「待てよ、ドルガ」


「何で、立ってやがるフェンリル」


意識が朦朧とする。でも頭はびっくりするほど冴えている。

なんだろうこの感覚は。何かの核心を私は掴んだ。そんな気がした。

「ラウンド2か良いぜ。来いよ」

ドルガは構えを取り、こちらの様子を伺っている。

そんな中私は動かない。


血の滴る音だけが時間が経っていることを証明する。


「ハハハ、ハハハハハハ。ドルガ!ありがとう私の慢心をぶち壊してくれて。今から!そのお礼に良い物を見せてやる!!」

「何をする気だよ」

「見てれば分かるさ」



代々光の魔法は実現不可とされてきた事がある。この世界の法則に反しているからだ。

簡単に言えばありえない。どう考えてもそれは実現しえない。それは……



魔術の覚醒、卍天魔法。分かってる、分かってるよアリュー。

でも今はこのインスピレーションを止めたくない!


「黒く、連なり、結ぶ【九天衝落:黒天】こくてん

魔法陣から出る光は黒く光っている。


黒い光そんなものはあり得ない。でも魔法とは本来不可能を可能にしてきたものだ!

黒い光は互いに結び連なる。それはまるで黒い槍のように。


(これは、さすがに避けるか)

【天鎖苦殺・黒】てんさくさつ・くろ

「!」

【九天衝落・黒天】を使ったとき無駄なマナが溢れ出た。

そのマナを使い発動する。

マナが黒く光り。点と点を線を結び。

ドルガの結界もろとも体を貫く。


「避けられるか?」

「……くそが」

(重ねろ結界を何重にも)

黒い光の槍をドルガ目掛けて発射する。

しかし、結界を張り何とか防いでいる。


「こっちもだ!!【炎蛇】えんじゃ

ドルガのマナが凝縮された炎の塊が蛇の形を成し襲ってくる。

「結界を重ねる。いいヒントをもらった」

結界を重ねる。何重にも。そして奴の【炎蛇】を真正面から受ける。


「ふふ、ははは。火力を上げろ!そんなんじゃ私の熱が冷めるだろ!」


「ちっ、うるせーな」

炎の勢いが上がる。遠隔で発動している魔法の強化!

ああ、良い次はこれだ。



四重詠唱


「【九天衝落:黒天】」


四つの【九天衝落】を同時に重ねて発動する。

黒が濃くなる。漆黒の槍。

威力が跳ね上がるさ。先程とは比べ物にならないくらいに。

その光景を見てドルガの顔には焦りと驚きが見える。


「おい、まじかよ。そんなんありかよ」


ドルガの結界は破壊される。

バリィ!と結界が割れる音が何とも心地いい。

そして、そのままドルガを【九天衝落】は貫いた。


(ちく、しょう)

ドルガはそのまま倒れ伏す。

体の半分を無くしながら私に話しかけてくる。

(復讐、俺と同じじゃねえか。俺が言えた事じゃなかったな)


「訂正だ、お前は強い。実践不足だがな」

そう言うとそのまま動かなくなった。

そして私もその場に倒れこんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る