第59話 VSズルドーガ④
光が晴れ、それは目の前に現れる。
黒い獣の四足と、人間の上半身。頭も人型になっており、何とも中世的な顔立ちだった。
そして、背中には二枚の翼。
現実のモンスターに例えるなら、ケンタウロスに翼が生えた感じか。
アクションゲーの「ヘル・デーモンズ」終盤に出てくる天使たちにも似た顔だ。
しかし、その目には黒目は無く、全てが白く塗りつぶされている。
生命を感じないそれは、まるで彫刻のようだった。
そのズルドーガは前足を二本折るようにして項垂れており、翼もへたれている。
どうやら、合体直後は思うように動けないらしい。
「ここからが本番って訳ね……!」
「テンリミ、奴の行動パターンは!?」
「フェーズが変わってんだ、さっきまでの情報はあまり意味はないかな。ただ、紫の波動には注意しな、来栖みたいに持ってかれるぞ」
「それだけ分かれば十分! テンリミ、面をかせ! 今のうちにこちらも体制を立て直す、作戦会議だ!」
迂闊に攻撃すれば手痛い反撃がある可能性がある。
まずはこちらも体制を整えるのが得策か。
「わかった」
俺達突発レイドのメンバーは、佐々木、馬場、ユキ、そしてアイアンナイツのメンバー十名だ。
佐々木……二刀流の風魔術スキル使い。メインアタッカー。
馬場……バフスキルを使いこなすバッファー。サポート。
ユキ……氷魔術スキルを使うフェンサー。サブアタッカー。
テンリミ……剣士、闇魔術スキル使い。アタッカー。
そして、アイアンナイツメンバーはアタッカー二人、サブアタッカー二人、遠距離アタッカー四人、ヒーラー二人。
しかし、彼ら十人のほぼ全員が満身創痍だ。恐らく地上での戦闘がかなり激しかったらしい。ピンピンしている佐々木が異常なのかもしれない。
アイアンナイツは精鋭部隊のようで、俺なんかよりもスキルもレベルも高そうだが、そこまで頼ることも出来なさそうだ。
「安心したまえ、いきなりソロの君にパーティを纏めさせようなどと思ってないさ」
そう言って、佐々木は笑みを浮かべる。
戦力を分析していたのが見抜かれていたようだ。
「アイアンナイツの方は私が指揮する。私をメインアタッカーとした正面部隊、斎藤をリーダーとした中・遠距離部隊、馬場をリーダーとした後方支援部隊の三つに分ける」
「俺はどうすんだよ」
「君たちは遊撃として戦ってくれ。恐らく奴の攻撃は近・中・遠すべてを網羅する。私達はそれぞれのラインを守る必要があるから、君たちが臨機応変に対応してくれ」
「いいのかよ、それだと俺がとどめを刺す可能性が高いぜ?」
すると佐々木は笑う。
「君はフェアな男だな! 安心しろ、最後にとどめを刺すのはこの私だと決まっている! 今日の星座占いでてんびん座が一位だったからな!」
佐々木は自慢げに胸を張る。
「また星座占いですか……初対面の人に言ったら引かれますって」
「いや、結構面白いじゃん、その考え。いいぜ、遊撃は任せてくれ。ユキ、後方支援頼む」
「え、ええ……!」
ユキは少し緊張気味に返事をする。
「今度は邪魔するななんて言わないからよ」
「わ、分かってるわ。ここまで来たら、絶対倒して帰りましょう」
「おう!」
「よし、配置につくぞ!」
そうして、俺達はズルドーガから一定の距離を保ちながら、配置につく。
先頭に佐々木のパーティ、中央に馬場の支援パーティがやや横に広がる形で配置し、後方に斎藤の中・遠距離パーティが並ぶ。
これで、範囲制限のあるバフやヒール系のスキルも上手く全体に飛ばせる。
効果範囲は半径約70メートル。
これを超えると支援が受けられない。回復もバフも。
この範囲の中で、俺達は遊撃を行うのだ。
『グオオオオオアアアアアアアア!!!』
「「「!!」」」
瞬間、ズルドーガの雄たけびが上がる。
目覚めたのだ。八王が。
『眠りを妨げた者はどれだ……? 嘆かわしい……! 我の――』
「行くぞ! 今日がダンジョン史始まって以来、八王の一角が初めて陥落する日だ! 言葉など後で録音を考察連中にでも聞かせてやれ! 突撃だ!!!」
そう言って、佐々木は誰より早く一気にズルドーガへと駆けていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます