第41話 人工物
「おら!」
「ギギギ……!!」
俺は甲殻の隙間から剣を突き刺し、一気に脚を切り落とす。
脚を失い、バランスを崩したパラサイトはその場にひっくり返る。
それを見逃さず、腹の柔らかい部分に剣を突き刺し、そして。
「<闇火球>!」
「ギギギギィィィ!!!」
内部からの闇の炎。
パラサイトは最後のチリのかけらとなるまで一気に燃え上がり、完全に消滅する。
「ふぅ……」
わずかに残ったチリが光となって消えていく。
いやあ、スキルをもう存分使えるのはいいなあ!
というか、散々隠してはきたが、そもそもすでにユキとの関係でマークされてる可能性もあるし、別にバレても良い気がしてきた。
その様子を後ろで眺めていたシズネが、唖然とした表情で呟く。
「うそ、この人本当に最近潜り始めた人なんですか……?」
「そう、やばいよねこの人。味方につけておいた方がいいわよ」
「はい……いや、でも心強いです! よろしくお願いします!」
だいぶ森も進み、次第に虫型の敵が多くなっていく。
まさに密林。そのうち蛇型のモンスターも現れそうだな。
蟻のようなモンスターや蜘蛛のようなモンスターが、ワラワラと集まってくる。
それを、剣と炎で切り刻んでいく。
「三層だけは私無理なのよね……」
ユキは俺が戦う姿を見ながら唐突に呟く。
「え、虫がですか?」
「そうなの……!! ただでさえハエとかでも気持ち悪いのに、人間大の虫とか地獄でしかない……!」
ユキは絶望の表情を浮かべ、震える体を抑える。
「えーいいじゃん虫。数が多いから経験値効率もいいし、硬い甲殻は防具とかにもなる」
「ゲームの話でしょ! このリアルで、目の前にカサカサと動き回る虫がいると思うと……だめなのよ、本当に……!!」
ユキはいつになく弱気な顔で体をくねらせる。
「はは、まあ苦手があった方が可愛げがあるだろ」
「いらないわよ、探索者に……」
そうして探索を続けていると、だんだんと石造りの床が現れ始める。
「人工物だな……この辺りに何かあるのか?」
「あるとすれば、それが今回の八王に関係してるかもしれないわ」
「はい……私の彼氏もこちらの方に探索に出ていたのは間違いないです。きっとこの先で……」
「じゃあ気を引き締めなおさないとな。油断したらすぐに死んじまう。こういうところは、毒なんかも要注意だしな」
2人は静かに頷く。
しばらく石造りの道を歩くと、開けた場所に出る。
「おおおお!! 神殿じゃね!? いや、墓か!?」
きたー! 森の中の神殿! 墓! 絶対なんかあるだろ!
「待って、誰かいる!」
「?」
ユキに止められ、木の影に隠れる。
言われた方を見ると、そこには何人かの集団がいた。
「あれ……あの鎧! もしかして、”アイアンナイツ”!?」
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