席替え
委員決めが終わり、周りの雰囲気が一層騒がしくなった。
それもそうだ。席替えなんてイベント、どんなときでも一喜一憂が目に見えてわかるようなもの。近くの席でようやく話せるようになったものやグループができた者たちと近くになれると思っているものなど、様々な思惑が入り乱れるイベント......それが席替えだ。
かくいう俺も昔そんな気分になっていたりしたな。なんとか隣の人と話せられるようになったのに、また別の席になりペア活動で苦労した記憶。
(えー、斉藤君~?私全然知らないんだけど~)
なんていう、女子ども.....割とショックを受けるのでやめてくれ。
そんな.....苦い思い出しかねぇなぁ。それが俺にとっての席替え.....。
だが、それも中学まで。ぶっちゃけ高校デビューを失敗した俺にとってそこまでの痛みはないのだよ。
.....ないのだよ。
「はい、みんな落ち着いてー」
スン。
そんな効果音が似合うぐらい一同静かにする。
すげぇな席替え効果。ここまで一斉に静かになるなんてあるんだな.....集会でも観ないレベルだな。
「じゃあ、今回はくじ引きで席を決めるわよ。適当に番号を振っておくから、先にみんなでくじを引くのよ。好きな順番で引いてちょうだい、そのあとで席を割り振るから」
そんなことをいうと、田村先生は黒板に升目を書き始めた。
本当にこれから席替えの番号を決めるんだ.....ま、俺は最後でいいか。
だって、我先にとめっちゃ並び始めてるもんな。
先にとっても関係ないだろ.....まだ席も決まってすらないのに。
何人かは落ち着いて並び始めたところから並び始めたり、仲良しグループで並び始めたり.....あとは俺と同じように後で引くためかまだ自席で座って待っている人もいたり千差万別だ。
俺はどうしようかな.....一番最後でもいいか、空いたときに並ぶことにしよう。そうしよう。
結局俺は残り5人ぐらいのところで並び始めた。周りはすでに引き終わりはじめ、自分たちが何番だったのかなど騒いでいる。
近くだったらいいね、俺前のほうはいやだなとかいろんな声が聞こえる。
この歳になっても、席替えは心躍るようだ。
おっと、俺の番か。
さっそくくじを引き、確認する前に自席へ戻る。
こういうのは前で確認して騒いでると、後ろで待機している人に迷惑が掛かるからね。ちゃんと席に戻ってから確認したほうがいいぞ。
っと、俺のくじは.....27番か。
とはいっても、まだ席の場所がわかってないから意味ねぇな。
全員が引き終わり、先生が記入し終わるのを待つ。
「......はい!皆さん引き終わりましたね?私のほうも書き終わりましたので皆さん確認をお願いしますね」
えっと、俺のところは.....窓際の席で_後ろから2番目の席.....か。
なかなかいいじゃないか?特に面倒なこともない感じでかつ一人を楽しむことができそうな感じの席じゃないか?
まぁ、周りが誰かもわからんけど。
「それじゃあ、皆さん荷物を持って席の移動を開始してくださいね」
その一声のもと、全員が移動をし始める。
教材なんかもタブレットでおこなっているため、自分の机なんてものもなく鞄を持って移動するだけ.....比較的楽な席替えだ。
そんなわけで、新しい席に着く。
ふぅ、窓際だと風がすぐ感じて結構涼しくていいね。
「おう、お前が前の席か!よろしくな!!」
「んぁ、あぁよろしく」
......誰だっけ?突然話しかけられてもマジで誰かわからんのだが。
「あ、斉藤君じゃん!よろしくね~」
「ん、あぁよろしく」
隣の席は女子か.....で、誰?
ここ一か月まともに話してないから誰が誰かもわからないし、なんならクラスのメンツの名前なんて覚えているわけでもない、俺であった。
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