誰?:2

そうデルが呟くとラプラスとデルの周りの景色が変わる。

それは日本の城の内装のような木製の床に柱、壁には水墨画が描かれている。

「いい景色だろ」

「ルールを教えてやる、この空間では互いに魔法を使えない、拳一つの殴り合いだ」

「いい趣味だな」



そう言って二人は拳を握る。

デルが仕掛けラプラスに肉薄する。

右の拳をラプラスに振りかぶる、だがその拳を片手で防がれる。

その事に驚くと同時に左足で蹴りを入れるがそれも防ぐ、だがデルはもう片方の手で殴りかかる。

(ちっ)

ラプラスは舌打ちをして距離を取るために後ろに下がる。

(なんだ?この空間魔法は)

「どうした?怖気づいたか?」

「……いや、確かに魔法は使えない。だが魔術は使えるようだな」

「ああ、気づいたかよ」

「なるほど、これは不味いな」

そう言うラプラスは笑う。



「そうだよ正解だ」

「【白華一将】」

デルが杖を突く、すると体全体が白い魔物が現れる。

「【蒼剣ソデモダ】【闘気錬成:代一無閣】」

剣と太刀を取り出し剣を白い魔物に渡す。

「行け」

そう言うと白い魔物はラプラスに切りかかる。

だがそれをラプラスは簡単に避ける。

そして白い魔物の攻撃の後、直ぐにデルがラプラスを襲う。



(まだ遅いか……)

「いいぞ、もっと速くしろ」

デルの攻撃が段々と加速していく。

それに合わせるように白い魔物の動きがより早くなる。

だがラプラスも更に早くなり、二人の攻撃を躱す。

「しょうがないな」

ラプラスはそう言うと、何かを唱えた。



「凛と咲け【樹羅】」

突然デルの前から植物が生えデルを襲う。

それを白い魔物は庇いデルは間一髪で助かった。

「なんだ……それは?」

「これは彼女の魔術だ」

「そうか、随分と手持ちの札が多いんだな」

デルはラプラスに対して皮肉を言う。



(魔物は串刺しか……どうする)

「策を練っているな、いいぞもっと考えろ」

「【天逆之矛矛】」

デルは【閣屋】から【天逆之矛矛】を取り出し自分の手のひらを切る。

そしてラプラスに肉薄する。

【樹羅】ジュラ

そう唱えた瞬間、デルの周り四方八方から植物がデルを襲う。



「嘘、だろ」

正面から向かってくる植物を切り落とすが断面から新しい植物が生えてくる。

そして一本、一本とデルに突き刺さる。

「残念だが、お前の負けだ」

デルの意識が途切れると同時に空間も元に戻る。



その後ラプラスは辺りを見回し、エヴィリーナが居ないことに気づく。

「セト!あの女は?」



「残念ながらもう居ないぞ」

そう言って転移魔法で現れたのはシータだ。

「大将……遅えよ」

「ごめん」

そう言ってシータはデルを転移魔法で拠点に送る。

「おい、クソオヤジ。なんの真似だ」

シータがセトを睨みつける。



「あーなんだ。俺に目的があるわけじゃねえ。俺の連れだよ、目的があるのは」

まだ、話そうとする様子のシータにラプラスは肉薄し殴り掛かる。

シータはそれを避ける。

「次はお前か」

ラプラスがそう言うとシータが答える。

「いや、お前だ」

そう言ってシータは魔法を唱える。

「【罰天】」

光線がラプラスを襲う。だがラプラスは簡単に躱す。

「いい魔法だ、だがまだ遅い」

お返しとばかりに蹴り飛ばされる。

シータは立ち上がりラプラスを見上げる。





「おい、私に変われ」

誰かが私に話しかけてくる。

「誰っ!」

「誰って、ああ、あの精霊のせいか」

「まあいい、どうせお前じゃあいつらに勝てねえよ、いいから変われ」

「誰なんだ!お前!」

私がそう言うと声が答える。



「私はお前だよ、正確に言うと半分……な」

「何を言って!」

「もういいか、それより見とけ。お前が目指す所って言うのを見せてやる」

そう言うと視界が切り替わった。





「もういいか、それより見とけ。お前が目指す所って言うのを見せてやる」

「何を言って……」

ラプラスがシータに肉薄する。

だがシータはそれを躱し、ラプラスの顔面に蹴りをいれる。

そしてそのまま距離を取る。

「ハハ、良いねえ。その顔いい面してるぜ!」

「すぐお前もその面になるぞ」



そう言うとシータは笑う。

「やってみろ」

ラプラスはシータに肉薄し殴りかかる。だがシータは難なくそれを避ける。

そのまま足をかけ転ばせると蹴りをいれようとするが、それをラプラスは避けると後ろに下がる。

その隙をつき、シータが魔法を行使する。

シータの後ろから飛んでくる光線をラプラスは躱す。

「まだまだ躱せるぞ?」



「なら、もっといい物見せてやろうか?」

そう言ってシータは狂気の笑みを浮かべながら歩み始める。

その光景を見たセトは呟く。

「誰だお前」

「おいおい、娘の顔を忘れたのかよお父様?」

そう言ってセトに顔を向けるシータの目は赤く染まっている。

その目を見た瞬間二人は戦慄せざるを得なかった。

「【極地の祝眼】!なんで、お前がそれを持ってる!」

セトがそう言うとシータは答える。



「能力って言うのは魂に刻まれるだろ?なら肉体が違おうと私は私の力を使える」

「まあ、肉体は違わねえけど」

確かに今見えるのはシータだが、肉体から感じる違和感はシータではない。

「まあ、今の私の目的はこいつを育てる事だ」

「見てろ、これがお前の目指すべき場所だ」

「【自己転換】」

シータが片腕を伸ばしそう唱えると腕から分解されるように壊れ始める。

そしてすぐにまた壊れた所から治り始める。

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