狼追い:2

数時間後。


「エヴィリーナ。君はほとんどできているよ」


アリューがそう言った。


確かにほぼ完璧に近いほどできていた。




「本当?でも確かにあの時と近いような」


エヴィリーもそう言って驚いている。


凄い事なのだろうけど。どこか劣等感がある。


でも私が劣っているというよりはエヴィリーナは魔法の才があるのだろう。


そんな事を考えているうちに時間は経った。







二週間が経った。


獣人達もノア達も暮らしに慣れてきたようだ。


二週間訓練していると速い者はもうマナの扱いができるようになっていった。


デルとエヴィリーナやサーシャやミーナ。ルウとノアももうすぐだそうだ。


後はイーライと言う男の犬の獣人とエフレンと言う女の狐の獣人も扱えるそうだ。


種族的にエルフの方が習得は早いらしい。




しかし獣人達は高い身体能力がある。扱いさえ覚えてしまえばそれに上乗せできるのだから、楽しみだ。




獣人達やノア達がマナを扱う練習をしている間。私にはすることが無い。


アリューと私が持っていた食料が付きかけたがエルフの村の食糧庫が手を付けられていなかったので


それを使ったおかげで問題はない。なので私はここ二週間暇を持て余しているのだ。


地面がぬかるんでいる。昨日の雨がまだ乾いていないんだろう。


そんな平凡な時間をすごしていた。




そんな中私は人のマナを感知する。


人のマナを感知した私は、その方向を見つめると、森の奥から異変が迫ってくることに気付く。


どこかで感じた事があるような。


「ねえ、何か来てるようだよ。恐らく人間一人だね」


アリューがテレパシーでそう伝えてきた。




「人間、どうして」


「分からないけど、真っすぐこっちに向かってくるよ」


「私が行くよ。アリューは続きをしてて」


「分かった、でも危なくなったら言うんだよ」


「うん」




そう言い終わると同時に転移魔法を使い。


件の人間の前に姿を現した。




その男は確かカルバドリアで出会った。


ドルガと言う。浮浪者だった。




「なぜ、お前がここに居る」


「よう、お前フェンリルなんだってな」


不機嫌そうな顔でこちらを見る。


まるで汚いものを見るかのように。




「なんで、それを知っている。いや、あの店主か?」


「そうだよ、それで合ってるよ」


失敗した、あの店主、ふざけるな。




「少し昔話をしようぜ俺がここに来た理由だよ。俺はな狼追いって」


「どうでもいい、何しに来た」


ドルガの話を遮り問う。


「それは、俺が聞きてえよ。お前さ奴隷買って何する気だよ」


「お前に話す必要があるか?」




「…俺はさ、別にお前の答え次第では今から戻っても全然いいと思ってる」


「お前は話が出来てるし無差別に人襲うわけでもない」




「人間への復讐をするために。国を滅ぼす為に必要だったと言ったら」




「……やっぱお前はフェンリルだ。俺の村を襲ったのと同じ結局は同じこと」


「あーあ、楽できるならそっちに流れたかったぜ。本当に」


「死ねよ、お前」




そう言って手を前に出すと炎の球が飛んできた。


結界魔法を展開し防ぐ。


「そういえば、この前は聞けなかったな」


「何をだ」


「お前の名前だよ」


「シータ=スコール」


「そうかい、じゃあ始めようぜ」







戦いが始まった。


魔法を使っていたようだが今は短剣を抜きこちらに走ってきている。


だが、遅い。


!そう思っていたのに急にドルガは視界から外れる。


嫌な予感がする。咄嵯に後ろを振り向くとそこにはドルガが既に構えている。


(!でも結界を超えられないはずだ)


そんな考えとは裏腹に私の腹部に短剣は突き刺さる。


結界は破られた。そのまま追撃の蹴りを食らってしまう。


結界を破られる奴だ。こちらも本気で行かなくては。




「【光鞭】」


幾つもの光の鞭を出現させドルガを襲う。


広範囲、なおかつしなり動きの予測がしにくいはずなのに。


全ての光鞭を避け、切り刻み、叩き落す。


おかしいただの武器が光の魔法に干渉できるはずがないのに。


いや、前にもあった。どう言う事だ?あの剣も魔術か?




「マナを武器に纏わせて」


「ああ、そうだよ」




光の魔法に干渉できる。と言う事は。


マナを扱えてる。確かに強い。


だけど、それでも。私が勝つ。


距離を完全に詰め切られる前に!




「【九天衝落】」


「!」


驚いてるようだがそのまま突っ込んでくる。


ドルガも結界魔法を使っており。私の魔法はきいていないようだった。




目の前には短刀の刃が迫っており、それを自分の右手で受け止める。


しかし、そのままひかれ右手の半分を失う。


「がっ、あぁ」


「!?」




足を引っかけられそのまま後ろに倒される。


ドルガは私の首を狙っているようですぐにとどめを刺しに来る。


一か八かで私はドルガの後ろに転移する。




しかし、これも予想していたのか反応され振り向かれ首を掴まれる。


「転移魔法に無駄が多すぎなんだよ。バレバレだぜ」


「はな、せ」


なんとか脱出しようとするも力が入らない。


転移魔法は無理だあれはマナの組み立てがいる意識がもうろうとして使えない。




「【線、天】」


光線がドルガを貫こうとするがそれは結界魔法に止められる。


「戦い相手の結界魔法を破れなかった時点で勝ちは薄いぞ」


そう言うと持っていた短剣で私の心臓を貫いた。


そしてすぐ私を投げ飛ばした。




「こんなもんかよ。お前さ、弱いぜ」


そう言い捨てるとドルガは拠点の方に歩いて行く。


ドルガはなんで拠点に行く。目的は私だろ。




いや、どうでもいいか。拠点にはアリューが居る。なんの心配も無い。


私はここで回復に集中するべきだ。休もう。

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