38.ドラスラ
【モンスター ドラゴンスライム 危険度Ⅰ】
四足歩行に両翼を持つドラゴンの形をしているが、目は点という姿の大型のモンスターがそこにいた。
「ドラゴンスライム……危険度Ⅰ……」
『名無し:危険度ナンバースか。油断ならないね』
『名無し:ドラゴンスライムって、そんなやついるのね』
『名無し:ちなみに向こうはスライムドラゴン笑』
(……)
どうやら揺達もすでにボスと対峙しているようだ。
と、ドラゴンスライムが息を吸い込むような動作をする。
(くる……!)
ドラゴンスライムが激しい火炎を撒き散らす。
(うぉっ……)
ミカゲは急いで、とある場所へ退避する。
「いらっしゃいませ、ミカゲさん」
「どうも」
佐正が幾分、ドヤ顔で後ろに退避してきたミカゲに笑顔を向ける。
炎に水が相性がいいのはダンジョンでも同じだ。
おにぎり壁は、しっかりと炎を抑え込んでいる。
(……そう言えば、束砂と一緒に戦うの地味に久しぶりだな)
『名無し:猫が壁になってる!?』
『名無し:男はともかく、猫いいな……ちょっと興味が湧いてきた』
「へへ……やっぱりファンいただいちゃいますよ? って、英さん、大丈夫かな……」
「大丈夫だと思うけど……」
『名無し:猫がちょっとかわいいからって調子のんなよ!』
『名無し:奏多なめんな』
コメントが怒る。
ピギィイイ
「「!?」」
ドラゴンスライムがドラゴンっぽくない悲鳴をあげる。
炎から逃れるでもなく、突進していった英がその剣"
『名無し:炎をもって炎を制する』
『名無し:奏多に炎はないっしょ、ドラスラさん笑』
聞こえてはいないが、コメントに煽られるドラゴンスライムの右翼がぼとりと地に落ちる。
(おぉ……流石だ……)
が、しかし……
ドラゴンスライムはぐにゃぐにゃと振動するようにその翼の形を整えていく。
逆に落とされた右翼は液状物質らしく、表面張力により、丸い形へと形を変え、ずりずりと地面を這っていく。
そして、ドラゴンスライムの右足に付着すると、吸収されるようにドラゴンスライムの一部に戻る。
『名無し:うぎゃぁあああ、再生しちまった!?』
『名無し:不死身か……?』
「うーむ、斬撃は効かなそうだな……」
英が呟くように言う。
(……え、斬撃効かないの? まじすか……)
再生したドラゴンスライムは両翼を大きく、一度、ばたつかせた推進力を利用し、英の方に突進する。
「うぉっと……」
英は横方向にダイブするようにその攻撃を回避する。
攻撃の後には隙が生まれるものだ。
ドラゴンスライムが攻撃の反動で硬直している背後から、英は尻尾部分を斬りつける。
ピギィイイ
英の攻撃により、尻尾部分が切断されたドラゴンスライムは再び奇声をあげる。
『名無し:ナイスカット!』
『名無し:だけどこれだけじゃ……』
(だけどこれだけじゃ再生してしまう……)
切断された尻尾部分はずりずりと地面を這い、本体へと向かおうとする。
「おっと……どこへ行くのか? 尻尾さん」
ドス……という音を立て、英は地面を這うスライムに剣を突き立てる。
「斬ってもダメなら灼き尽くせばいいよな?」
そういった英の剣からは炎が溢れ出す。
ドラゴンスライムの尻尾だった箇所はぐつぐつと煮えたぎるように沸騰し、次第に消失していく。
「炎耐性があるのか……結構、出力が必要だな……」
英はそんなことを呟く。
「不死身……ではなさそうだな?」
ピギィイイ!!
言葉が分かるわけではないだろうが、英の所業に対し、ドラゴンスライムは怒るように奇声を上げる。
そして、再び両翼をぶんぶんと羽ばたかせる。
「……! 今度はこっちにも来るぞ!」
スライムは翼の液状部分を鋭い形状に変えて、三人に向けて撒き散らす。
「うぉおお」
束砂は水壁を解除していたため、ミカゲも必死で避ける。
「束砂……!」
なんとか回避したミカゲは佐正の身を案じる。
しかし……
「おにぎり……!
佐正はむしろすぐさま反撃に転じていた。
ドラゴンスライムが飛ばしてきた身体の一部におにぎりを
おにぎりに囲われた部分からは蒸気のようなものが発生しており、最初は暴れていたが次第に動かなくなった。
「よし……効いてる」
おにぎりの
(……俺も……)
ミカゲもスライムの一部に刀を突き刺す。そして……
「
和温は冷気を帯び、周りとの温度差から周囲の空気が白くなる。
ドラゴンスライムの一部は思惑通り、動きを止める。
身体の組織を破壊され始め、気持ち小さくなったドラゴンスライム……
(……って、小さくなり過ぎじゃ?)
「「「!?」」」
ドラゴンスライムは二体に分裂していた。
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