誰?:1

昼頃にシータは何人かを集め話し合っていた。

「そのハイルデザートって結局何?」

「詳しい事は分かってない。何処にあるかもそこが何なのかも」

「は?何それじゃあどうやってそこに行くの?」

エフレンが相も変わらず厳しい言葉でシータに問いかける。

「それを考えるのが今の状況なの」

それにエヴィが答える。



「はあ、随分小さな一歩ね」

「だが、進まなくては始まらない」

「そもそも、アリューはなんで帰ってこないの?食料がいつか尽きるなんて少し考えたら分かる事だと思うんだけど」

「それを俺達が考えても仕方がない」

「まあ、それもそうね」

エフレンの愚痴をイーライはは止める。

「とりあえずは一旦停滞、私がもっと情報を集めてくるよ」

シータがそう言うと四人は頷く。





その日の夜頃。

エヴィリーナは一人で村にある、自分の家を掃除していた。

「定期的に掃除しなきゃね、埃が溜まるし」

そう言いながら家を掃除していく。

(使っていない物だけど、思い出だから)

そうしていると掃除は終わり、暫く外の空気を吸ってから戻ろうと外に出る。

するとエヴィリーナは気配を感じとる。

「誰!」



そう言い警戒をするが、姿を見せたのは意外な人物だった。

(金色のフェンリル!と女の子?)

女の子は近づいてエヴィリーナに話しかける。

「アリューは居るか?」

「……いないわ、それより何者?そっちの方は金狼セトでしょうけど」

「何用かしら?出来れば穏便に済ませてくれると助かるわ」



「セト、どうせ敵なんだろ?なら手っ取り早く行こう」

「それもそうだな」

そう言ってセトは金色の剣を咥える。

「俺はこいつと遊ばしてもらおうか」

セトが後ろを振り向くとそこにはデルが立っている。

「ちっ、バレてたか」

デルがこちらを伺う中、セトはデルに向かう。





「【鴉々】」

エヴィは牽制に魔法を使いラプラスに仕掛ける。

だがラプラスはそれを回避し、エヴィを補足する。

「【微粒の琥珀】」

ラプラスが無数の小さな結晶を飛ばしてくる。

それはエヴィの結界を破壊し、エヴィの体を傷つける。

「あーもう只物じゃない事は分かってたけど……」



「一応聞いていい?何するつもり?」

エヴィは血を流しながらラプラスに問いかける。

「アリューは居場所を教えろ、そうしたら決着をつけてやる」

「……私達が教えて欲しいくらいなのだけれど」

「まあ、話し合いじゃ分からないみたいだし最初から大博打と行きましょうか」



空間魔法

「【烏合の衆】」

その言葉と共に空間が黒く染まる。

この空間は私が使える魔法が無造作に決まりなく発動する。

「空間魔法か……随分おかしな魔法だな」

「いいぞ、多少は遊ばしてもらおうか」

「【無限方程式の籠手】」

ラプラスの腕に籠手が現れる。

ラプラスは接近戦に切り替えたようでエヴィに肉薄する。

それにエヴィは迎撃する。

【悪高鴉鳥】アクノトリタチ



だがラプラスはエヴィの魔法に一切の怯みを見せず、接近してくる。

二重詠唱

【黒夜鴉】コクヤチョウ

ラプラスはエヴィの魔法を搔い潜り、エヴィに肉薄する。

(見て回避してない?まるで未来を見られたみたいな)

「いい魔法だ」

そう言うとラプラスは拳をエヴィの腹に打ち込む。

その時に今度は【烏合の衆】から【悪高鴉鳥】が放たれる。

それにラプラスはすんでのところで回転し躱す。

(未来に無い攻撃か…)

「当たらないわね、でも見えてた訳じゃないんでしょう?」

ラプラスはそう言うと、エヴィを見据える。

「お前も、自分で制御できるわけじゃないだろ」



もう一度ラプラスが肉薄する、だが今度はエヴィもそれに応戦する。

ラプラスの拳がエヴィに迫る、エヴィはそれを防ごうと腕で顔を守る。

ラプラスの攻撃はフェイントで、本命は蹴りだった。

それに対応できずエヴィは吹き飛ばされる。

吹き飛ばされ転がっている最中、突然エヴィは消える。

(なんだ、姿を隠せる魔法か?)

今を計算し未来を導き出す。



ラプラスは後ろからの攻撃を籠手で防ぐ、そこにはエヴィがいた。

(何だ?さっきから何かがおかしいとは思っていた、だが何だ?転移魔法にマナの軌跡が無い?)

(まだ、目視移動しか安定して出来ないけど。今はこれでいい)

攻撃を防がれたエヴィは後ろに下がると同時に風のクナイを複数放つ。

ラプラスはそれを躱しながら距離を詰める。



エヴィは距離を詰められまいと転移魔法で距離をとる。

「時間を稼いでどうする、何も変わらないぞ」

「あら、そう簡単にくたばら無いわよ」

【烏合の衆】から放たれる魔法を避けながら、ラプラスが魔法を唱える。



【不定理を悟った者】ラプラスのあくま

ラプラスがそう唱えた瞬間。

ガラスの破片のような物が私の周りを囲む。

急いでそのガラスを壊そうとするが、破壊しようとした途端に体の力が抜けて地面に倒れこんだ。

(あ、駄目だ……意識が)

「言っただろ、結果は変わらない」



「エヴィ!」

デルが叫び、ラプラスに切りかかろうとする。

それをラプラスは簡単に躱す。

(どうする二対一、セトだけでもやっとだってのに)

「お前はどうする?まだやるなら相手をしてやらんこともない」

ラプラスがそう言うとデルは提案する。



「ハハ、お優しいこって。頼んだらタイマンも受けてくれるのか?」

「いいぞ、セトそこで見てろ」

「へいへい」

デルが驚きの表情をする。

「良いね!じゃあ遠慮なく」

デルが【天逆之矛矛】を持ちラプラスに肉薄する。

デルの剣がラプラスに振り下ろされる、だがそれをラプラスは籠手で防ぐ。

(攻撃をする前から防御姿勢を)

「良い剣だ、惜しかったな」

そう言うとラプラスはデルを殴り飛ばす。



「がっ、はぁ!」

デルは軽く切れた拳をみる。血が出ている。

ラプラスは手を払い、デルに再び向き合う。

「次はお前の番だ」

「ちっ、ああ良いぜ私の番だって言うならやってやるよ」



拡張魔術

「【永劫閣屋】」

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