思う手紙、更ける夜


 なんとか、手紙を書くことができたんだけど.....どうやって渡そうか。


 書いてから思ったけど、今までは相手から送られてきていた.....しかも俺の靴箱に、だ。


 そのため俺から相手へ送る際にどうやって送ればいいのかっていうのが全くわからない.....。だって、俺が朝登校したときにはすでに入っているんだぜ?放課後早く帰っていたりするけど.....。いつ入れてんだか。


 もし朝なら、出くわす可能性もある.....いや、朝の時間なんて部活動やっていたりして時間が全くわからん。放課後だってそうだ、いつ入れてもおかしくない。

 じゃあ日中か?.....可能性はあるな、ただいつ入れてんのかもわからんのに待機する?.....ないない。


 まぁ、いいか。今の目的は相手がだれかではない、いかにこの手紙を相手に送れるかだもんな。

 .....うん、それでいいか。とりあえずの手段は思いついたからそれでいくか。


 そんなことを考えていると扉を叩く音がする。


「耕平、今大丈夫か?」

「ん、親父?どうしたの」



 どうやら、親父からのようだ。

 一体どうしたんだろうか?



「入るぞ、どうした?」

「いや、別に。それにしても親父が部屋に来るなんて珍しいな」

「まぁな。ほらよ」



 親父に渡されたのは書類だった。


「......これは?」

「免許取得祝いだ。約束通りあの単車はお前のもんだ」


 書類の中身はどうやら家で保管している親父のNINJA400の車検証とか諸々のようだ。そういえば保険の手続きのため、まだバイクは使うことができなかったんだよな。それのことか。


「わざわざありがとう、親父」

「最近は車だけだったからな、使わん単車を錆させるほうがもったいない。母さんにも言われていたところだかな」

「確かにそんなこと言っていたね。使わないならお金がもったいないから売却すればとか言っていたもんな.....でもそんな簡単にもらってもよかったの?あれ意外と高いでしょ?」



 確かあのNINJAって400㏄で馬力もそこそこ高いやつなんだよな。調べてみたらNinja ZX-4RR のなんかいいモデルだったし、値段観たら100万を超えていたんだけど.....。


 初めてのバイクで乗っていいレベルのバイクじゃねぇだろ。



「阿呆、俺の趣味で買っていたやつだ。お前が単車の楽しさを知って、成人したらもっといい単車を買えばいい。はじめっからしっかりしたやつ乗っておかねぇと単車の楽しさなんて知ることもできねぇよ」



 楽しさか.....確かに免許を取得するときも風を感じる楽しさを感じた。それをこれからも感じることができるなら安いものなんだろうな。


「うん、ありがとう。大事に使うよ」

「そうしとけ、ただこれからはお前の単車だ。維持なんかもお前の領分に入るんだ。そこんところは忘れないようにな」

「わかってる。とりあえず今のバイトを続けて、ガソリン代なんかも回せられるよう準備はしているよ」

「わかっているならいいさ。そういえば親父が言っていたぞ?今度一緒にツーリングにでも行こうってさ」

「じいちゃんが?夏までに慣らしておかないとなぁ」

「そんときゃ、俺も親父んとこの単車借りて参加しようかね」

「それは楽しみだな」


 そんなやり取りをし、親父は部屋を去った。



 親父のじいちゃんってクルーザーっていう、ハーレーとかでよく見るタイプのゆったりとした感じの家にあるバイクとはまた違うタイプのバイクだったよな?

 生粋のバイク乗りなんだよなぁ。御年67歳なのにも関わらず元気が有り余っているんだよねぇ。


 そんな先の楽しみを胸に刻みつつ、目先の明日のことを考え夜がふけていくのであった。

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