ラプラスの悪魔:2

「何年ぶりだろうか……」

あそこに何年も囚われていた、あの日あの天使に負けた日から。

付喪霊が見えるようになったのはつい最近の事。

アリュー、遅くなったな。雌雄を決しに行くぞ。

「うっ!」

その時マナが尽き地面に倒れる。

「はぁ、はぁ」

あの鎖に繋がれている時にマナは回復していなかった……。

「クソッ……一度時間を置くべきだ」

私はその場でうずくまり、ただ時間が過ぎるのを待った。



「たくよ、こんなとこで何やってんだよ」

辺りが暗くなった頃に聞き覚えのある声が聞こえた。

重いまぶたをあけるとそこには見知った顔があった。

「なんだ、お前か」



「なんだとはなんだよ」

そいつは私の前に座り込む。

「セト、久しぶりだな」

「おう、久しぶり」

セトはそう返す。

「でもなんでお前がここに?」

私は疑問に思ったことを聞く。するとセトが笑う。



「ハッ、ここは俺の縄張りだぜ」

「縄張り?」

「ああ、この森は俺の庭だ。だからここに居るのは当たり前だろ」

なるほどな、確かにここはあの森か。

「飯をくれ腹減ったよ、セト」



「たく、相変わらず図々しい奴だな。ま、いいけどよ」

「ついて来い、作るのはお前だからな」

「どうしてだ?私はまたお前の飯が食いたいぞ」

私はセトの後ろをついていく。





「で、何してんだ?」

セトがそう聞いてくる。私はそれに答える。

「今日ようやっと天使から逃げれた」

「天使?なんだそれ」

「この世の秩序を遵守する精霊、それが天使だ」

「ふーん、それで?」

セトは興味なさげに聞いてくる。私はそれに答える。

「負けた、それで今のいままで幽閉されていた」

「なるほどな、それで4,5年も消えてたって訳か」



「……そんなに時間が経ってたのか?」

「ああ、そうだ」

私はその答えに少し驚く。だがすぐに納得した。

「で?これからどうするんだ?」

セトがそう聞いてくる。

「目的は変わらない、とりあえず回復を待つ、そしたらアリューを探す」

そう私が言うとセトが急に立ち止まる。



「どうした?」

私がそう聞くとセトが振り返る。

「そう言えばな、そいつに会ったその精霊もお前を探してたぜ、ラプラス」

「何処にいる!アリューは何処に!あいつは今何処に!」

私はセトに詰め寄りそう聞く。

「落ち着けよ、ラプラスまず俺の話を聞け」

「……」

私はセトから離れる。そして再び歩き始める。



「そいつは今、ハイルデザートを目指してる。俺がそこにお前が居ると言ったんだ。間違いねえ」

「……入れ違いと言うわけか」

「どうだろうな、見つけれてない可能性の方が高いだろ」

確かにあそこは簡単に見つけれるような所ではない。

「それとな……言いずらいんだが」

セトがそう言葉を濁す。私はそれに答える。

「なんだ?早く言え」



「お前じゃ勝てないんじゃないかと思ってな」

「そのアリューは本当にお前の言ってたアリューか?」

「俺はあいつを見た時、お前より強いと思った」

「……そうか、なら超えないとな」

セトは私を見て笑う。



「お前らしいよ、ラプラス」

「ああ、私は私だ」

そう話しているとセトの寝床へと着く。

「好きに作れよ」

「作ってくれセト」

「はあ?なんでだよ」

「これが最後になるかもしれないからな」

私がそう言うとセトは笑いだす。



「ハッ、しょうがねえな。この姿になるのは好きじゃねえが」

そう言ってセトは転身魔法をとなえ、その姿を人へと変えた。

道具は魔法で用意し、セトは料理を始める。



「ほら、さっさと食え」

そう言ってセトは料理を差し出す。私はそれを受け取ると食べる。

「相変わらず美味いな」

「当たり前だ、俺が作ってるんだからな」

そう自慢げにセトが言う。そして私もそれを返すように言う。

「そうだな、お前が作っているからな当然だな」



「……なあ、そのアリューは今俺のガキと一緒にいる」

私はその言葉に口に含んだ物を吐き出す。

「汚ねえな」

「お前が変なことを言うからだ!」

「事実だ、だから落ち着けよラプラス」

そう言ってセトは私に水を渡す。そして続ける。



「俺のガキが随分と大事らしい、そして俺のガキとアリューは一緒の場所にいた」

「……」

私は水を一気に飲み干し答える。

「分かった力が回復次第、そこ行く」

「それはそうだが一ついいか?」

「なんだ?」

「もしお前の目的が知られているのなら俺のガキはお前に攻撃する」



「だから俺は俺のガキの相手をしてやる、お前はお前の目的に集中しろ」

「……悪いな、何から何まで」

「気にすんな、俺はお前の親友だ」

私はその言葉に笑う。そしてセトが私に言う。

「だからよ、死ぬなよラプラス」


「ああ、死なないさ」

そう言って私とセトは拳を合わせた。

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