんなわけで、俺にも否応なしに話しかける機会が増えている。



「でよー、耕平。今度の校外学習結局どうすんだ?」

「......なんで、俺に聞くんだよ。綾瀬さんにでも聞けや」

「いいじゃねぇかよ、なぁ浩二」

「まぁ、そうだね。斉藤君、基本僕らが話しかけないと話そうとしないじゃないか」

「......ぶっちゃけ話す内容ないだろ」



 こんな感じで話しかけてくるのが今の日常だ。

 .....だけど、まぁ中学からまともに話す機会なんてなかったわけだし、俺が応対できるとでも?......無理でしたわ。この時点で高校生デビューしようとしていたことが恥ずかしいもんだ。



「いやいや!今あっただろ!校外学習だよ!」

「....まぁ、あれだろ。周辺地理についてとかだろ。この学校寮生活しているやつとか遠距離通学しているやつもいるからって周りの地理について探索しましょうとかいってたやつ」

「うん、僕は遠距離通学だからこの辺のことあんまりわからないんだよね」

「へぇ、浩二は遠距離通学なのか。ちなみに俺は寮生活!バスケ推薦でこの高校に入ったからな!」

「あ、そう」

「お前、めちゃくちゃ興味なさそうにすんなよなぁ」

「悪い悪い、俺ぶっちゃけ近くて合格した高校がここだっただけだからな。そこまで部活とか知らんし......部活動やる気もねぇ」

「そうなんですか?一応ここ偏差値高いほうじゃないですか」


 まぁ、そうなのだ。私立のくせして割とここ偏差値の高い高校のため、別の私立や近場の公立高校へ行くほうが多かったりもする。


 なんだかんだ、中学時代は一人で勉強することが多かったから学力は高いほうだったわけで、あっさりと合格することができた。




「......っと、悪いな。俺これからバイトだから、お先」

「あ、おい!またな!!」

「あ、バイト頑張ってください」



 そんなやり取りをしつつ、教室を後にする。









 まぁ、席替えの後からこうして話す機会が増えたのは俺にとってもいいことだったのかもしれない......けどさ、ほんっとに久しぶりにがっつり会話しているわけで.....一言で言うと馴れん!


 久瀬も江藤もこうして飽きることなく話しかけてくれるわけだし、綾瀬さんも会話してくれるわけだから......もうちょっと慣れないとな。




 そんなことを考え、学校を後にしようとする。





 ......が。







「久しぶりに見たな、これ」









 5月も3週目に入る今日この頃、ちょっと久しぶりに見る手紙に少し笑みをこぼすのであった。

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