混沌

何かが変わったというわけでは無い、だが確実に恐ろしい者の前に立っているという実感が二人にはあった。

ラプラスはそのままシータに肉薄し蹴りを放つがそれは躱されることも無くシータを通り抜けた。

「あ?」

ラプラスの蹴りはシータを透過する。そしてそのままシータは歩みを止めない。

数歩歩くいた所で振り返り、



「せっかくだ、見せてやるよ本物の魔法を」

そう言うとシータは魔法を唱える。

「【不倶戴天】」

光線がラプラスとセトの上から突き刺す様に降り注ぐ。

それを二人は躱すが躱した先にも光線が落ちてくる。

「チッ、これは」

「おいおい、まじかよ」

当たれば防げない、それをどこかで確信する。

光線を避けながらラプラスは魔法を唱える。

「【微粒の琥珀】」

ラプラスがそう唱えると、無数の結晶がシータを襲う。

だがそれは【現実改変】によって無かった事になる。



「じゃあ、こっちも行くぞ?」

そう言って光線を止めた後一瞬でラプラスの背後に回り込む。

空中で一回転しそのままラプラスを殴り飛ばす。

「ガッ」

そのままシータはセトに向き直る。

「は?速すぎん」

そのままセトの正面まで来ると、ラプラスにしたようにセトを蹴り飛ばす。

「ガァッ」

そのまま地面を転がる二人に向かってシータは言う。



「ハハハハ、お似合いだな。どうだ地面とのキスはよぉ屈辱的だろ」

シータは冷笑を浮かべる。

ラプラスは這いつくばる中、思考を働かせていた。

(なんで、あんな速さ……いや、それより)

「その体は、精霊と同じ。マナ体だな」

「おお、その小さい脳みそでよく分かったな。この体はマナ体だ」

そう言うとシータはラプラスの腹に蹴りを入れる。

ラプラスが吹き飛ぶ。そしてシータはセトに向かって歩く。

「ぐ……」



セトは立とうとするが体に力が入らない。

シータは動けないセトの前に立ち言う。

「お前も無様なもんだ。さっきまでの威勢はどうしたんだ?」

「……調子に乗るな、俺もラプラスもまだ本気じゃねえ」

「ああそうかよ。なら見せてみろ!」

そう言ってシータはセトを蹴り飛ばす。

「グハッ」

飛ばされながらセトは金の槍を作る。

踏ん張りを入れ、何とか留まりシータに槍を飛ばす。

「【悪金御来光】」

「その体がマナ体だって言うのなら、マナを纏わせればあたるんだろ!」

シータは飛んでくる槍を片腕を犠牲に軌道をそらす。



「はっ随分安く片腕をくれるじゃねえ……か」

セトの言葉は途中で失速する。なぜなら吹き飛ばされた腕が一瞬のうちに再生したからだ。

「及第点ってところか?三下」

ラプラスは未来を計算し伺っていた、シータの隙を。

「【無限方程式の籠手】」

転移魔法でシータの後ろに転移し籠手を装着した状態でシータを捉える。

「おいおい、誰の許可取って私の後ろにいるんだ?」

そう言うとシータが裏拳でラプラスを怯ませ、そのまま回し蹴りをラプラスに叩き込む。



「がっ!」

そのまま吹き飛ぶラプラス。

「見えてても動けねえって言うのは、もどかしいだろうな」

(【現実改変】か。体が動かなかった)

「さあどうする?このまま終わるか?」

「調子に乗るなよ。三下はお前だ」

ラプラスがそう言うとシータに結晶が襲う。

それをシータは避ける。

【奇石迷々】キキルイルイ



シータの頭上に超巨大な塊が現れる。それはまるで隕石のようだった。

だがそんなものをシータが躱せないはずがなく、あっさり躱す。だがそれが狙いだった。

避けた先には拳を固めたラプラスがいる。

放たれるこぶしを受け止める、すると瞬時に次の手が繰り出される。

そしてシータの顔面にラプラスの拳が当たる。

(何だ?当たっているはず?なのに感触が無い触れたという)

「ラプラス!それは幻覚だ」

セトがそう言うがもう遅い。

その言葉と同時にラプラスの腹にシータの蹴りが入る。

「殺さず甚振るのも飽きてきたな」

「ぐ……」



ラプラスは血を吐きながら吹き飛ぶ。そして倒れる。

「よし決めた。今から一分間だ、一分間生き延びられたら私は退こう」

「行くぞ、構えろ」

複数詠唱

「【不俱戴天】」

シータが魔法を行使すると。

セトとラプラスに四方八方から光線が降り注ぐ。

「くそっ」

「く、そ」

二人は何とか避ける。だが避けた先にも光線は飛んでくる。

縦、横無尽に放たれる光線を二人はギリギリで避ける。

「クハハ!よく躱すなぁ!」

「うるせえ、お前絶対ぶっ殺す!」

セトが吠える。避ける合間に槍を飛ばすがそれも虚しく躱される。

(落ち着け、何か策はあるはずだ)

ラプラスは考えるが思い浮かばない。

段々と速くなる攻撃に対処が遅れる。

ラプラスは肩に光線が掠り、痛みが走る。

「ぐぁ!」

そのまま攻撃を受け吹き飛ぶ。

(クソッ、どうすれば)

セトは必死に考えながら動くがどうしても躱しきれない攻撃があり傷を負う。

「よし、一分だ」

そう言うとシータは攻撃を止める。

「じゃあな、頑張れよ。第二ラウンドだ」



そう言うシータの後ろには人影が浮かんでいた。

その姿を見てラプラスが叫ぶ。

「次から次へと!化け物共が!」

それはかつてラプラスをハイルデザートを送った張本人。

悦楽の天使、クエンだ。

「あら随分楽しそうね。混ぜてくれる?」

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