時間は溶けていく
入学してから2週間が過ぎた。
最初の一週間で高校生デビューを失敗してしまった俺は新しいこととして、アルバイトと教習所に通うことにした。
アルバイトでは母さんの勧めもあってか本屋で働くこととなった。
その店自体は俺も本を買ったり、風景画をえがくために必要な道具を購入したりとまぁまぁな頻度で利用しているため店長さんにも顔を覚えてくださっていたのですんなりと働くことができた。
内容としても、本の品出しやレジ打ちなんかとそこまで難しいような内容でもなく1週間あれば仕事内容も覚え、人がいない時間なんかは教習所の勉強や読書に時間を使ってもいいと店長さんからの粋な計らいで少し自由な時間をいただいたりしている。
そして、もう一つの新しいことである教習所でもアルバイトが休みの日や放課後などの少ない時間だけど少しずつ通っている。
長期間での予定であるが、最近は週4日で土日は少し長めに入っているおかげか思っていたよりも速いスピードで進行で来ていると思っている。
受付の方が言うには学校や仕事が始まり、実際に通っている人自体は少ないらしい。これが長期休みや進路が決まり始めると実習のほうができなくなってしまうから、ちょうどいいタイミングで始められたといっていた。
こればっかりは親父に感謝である。言われてなかったら正直アルバイトで稼いだ分でゆっくりと受けるつもりだったら、間違いなくここまでのテンポで進めることなんてできなかったんじゃないかな?
そんな感じで時間が溶けていくと.....田村先生からまた呼び出しがかかった。
「斉藤君、いきなり呼び出してしまったごめんなさいね」
「いえ、今日はまだ大丈夫です。.....俺何かやらかしました?」
「あー、いや。そうじゃないんだけどね。最近、どうなのかなって?」
「どうって?」
どうといわれてもなぁ、アルバイトしたり教習所通ったりして割と楽しんではいるんだけどなぁ。
「放課後の様子はそこまでわからないんだけどね、学校生活ではどうなのかなって?ちょっと気になっちゃって。アルバイトで学業に集中できてなかったら本末転倒だからね」
まぁ、確かにそうですわな。.....ただ、別に課題もしっかり提出しているはずだし問題.....あ、あったわ。
「......なんとなく、先生が言いたいことがわかりました」
「あ、やっぱりわかってくれた?」
「ただ、自分自身そこまで気にしていないので問題ないですよ。実際、授業も問題なく受けられていますし.....」
多分、田村先生が言いたいのは交友関係についてなんだろうな。初めアルバイトの話に伺ったときだって心配されていたし、ここ最近は放課後になったらアルバイトしに行ったり教習所に直行していたからなぁ。
「あ、でもなんだかんだで教習所のほうはあと2週間ぐらいあれば免許取得できそうなんですよ!」
「あら、そうなの?早いわねぇ」
「やっぱりこの時期だかららしいですよ?こればっかりは親父に感謝ですね」
「斉藤君のお父さんは聡明なのかしらね?.....ってそうじゃないわよ」
「あ、だめです?」
話が逸らせなかったか。
「だめってわけじゃないんだけどね。斉藤君にも高校生活を楽しんでほしいのよ.....ただ無理は言わないからね、何かしら学校でも楽しみを作ってほしいわ」
「......善処しますね」
そういうと俺は職員室を後にする。
.....別に田村先生が善意で言ってくださっているというのもわかるが、この2週間でクラスメイトともほとんど会話することが亡くなっている以上、学校生活での交友関係にそこまでの興味をもはや持っていない。
別にアルバイトでも会話する機会はあるし、教習所で教習を受けている方がはるかに実入りがいいと思ってしまっているからなぁ。
今んところ、もう高校生活は勉強と趣味の時間のようなものだと割り切ってしまっているんだよな。
「......ま、やるときはやるってことで先生も許してくれませんかね?」
そんなことを考えながら、俺は今日も一人孤独に学校生活を送るとした。
.....が、そんな平凡で孤独な日々も桜の散り際に終わりを告げるのであった。
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バイク免許は16歳から取得可能です。
ただ、学校によってはなので.....
私の友人も16歳の誕生日が過ぎてから取得されていたので、多分大丈夫ですw
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