二人の精霊:2

「さてと……ラプラス」

アリューはそう言ってラプラスに近づく。

アリューはラプラスに回復魔法をかける。

「何だよ、その姿は?」

「……アリュー」

「その無様な姿は何だって聞いてるんだよ!」

アリューはラプラスに向かって叫ぶ。



「仮にも僕を殺しかけた精霊か?」

「立て!雌雄を決するんだろ!」

ラプラスをは立ち上がりアリューを見る。

「僕を見て臆したか……何だよその目は」

アリューはラプラスの胸倉を掴み叫ぶ。

「僕はお前を許さない」

「抵抗しないなら今ここで殺す」

ラプラスは、アリューの目をしっかりと見つめて言う。



「因縁を無くすために、あの日々を忘れるために、お前を殺したかった」

「……」

「私は、この体をくれた少女との約束を果たさなければならない」

「アリュー、お前と決着をつけよう」

「僕は……君が大っ嫌いだよ」

そう言ってラプラスは構える。

(きっとお前には、敵わない)

その思いとは裏腹にラプラスの口元には笑みが浮かぶ。

「やるだけの事はやってやる」

「【次元線上の槍】」

そう言って槍を取り出し駆ける。



「未来視ありきの接近戦……変わってないね」

アリューがそう呟くと、結界魔法を張り槍を防ぐ。

ラプラスは槍にマナを込める。すると槍は枝分かれしていきアリューに向かって伸びる。

だが、アリューは結界は一切の侵入を許さない。

【滅入】めいり

そう言ってアリューはマナを放出する。そのマナは黒く、そして禍々しい。

それを未来視で躱し言葉を放つ。

「お前も、その態度は変わってないようだな」

そして、結界に阻まれた枝はラプラスに戻っていく。

【六徳】リットク

ラプラスが魔法を唱えると、無数の結晶がアリューの周りに現れる。

「その技も変わらない」

そう言ってアリューは結界を張り、結晶を防ぐ。

結晶と結界がぶつかり合い爆発が起きる。

「じゃあ、これは見たことあるか?」



その言葉と共に結晶から白い光線が放たれる。

それらも全て結界で防ぐもある異変が現れる。

大量に放たれる光線の幾つかはアリューの結界を貫通し、アリューの体を穿つ。

(……卍天魔法か!でも未完成か……)

(出来た!出来たぞ、この体になって初めて!)

ラプラスは嬉しそうに、アリューに近づいていく。

「これでお前と対等か?」

「いや、まだまだだね」

「【双絶:卍天】」

黒い球を出現させアリューに向かって放つ。黒い球は歪な形に変化し、アリューを襲う。

「よくやるよ」

その言葉と共にアリューも魔法を詠唱する。



「【卍天】」

卍天魔法の結界は黒い球を防ぎきる。

「怖がってるんじゃなかったの?」

「昔の事だ、もう忘れたよ」

「そう」

そう言ってアリューはラプラスに手を向ける。

「【六徳】」

黒い光線がラプラスを襲うが、それをすんで躱す。

「もう良いや」

「何を?」



「この殺し合いだよ、君の答えも知れた。僕はもう、満足した」

「終わらそう。君の怖がってた復讐を今、完遂しよう」

そう言ってアリューは詠唱する。

(何が……来る?)



空間魔法

「【悔恨の末】」

(この魔法は……まずい!)

「君の負けだ」



ラプラスは震えながらアリューに言う。

「最後の最後に、意地が悪いぞ」





当たりの景色が一変する、そこは森の中。



「ラプラス!今日も新しい魔法を覚えたんだ!見て欲しいんだけど」

「アリュー、ああ見せてもらおうか」



違う止めろ、こんな過去見せられてるだけだ。

今すぐここから出ないといけない、だが一向に景色は変わらない。

抵抗する気力が湧かない、ああ居心地がいい。

一日が過ぎていく。



ああ、懐かしい。こんな日々をずっと過ごしてたかったのに。

また一日が過ぎる。



「ラプラス!今日も、新しい魔法を覚えたんだ!」

「ああ、見せてくれ」

また一日が過ぎる。



「お前とさよならをしない、それが私の夢だ」

違う、そんな夢は叶わない。だからもう止めてくれ。

また一日が過ぎる。



「ねぇラプラス!僕ね……」

もう止めてくれよ……こんな過去見せられて何になるんだ。





景色が一変する。真っ暗な空間にアリューは立っている。

「懐かしいね」

「はあ、最悪の気分だ」

「……アリュー、私は何を間違えたんだ?」

「何も?強いて言うなら僕と合った事」

そう言ってアリューはラプラスに向き合う。



「私はもう……戦えない」

ラプラスはもう戦う気力が湧かないようだ。

そんなラプラスに向かって言う。

「そう……じゃあ君が決めていいよ」

「今の僕に殺されるか、あの時の僕に殺されるか」

「さあ、好きな死に方を選んでよ」

ラプラスはアリューの目を見る。

そんなラプラスにアリューは語り掛ける。



「ねぇ、僕は君が大好きだった」

「だからこそ、恨みの根は深く僕に根付いた」

「そんな顔して同情を誘ってるの?」

アリューは少し暗い顔をする。

「ラプラス……少しは僕の恨みを晴らさせてよ」



ラプラスは過去を見た、そして自分の中で葛藤する。

もう、ラプラスに戦意は無い。

その時、アリューの目から涙が零れ落ちる。

その涙を見てラプラスは思う。

(ああ……これが後悔か)

そんな姿を見てまた思う。

「ごめん」



「……アリュー、これを」

そう言って何かを掴んでアリューに投げる。

「私の未来視の一部だ、お前へ私が送る最後の呪いだ」

「呪い?」



「ああ、お前はきっと自分で死ぬことを選ぶぞ」

「……はぁ、僕が君の見た未来の通りになった事がある?」

「無いな」

(でも、きっとそうなる)

ラプラスは散り散りになって消えていく。

「じゃあね、ラプラス」

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