エクスカリバー(聖なる光を放つ聖剣の意):2

「国を滅ぼそうとしている奴に向ける第一声がそれか」

 青年は落ち着いている。そして私に対話を求めているようだった。

「何故こんな事をする。なんの目的だ」


「答える必要はない」

「そうか。なら、力ずくで聞かせてもらう」

 結界は広がり四角形になっていく。

国に被害は出さない。と言うわけか。

この強さ、恐らく、この男が私の母を殺した張本人だ。

怒りで感情の制御がききそうにないな。


「お前だろ、私の母を殺したのは!」

「……いきなり何だ。そしてどうゆう事だ?……悪いな覚えがない」

 転身魔法を解いてフェンリルの姿になる。

「この姿でもか?」

「そうか、君は。……そう言う事か。しょうがないな」


 男は何か納得したみたいだ。

やはり、当たっている。

怒りが憎しみがふつふつと沸き上がる。

私の家族を奪ったやつが目の前にいる。


「私の怒りよ!その怒りを体現し光と成して敵を滅せよ!【九天衝落】」

 私の周りから九つの魔法円から光が飛び出す。

それは男に向かって飛んで行く。

バチィ 男の周りに展開されている魔法陣によって魔法は防がれる。

こちらの攻撃が届かない。


 男の顔を見てみると余裕がある。

まるで私を憐れんでいるようだった。


「愛する者たちの為だ、駆逐する」

 男は魔法を唱え男の周りにいくつもの光を纏った剣ができる。

「【グラム】」

 それは私を貫かんとばかりに迫ってくる。

それに対して私も結界魔法を展開し応戦する。


「…な、」

 バキィ!と音を立て私の結界は幾つもある剣の一つでいとも容易く壊された。

うろたえている場合じゃない飛んでくる剣を避けないと。

(右!左から!次は避けられない【転身魔法】)

避けきれないと判断した私は人の姿になって何とか避ける。

でも最後に来る剣を見れていなかった。


 ザクッ!!

腹に突き刺さる。

「あ、ぐぅ」

 血が流れる。痛みを感じる。

久しく感じてなかった感覚だ。

傷口は焼けるように痛む。

私はすぐに回復魔法を唱える。

(【治癒】)


 勝てない、そう思わせるには十分すぎるほどの魔法の差があった。

でも、やらなければならない。こいつはここで殺す!

「【九天衝落:激天】」

 さっきと同じ攻撃だ。しかし違う。

光は荒れ狂いあらぬ方向へと飛んで行く。

それをさらに魔力使い制御男へと飛ばす。

「死ね!」


【二代目の聖剣】エクスカリバー

 男の手元に現れたのは鞘だった。

結界も張られず光が男に当たる。

爆風が起こる、それによって男の姿が見え無くなる。


「―――ッ」

 爆風が無くなり姿を現したのは無傷の男だった。

(この二代目の聖剣は発動すれば私に傷を負う事を許さない)

(つまりこの魔法を使う限り私は無敵だ)

「終わらそうか」


【聖なる光をエクス放つ聖剣の意】・カリバー


 光の剣が現れる。

あれに触れてはいけない。死ぬ。直感的に理解できた。

そして避けられない。それも理解できた。

「この光に触れるすべての人ならざる者は決して例外なく死に至る」

「……終わりだ。死ね、覚悟ある狼よ」


 死ぬのか、私は目的も果たせずまま死ぬ。

嫌だ、そんなの嫌だ。どうする考えろ、考えるんだ。

だが考える暇も無く光を放つ剣は迫ってくる。

「―――」

(【転移】)



 

「逃がしたか。まあ、いい」

「そして来るなら来い相手になってやる」


 ★


 一瞬で景色が変わる。そこは森だった。

木々が立ち並び風で葉が揺れている。

逃げた、私が恐怖に屈して逃げ出した。

「クッああーー!」


 私は迂闊だった。敵の事を知ろうとしなかった。

慢心していた。情報を集めてから動くべきだった。

でも終わっていない。終わらせない。

絶対に殺してやる。どんな手を使ってでも。

手段は選ばない。必ずお前を殺す。

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