ラプラスの悪魔:1

「探したよ、まさかこんな森の中に古風な家を作ってるなんてね」

アリューは縁側に座っている人物にそう言う。

「気に入っているんだ、落ち着ける所さ」

その人物はアリューの言葉にそう返す。



「それで、何用かな?あの時の続きかい?」

「そう言いたい所だけど違うね、オリジナル、君なら知ってるか?『ハイルデザート』を」

「これはまた面白い事を聞くね。そうだね、知っているよ」

「そう、じゃ場所を教えてもらおうか」

アリューはそう言うとその人物は笑う。



「やめといた方が良いと思うよ、あそこには【天使】が居る」

「天使?」

「そう、秩序を遵守することに命を懸ける精霊、天使それが『ハイルデザート』には居る」

「アリュー・ジルベス、君はその【天使】の粛清対象だよ」

「粛清対象?」

アリューはその人物の言葉に驚く。



「そう、君の存在は【天使】にとって異物でしかない」

「どうして僕が【天使】に狙われるのさ?」

「それは君が一番分かっているんじゃないのかな?アリュー・ジルベス」

そう言ってオリジナルは笑う。

「【卍天魔法】それは【天使】にとって最も忌むべき魔法、【天使】はそれを許さない」

「はぁ、そうゆう事ね……」



「この力はどうゆう物なのかな」

「それは、全ての精霊が持つ力ではある。でも精霊にとっては持て余してしまう力さ」

「持て余す?」

「そう、精霊はの体はマナだろ。もしその状態で【卍天魔法】を使おうとすれば、体がその魔法に吸い込まれる」

「つまり精霊にとってその魔法は自分を殺す魔法」



「だから、その魔法は世に現れることが無い魔法。のはずだった」

「でも僕は転身魔法で肉体を得れる、だから使えたと」

「そうゆうこと、でも【天使】は許さない。【天使】にとっての禁忌を犯した君をね」

そう言ってその人物は立ち上がる。



「それと最後に、ハイルデザートはこの空の上にある。場所は僕でも知らないね、なんせあれはこの世の始まりから一生動き続けた空島だからね」

「そっか……ありがとう、そう言っておくよ」

そう言ってアリューは転移魔法で消えた。





「天使、私をここから出せ。やらなきゃならない事がある」

ここはハイルデザート、万物に霊が宿る場所。

そこに鎖につながれながら一人の少女がそう言う。

この少女こそがアリューが探している精霊、名を【ラプラスの悪魔】。



「何度言えば分かる、いい加減しつこいぞ」

そう言って翼の生えた女がラプラスに剣を向ける。

剣を向けたのは天使。秩序を遵守することに命を懸ける精霊。

「雌雄を決さなければならない相手が居る」

ラプラスは天使を睨みつける。



「貴様にそんな相手はいない、大人しく断罪の日を待つんだな」

そう言って天使はこの場を離れる。

「私は、アリュー・ジルベスを殺さなければならない」

ラプラスの悪魔はそう呟き続ける。

「付喪霊……この鎖を解いてくれ」

ラプラスの悪魔がそう唐突に何かに語り掛ける。



「君は、良い人?」

純粋な子供のような声がラプラスの悪魔にそう聞く。

「良い人ではない、悪い人でもない。ただの愚か者だ」

「そっかー、でも愚か者ってなに~?」

「自分で結んだ約束を守れない、それが愚か者だ」

「へー、そうなんだー」

ラプラスの悪魔は鎖を外そうとする。だが鎖が外れる気配は無い。



「ねえ、君の名前は~?」

「ラプラスそれが私の名前だ」

「じゃあ、ラプちゃんだね~」

そう言って付喪霊は笑う。

「約束を守らないないといけない、だからこの鎖を解いてくれ」



「う~ん。分かった!頑張ってねラプちゃん」

すると鎖は自然に解け、ラプラスの悪魔はその鎖を手に取る。

「ありがとう」

ラプラスの悪魔はそう言うと転移魔法でこの場を去った。





「な、何が起こってる!」

もぬけの殻となったその檻を見て天使はそう叫ぶ。

「……まさか!【力封じの鎖】の付喪霊、お前か!」

「なに~僕が何かしたの?」



「ここに居た奴はどうした?」

「ラプちゃん?どっか行っちゃったよ~」

天使は舌打ちをする。

(おかしい!付喪霊が悪人に耳を貸すなど!)

天使は考える。

(まさか、あの精霊が大儀を成そうとでもしているのか?……ふっありえない、ただのイレギュラーだこんなもの)

「まあいい。すぐに屠ってやるラプラスの悪魔」

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