ラプラスの悪魔:2
「何年ぶりだろうか……」
あそこに何年も囚われていた、あの日あの天使に負けた日から。
付喪霊が見えるようになったのはつい最近の事。
アリュー、遅くなったな。雌雄を決しに行くぞ。
「うっ!」
その時マナが尽き地面に倒れる。
「はぁ、はぁ」
あの鎖に繋がれている時にマナは回復していなかった……。
「クソッ……一度時間を置くべきだ」
私はその場でうずくまり、ただ時間が過ぎるのを待った。
「たくよ、こんなとこで何やってんだよ」
辺りが暗くなった頃に聞き覚えのある声が聞こえた。
重いまぶたをあけるとそこには見知った顔があった。
「なんだ、お前か」
「なんだとはなんだよ」
そいつは私の前に座り込む。
「セト、久しぶりだな」
「おう、久しぶり」
セトはそう返す。
「でもなんでお前がここに?」
私は疑問に思ったことを聞く。するとセトが笑う。
「ハッ、ここは俺の縄張りだぜ」
「縄張り?」
「ああ、この森は俺の庭だ。だからここに居るのは当たり前だろ」
なるほどな、確かにここはあの森か。
「飯をくれ腹減ったよ、セト」
「たく、相変わらず図々しい奴だな。ま、いいけどよ」
「ついて来い、作るのはお前だからな」
「どうしてだ?私はまたお前の飯が食いたいぞ」
私はセトの後ろをついていく。
★
「で、何してんだ?」
セトがそう聞いてくる。私はそれに答える。
「今日ようやっと天使から逃げれた」
「天使?なんだそれ」
「この世の秩序を遵守する精霊、それが天使だ」
「ふーん、それで?」
セトは興味なさげに聞いてくる。私はそれに答える。
「負けた、それで今のいままで幽閉されていた」
「なるほどな、それで4,5年も消えてたって訳か」
「……そんなに時間が経ってたのか?」
「ああ、そうだ」
私はその答えに少し驚く。だがすぐに納得した。
「で?これからどうするんだ?」
セトがそう聞いてくる。
「目的は変わらない、とりあえず回復を待つ、そしたらアリューを探す」
そう私が言うとセトが急に立ち止まる。
「どうした?」
私がそう聞くとセトが振り返る。
「そう言えばな、そいつに会ったその精霊もお前を探してたぜ、ラプラス」
「何処にいる!アリューは何処に!あいつは今何処に!」
私はセトに詰め寄りそう聞く。
「落ち着けよ、ラプラスまず俺の話を聞け」
「……」
私はセトから離れる。そして再び歩き始める。
「そいつは今、ハイルデザートを目指してる。俺がそこにお前が居ると言ったんだ。間違いねえ」
「……入れ違いと言うわけか」
「どうだろうな、見つけれてない可能性の方が高いだろ」
確かにあそこは簡単に見つけれるような所ではない。
「それとな……言いずらいんだが」
セトがそう言葉を濁す。私はそれに答える。
「なんだ?早く言え」
「お前じゃ勝てないんじゃないかと思ってな」
「そのアリューは本当にお前の言ってたアリューか?」
「俺はあいつを見た時、お前より強いと思った」
「……そうか、なら超えないとな」
セトは私を見て笑う。
「お前らしいよ、ラプラス」
「ああ、私は私だ」
そう話しているとセトの寝床へと着く。
「好きに作れよ」
「作ってくれセト」
「はあ?なんでだよ」
「これが最後になるかもしれないからな」
私がそう言うとセトは笑いだす。
「ハッ、しょうがねえな。この姿になるのは好きじゃねえが」
そう言ってセトは転身魔法をとなえ、その姿を人へと変えた。
道具は魔法で用意し、セトは料理を始める。
「ほら、さっさと食え」
そう言ってセトは料理を差し出す。私はそれを受け取ると食べる。
「相変わらず美味いな」
「当たり前だ、俺が作ってるんだからな」
そう自慢げにセトが言う。そして私もそれを返すように言う。
「そうだな、お前が作っているからな当然だな」
「……なあ、そのアリューは今俺のガキと一緒にいる」
私はその言葉に口に含んだ物を吐き出す。
「汚ねえな」
「お前が変なことを言うからだ!」
「事実だ、だから落ち着けよラプラス」
そう言ってセトは私に水を渡す。そして続ける。
「俺のガキが随分と大事らしい、そして俺のガキとアリューは一緒の場所にいた」
「……」
私は水を一気に飲み干し答える。
「分かった力が回復次第、そこ行く」
「それはそうだが一ついいか?」
「なんだ?」
「もしお前の目的が知られているのなら俺のガキはお前に攻撃する」
「だから俺は俺のガキの相手をしてやる、お前はお前の目的に集中しろ」
「……悪いな、何から何まで」
「気にすんな、俺はお前の親友だ」
私はその言葉に笑う。そしてセトが私に言う。
「だからよ、死ぬなよラプラス」
「ああ、死なないさ」
そう言って私とセトは拳を合わせた。
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