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「さて、そろそろ読書は終わりかな」

ユニバースは本を閉じて立ち上がる。



【転移】



転移した先は乱雑に物が置かれた薄暗い部屋。

「一日ここに顔を出さないなんて初めてだな。オリジナル」

「ちょっと読書に没頭しすぎただけさ№1」



「まあいい、それより結果だ。まあ代々はお前の予想通りだよ」

「あ、やっぱり。意識ある状態では続いて二十分当たってたみたいだね」

「私としたらこれ以上ない悲報だ。でも良いさ死ぬ覚悟は出来てる」

「君は死なないよ、意識は無くなるけど肉体は生きてる」



「それは死んでいるのと一緒だ。でも意識があれば生きている」

「そうだね、だから僕たちはアレを選んだ。……そう言えば№2は?僕に会いたがってるでしょ」

「後ろに居るだろ」



ユニバースの後ろには、No2が立っている。

「やあ、相変わらずだね。君は」

「それ程でも」

No2は褒められてると思っているようだ。



「№2本当に死ぬ覚悟はあるの?」

「勿論。マスターの望みを叶える為ならいくらでもこの命をささげられるよ」

「君は本当に……でもすまないよ僕は何も出来なくて」

少し呆れた後、ユニバースは№1と№2に謝罪をした。




「何を言ってるんだ仕方のない事だ。それにマスターと生きた私達三人の中で誰か一人でも生きていなければ誰がその思い出を語れる」

「マスターの思い出はずっと忘れないでねオリジナル」

「当たり前だよ、君たちとの思い出は今後生涯忘れる事は無い」

その後もただの思い出話が続く。時間が少し経った後思い出したかのようにオリジナルが切り出す。



「ああ、そうだ。装置の確認をしようか。少し時間を空けてたしね」

「そうだな」「そうだね」

「じゃあいこうか【転移】」




その瞬間に三人はどこか別の場所に移動した。

そこは何もない真っ白な空間。この空間には窓も扉も家具すらない。

そこにあるのは同じような二つの装置だった。その装置は人一人分の大きさはある。上下に魔法陣が描かれていて、その魔法陣の中にはさらに小さな魔法陣が描いてある。

「君たちはこれに拘束され、№1は魔法を強化、君の光のマナをこの世界の生物以外に纏わせる魔法陣の力を使って世界中にね」




「№2は概念と纏わせた物以外を魔法陣の力を使って君の魔術【減想】を何度も何度も重ね掛けをして減速していく」

魔法の組み立ての確認をしながらオリジナルは語る。

「いつもここに来たら説明して、流石に分かってるよオリジナル」

「君たちへの罪悪感を消さない為だよ」



「オリジナルはそんな事考えなくていいよ」「そうだな」

No1とNo2はそれぞれに答える。

「君たちはこの魔法陣の精神汚染に耐えられない。だから意識を消して君たちを殺すんだ。

それなのに罪悪感を考えなくていいなんて言わないでくれよ」

オリジナルの声には悲哀が混ざっていた。



「大丈夫。私達は大丈夫だから」

No2がいつもの調子で答える。その言葉に答えは返さず。照れ隠しのように別の言葉を話す。

「装置に異常はないみたいだし戻ろうか」

「そうだな」「そうだね」





【転移】で元の場所に戻り。オリジナルは№1でも№2とも違う他のユニバースと話していた。

「光の魔法を使う者この減速の範囲外。光の魔法を使う者は消さなければならない」




「はい、分かっておりますオリジナル。先の楽園によって、№3から№73達がこの世界の光魔法を使う70の生物の内を60を殺す事に成功しております」

「10人は死んだか、死なない為に【終点】を持たせたのに……」

「ですが、そのほとんどは我々が複数で挑めば始末できるかと」

「それは分かっているさ、でも一人そうも行かない奴が居る。そいつを№1、№2とスカウトした一人の人物を使って殺すよ」



(№1と№2は僕じゃなくマスターが作ったコピーだから特別に強い、この二人とあとはこの武人を当てれば、勝てるさ)



オリジナルが向いた方に居たのは老いてはいるが体は筋肉質で、顔全体に火傷傷がある男がいた。

「武人アストラレアス君、君には期待しているよ。英雄になってくれる事を」

「ハハ、老体に無茶を言ってくれるな。これだから若者は」

「僕の方が随分と年上だよ。500年は生きてるからね」

「そう言うな。老いぼれの戯れと思って聞いておけ」




「ついにボケちゃったか、まあ140歳のおじいちゃんじゃ仕方ない」

「お前さんは、500歳と自分で言っておったのに140歳をおじいちゃんと言うか、笑えるわ」

「僕は心も体も老いてないしね」

オリジナルのその言葉に対して老いた英雄は笑う。

「それもそうか、かかか」

「それよりその一人を殺せば本当に貴様の思考だけが存在する世界は永遠に続くだろうな」

「それは保証するよ、シータ・スコール。このフェンリルを殺せば装置を起動させ世界は永遠の楽園になる」



「フェンリルだと?人間では無いのか?」

「人間じゃない。けど【転身魔法】によって姿を変えてるから見た目は獣人かな」

「まあいい。我は永遠を生きれるのならそれで満足だ」

アストラレアスはオリジナルの前から立ち去る。

オリジナルはそれを見届けた後、またコピーに話しかける。

「全く、ここまでどれだけ大変だったか知らないで。まあ僕も君たちも頑張らなきゃいけないね」

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