血の戦争

旅と過去

それから何日か経って。

「じゃあ、行ってくるね。アリュー」

「うん、気をつけてね」

私はノアを連れて旅立った。

ノアを連れて行った理由は「私も一緒に行く」と聞かなかったからだ。

まあ、いいけど。


「ねえシータ、どこに行けばいいの?」

「アリューから聞いた話だと、金狼は西の方にあるヴァンスっていう国で度々確認されてるらしい」

「ヴァンスか、じゃあ行く?」

「うん、行こうか」

ノアに言われ私達は西のヴァンス国へと転移した。


「僕は君の親になりたかった、だからちょっと残念だな」

アリューはシータが居なくなった部屋で一人そう呟く。




《アリューの過去編》

505年前、僕は森をさまよっていた。

死ぬ間際だったと思う。僕は住んでいた所から逃げ出した。

理由は殺されかけたから、これまで一緒に過ごしてきた仲間の精霊に。

その精霊はラプラスと言う名を語っていた。ラプラスはいつも「いつか、さよならをする事になる。そうならないように、お前を導く」


と言っていた。だけど、僕はその言葉の意味が分からなかった。

そして、精霊のラプラスに僕は裏切られた。ラプラスに新しく習得した魔法を見せようとした時。

ラプラスは急に激昂し、悲しみ僕を殺そうとしてきた。

何とか、命からがら逃げだしてついたのが森だった。


僕はそれからずっと一人で過ごした。いや確か一度だけ彼と出会ったか、精霊の見える人間に。

その500年間に世界は大きく変わった、三決戦が終わり世界は人間一色に染められた。

だけど、僕は別に人間がどうなろうと興味なかった。

「寂しいな」


ただ、それだけ呟いていた。

それから森をふらついていた、特に理由は無くてしいて言うなら暇だったから時間つぶしに。

久しぶりに来た森の景色は少し変わっていて、辺り一帯が新木が生えてる場所があった。

少し疑問に思いつつも僕はただ辺りを散策していた。


動物や魔物達は僕には寄ってこない。本能的に恐れてるからだ。

暫く歩いていると少し開けた場所に出る。そしてそこには小さな木が生えていて、上から差し込む光がとても美しい。

そこには狼がいた。銀色の毛並み、月光ような目、紛れもないフェンリルだ。

そしてそのフェンリルを見て、僕は絶句する。僕の目は生物の持つ力を見れる、それは精霊なら持つ力。


その力は紛れもない、世界を滅ぼしえる力だった。殺さなければいけない、僕はそう思った。

殺すために近づいたらフェンリルは僕に気付いたようでこちらに顔を向ける。

その顔はとても寂しそうで、僕はただ立ち尽くすしか無かった。

そして思わず話しかけてみた。


「ねえ、君はここで何をしているの?」

「ここに居ると暖かくて……寂しさを忘れられる」

そうフェンリルは答える。どうやら僕に敵対心は無いようだ。

「そっか」

「僕も一緒に居てもいいかな?」

「良いよ、寂しいなら一緒に居よ」

そう言うと僕はフェンリルの隣に座った。


そこから僕とフェンリルは一緒に過ごした。その日々は本当に楽しかった。

君に名前を聞いたら無かったから名前をあげたんだ。


精霊の言葉で月を表すシータとこの子の力からスコール、

合わせて『シータ=スコール』と。


他にも力を欲してたから魔法を教えてあげた。

シータは覚えが早く、とても魔法が上手い子だった。だけどまだ子供で僕は心配になった。

僕は不安に耐え切れず、シータには内緒でシータの魔術を取り上げた。

力を欲してるこの子にそれは余りに酷だと思った。


でもそれでも、僕が居る。全力でこの子を守ろう、そう思った。

そうアリューは決意を固めた顔をして言った。



ヴァンス国の近隣付近。

「ノア、【認識改変】の魔法を使うからじっとしてて」

「?まあ、お願いするね」

私はノアにそう言うと自分とノアに【認識改変】を使う。

【認識改変】は使用した者への認識を自由に変えられる魔法。


そしてノアの認識を他からは人間に見えるように、と言っても耳の形と髪色を変えるだけだが。

もちろんこれは私にも使う耳と尻尾を見えなくする、もちろん実体はあるのでそこは気を遣う。

「どう?ノア」

「うーん、何か変な感じがするけど大丈夫だと思う」

「じゃあ、行こうか」

そう言って私達はヴァンス国に向かう。


ヴァンス国はノアールと同じように一つの街を中心として広がっていて、他の町や村は無いようだ。

その事から昔からこの形だということが分かる。

街並みは綺麗に区画整理されていて丘の上にには大きな城が見え、どこか古代ギリシャを思わせる雰囲気がある。


「ねえ、シータ。どうやったら金狼に会えると思う?」

「そうだね、まあフェンリルは結局魔獣だから冒険者ギルドに行くのがいいと思う」

「冒険者ギルド?って何?」


ノアは不思議そうにそう聞いてきた。そういえば、エルフにギルドを知る由もないか。

そもそも私もノアールで見かけたから冒険者ギルドが有ると勝手に思っていたけど、この国にギルドが有るとは限らないな。


「冒険者ギルドは簡単に言えば仲介所だよ。依頼を頼んだり、依頼を受けたりね」

「ふーん」

「じゃあ、冒険者ギルドに行こうか?多分有ると思うけど」

そんな話をしつつ私達はヴァンス国に入っていく。



「前回の来訪から二か月、そして今度はこっちの番だったわね」

エヴィが面倒そうに呟いた。

「あら?それは一体何事で?」

それにユナが反応する。


「聞こえてたのね。……この拠点の上に私達の村があるでしょ、元々村でね他の村との交流が二か月ごとに会ったの。それで今度はこっちが向こうの村に向かわなきゃいけなくてね」

「なるほど、そういう事だったんですね」


ユナは納得したように頷く。

「悪いのですが、村はもう滅んでしまったのですから。もう向かう必要も理由も無いのでは?」

「はっきり言ってくれるわね。まあ、その通りでもあるわ」


そう言ってエヴィはユナに向き直る。

「でもねユナ、縁は綺麗に切った方がお互いあと腐れなくて済むでしょ」

「……確かに、素敵な考えですね」

「そうね、私もそう思う」

「あら、エヴィリーナの言葉では無くて?」

「違うわ、ただの受け売りよ。母のね」



「ん~君たちも出かけちゃうのか、ちょっと寂しくなるね」

アリューが私達を見送る。達って言うのはもう一人連れてきたからだ。

「おい!私は行くなんて言ってねえぞ」

デルが私に対し抗議をあげる


「二つ返事で「良いぜ」って言ったのはそっちでしょ」

「ざけんな!何が「ちょっとついてきて」だ。どこまで連れてく気だよ!」

「地獄までに決まってるでしょ」

「ふざけんな!」


デルがそう言った瞬間、デルの肩にアリューの手が乗る。

その瞬間デルの姿が消えた。アリューが【転移】でデルを飛ばしたのだ。

「さっエヴィも、行きは送るよ」

「ありがとう」



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名前の由来を変更しました。

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