ラプラスの悪魔:1
「探したよ、まさかこんな森の中に古風な家を作ってるなんてね」
アリューは縁側に座っている人物にそう言う。
「気に入っているんだ、落ち着ける所さ」
その人物はアリューの言葉にそう返す。
「それで、何用かな?あの時の続きかい?」
「そう言いたい所だけど違うね、オリジナル、君なら知ってるか?『ハイルデザート』を」
「これはまた面白い事を聞くね。そうだね、知っているよ」
「そう、じゃ場所を教えてもらおうか」
アリューはそう言うとその人物は笑う。
「やめといた方が良いと思うよ、あそこには【天使】が居る」
「天使?」
「そう、秩序を遵守することに命を懸ける精霊、天使それが『ハイルデザート』には居る」
「アリュー・ジルベス、君はその【天使】の粛清対象だよ」
「粛清対象?」
アリューはその人物の言葉に驚く。
「そう、君の存在は【天使】にとって異物でしかない」
「どうして僕が【天使】に狙われるのさ?」
「それは君が一番分かっているんじゃないのかな?アリュー・ジルベス」
そう言ってオリジナルは笑う。
「【卍天魔法】それは【天使】にとって最も忌むべき魔法、【天使】はそれを許さない」
「はぁ、そうゆう事ね……」
「この力はどうゆう物なのかな」
「それは、全ての精霊が持つ力ではある。でも精霊にとっては持て余してしまう力さ」
「持て余す?」
「そう、精霊はの体はマナだろ。もしその状態で【卍天魔法】を使おうとすれば、体がその魔法に吸い込まれる」
「つまり精霊にとってその魔法は自分を殺す魔法」
「だから、その魔法は世に現れることが無い魔法。のはずだった」
「でも僕は転身魔法で肉体を得れる、だから使えたと」
「そうゆうこと、でも【天使】は許さない。【天使】にとっての禁忌を犯した君をね」
そう言ってその人物は立ち上がる。
「それと最後に、ハイルデザートはこの空の上にある。場所は僕でも知らないね、なんせあれはこの世の始まりから一生動き続けた空島だからね」
「そっか……ありがとう、そう言っておくよ」
そう言ってアリューは転移魔法で消えた。
★
「天使、私をここから出せ。やらなきゃならない事がある」
ここはハイルデザート、万物に霊が宿る場所。
そこに鎖につながれながら一人の少女がそう言う。
この少女こそがアリューが探している精霊、名を【ラプラスの悪魔】。
「何度言えば分かる、いい加減しつこいぞ」
そう言って翼の生えた女がラプラスに剣を向ける。
剣を向けたのは天使。秩序を遵守することに命を懸ける精霊。
「雌雄を決さなければならない相手が居る」
ラプラスは天使を睨みつける。
「貴様にそんな相手はいない、大人しく断罪の日を待つんだな」
そう言って天使はこの場を離れる。
「私は、アリュー・ジルベスを殺さなければならない」
ラプラスの悪魔はそう呟き続ける。
「付喪霊……この鎖を解いてくれ」
ラプラスの悪魔がそう唐突に何かに語り掛ける。
「君は、良い人?」
純粋な子供のような声がラプラスの悪魔にそう聞く。
「良い人ではない、悪い人でもない。ただの愚か者だ」
「そっかー、でも愚か者ってなに~?」
「自分で結んだ約束を守れない、それが愚か者だ」
「へー、そうなんだー」
ラプラスの悪魔は鎖を外そうとする。だが鎖が外れる気配は無い。
「ねえ、君の名前は~?」
「ラプラスそれが私の名前だ」
「じゃあ、ラプちゃんだね~」
そう言って付喪霊は笑う。
「約束を守らないないといけない、だからこの鎖を解いてくれ」
「う~ん。分かった!頑張ってねラプちゃん」
すると鎖は自然に解け、ラプラスの悪魔はその鎖を手に取る。
「ありがとう」
ラプラスの悪魔はそう言うと転移魔法でこの場を去った。
★
「な、何が起こってる!」
もぬけの殻となったその檻を見て天使はそう叫ぶ。
「……まさか!【力封じの鎖】の付喪霊、お前か!」
「なに~僕が何かしたの?」
「ここに居た奴はどうした?」
「ラプちゃん?どっか行っちゃったよ~」
天使は舌打ちをする。
(おかしい!付喪霊が悪人に耳を貸すなど!)
天使は考える。
(まさか、あの精霊が大儀を成そうとでもしているのか?……ふっありえない、ただのイレギュラーだこんなもの)
「まあいい。すぐに屠ってやるラプラスの悪魔」
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