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現在、この世界は人間とエルフと獣人による

三つ巴の戦争、三決戦が続いていた。次第にエルフと獣人は結託し人間を追い詰めていく。

現在、人間は劣勢を強いられていた。

それに伴い、人々の暮らしも貧しくなっていく、それはもちろん少年たちにとっても例外では無かった。



「ママ……今日も仕事?」

「うん、ごめんね」

そう言ってテルマは少年の頭を撫でながら言う。

そんな時、家の扉が開かれた。

その先には顔も知らない男達が数人立っていた。

「おい!その不死身のガキって言うのはこいつで間違いなんだな」

「ええ、こいつです」

そして、その男達の先頭に立つ男が家の中へと入ってくる。

「何ですか貴方達!勝手に家に入ってきて!」

テルマは少年を守るように男の前に立つ。

「あ?どけよ、女!」

そう言って男は剣を抜き放ちテルマに向ける。

「うちの子に、何する気ですか!」

少年の前に立ったテルマが叫ぶ。

「どけって言ってんだよ!」



男が剣を振りかざし、テルマが少年を庇うように抱きしめた。

鮮血が舞う、少年は信じられないような表情で血を流すテルマを見る。

「マ……マ?」

「あ、ああ……」

痛みと熱で意識が朦朧とする中、それでもなお少年を守ろうとする。

そんなテルマの背中をもう一度剣が切り裂く。

「え?」

それでとうとう力尽きたかのように倒れる。

そんな倒れたテルマを見下ろしながら男達は言う。

「手間かけさせやがって……」

そういう男の手は震えていた。

「え?あ?何?ママ?」

少年はこの状況を理解していなかった、いや理解したくなかったのだろう。



「ごめんね、ごめんね。」

そしてテルマは謝り続ける。

「ママ?」

「もっと、親らしいことしてあげたかったのに……ごめんね」

「もっと、貴方と一緒にいたかったのに」

「……愛してる」

「ママ?ママ!ママ!」

少年はテルマを揺らすが返答はない。

「ああ……あああああ、ああああああ!」

少年は泣き叫ぶ。その少年を男達は蹴り飛ばす。

「はぁ、はぁ、来てもらうぞ、ガキ」



「なんで!なんでママを!ママが何をしたって言うんだ!」

少年は男達に掴みかかるが、周りの男に抑えられる。

「殺してやる!なんでママを!、なんでなんで!」

「お前ら絶対に!殺してやる!お前ら!」

少年はもがき叫ぶ、泣き叫ぶ。そんな少年を男達は引っ張りながら家を出て行く。

「ガキを黙らせろ」

男達がそう命令すると同時に少年の口に布を詰め込む。

「んー!んん!」

男達は少年を連れて行きながら言う。

「お前は不死身なんだろ?なら戦争に役に立つよな」

そんな会話が聞こえ少年は暴れようとするが、数人係りで抑えられる。

そして少年はどこかにつれて行かれた。




馬車に揺られながら少年は憎悪を滾らせていく。

少年は考えていた、自分はなぜこんな目に合っているのか。

それを考える度、頭が沸騰しそうなほどの憎悪が湧き上がる。

それと同時にもう会う事は無い、愛した人の事を思い出す。

もう、会えないと、そう思うと憎悪の炎が勢いをます。



「おい、馬車を止めろ」

先ほどの先頭に立っていた男が馬車を操縦していた男に言う。

「どうした?」

「まだ、重要なことを試してねえ」

「……確かにそうでした」

馬車を運転していた男は馬車を止める。

そう言って先頭に立っていた男は少年の口に詰め込まれていた布を取り除いた。

「なぁ、ガキお前の不死身を試して無かったな」

そんな男の言葉に少年は睨みながら答える。

「殺す!」

少年の憎しみに満ちた言葉に男は苦しそうな表情を浮かべ言葉を返す。

「好きに怨め」

そんな男の答えと同時に剣が振り下ろされる。その剣は少年の喉元へと突き刺さる。

血が噴きで、少年はもがき苦しむ。



「あが、ああ、あああ」

そんな少年を見ながら男は呟く。

「何だ、傷が塞がってる?」

「本当だ、しかも傷は再生していく。」

男の一人の言葉に他の男達も少年の体にできた傷を見る。

そこには確かに剣をも巻き込み、傷口が塞がっていく。



「これは凄いな」

「噂は本当だったか」

そんな男達を少年は憎悪の籠もった目で睨みながら叫ぶ。

「お前ら……絶対に殺してやる!」

少し満足げな顔で剣を引き抜きながら男は答える。

「はは、できるもんならな」

「あああ!」

少年の叫びが聞こえる。



「これで俺達は安泰だ」

男達は馬車へと戻っていく。少年の傷は再生し続け、体は血を流し続ける。

「行くぞ、ノアール王国に」

男達を乗せた馬車は走り出した。

馬車は進む、少年の憎しみを積み上げながら。

少年の叫びを無視しながら。

ただひたすらに。

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