33.競合
「……?」
(え……? つまり、どういうこと?)
「ミカゲ……よく見てみろ。その子猫人まがいには人間の耳があるだろ?」
「…………あ゛っ!」
確かにその子猫人には顔の側面に見慣れた3みたいな形の耳がついていた。
『名無し:どう見ても人間です』
『名無し:川崎シーカーズのミラやんけ』
コメントが答えを教えてくれる。
「あはは、ごめんごめん、そういうことなんだよねー」
元子猫人の女は屈託のない笑顔でそんなことを言いながら尻尾も外してみせる。
【ミラ ※攻略者登録名 (19・女) 南米出身 B級攻略者】
(……川崎シーカーズ……大手の
「……え゛!? じゃあ、巾着は!?」
ふと、ミカゲは焦る。
理由はともかく子猫人じゃなかったということは巾着の件も嘘であったのだろうかと。
「安心してよー、巾着は本当だってば」
ミラも少し焦ったように言う。
(……よかった)
その後、ミカゲは先程までの出来事を揺と佐正に説明した。
……
「で、なんでそんなことしてたの?」
揺はミラに尋ねる。
「郷に入っては郷に従えって言うじゃないですか? だから、うちは子猫人のところに来るときはいつも子猫人の姿で入るんですよ」
「なるほど」
揺は妙にあっさりと納得した。
「いや、社長、なるほどって……」
佐正が突っ込む。
(それは百歩譲ってわかったけど、なぜ俺は虫取りとかキャッチボールとかババ抜きとかさせられたんだろ……)
「ちなみに念のため確認だが、その巾着のスペックは本物で、本当にその値段でいいのか?」
「勿論さー」
「有り難いが、性能のわりに安すぎないか?」
「大丈夫大丈夫! ミカゲさんにはちょっと遊んでもらったお礼の意味もあるし……」
「遊び……?」
「はい! 虫取りとかー、キャッチボールとかババ抜きです!」
「…………すまん、隠語には詳しくなくてな」
「隠語じゃなくて、ガチでそれをやりました」
「……は?」
揺は怪訝そうな視線をミカゲに向ける。
(いや、その反応は正しいっす……)
「まぁ、それに巾着の仕入れには自信があるから!」
「ん? ……ひょっとして子猫人コスプレと関係がある?」
「あはは、どうでしょうねー」
ミラははぐらかすように言う。
『名無し:揺も猫耳つけてみたらー笑』
『名無し:安く巾着もらえるかも?』
『名無し:期待』
「あほー! 歳相応ってもんがあるだろ!」
そんな風に返す。
(……普通に似合いそうな気もするが……)
「んじゃまぁ、遠慮なく購入させてもらうわ」
「毎度ありー」
……
「
そう言って、揺は巾着をミカゲに渡す。
「はい……!」
「んで、ミラさんは一人なの? ここにいるのはひょっとして……」
と、揺が尋ねかけた時。
「おいおいおい、ミラさんよー、どこか行っちまったと思ったら、これまたどういう状況よ」
「「「……!」」」
後方から男性の声が聞こえた。
「あー、
ミラは能天気な様子でその人物の名前を言う。
「あー、奏多だーじゃねえっての!」
『名無し:あー、奏多だー』『名無し:あー、奏多だー』
『名無し:あー、英奏多だー』
(
【
「お、A級攻略者の英さんですね、初めまして」
「お初にお目にかかります、仁科さん……貴方に知っていていただけるなんて光栄です」
「いやいや、知ってるとも。それに同じA級じゃないか」
「同じだなんて滅相もない……貴方の前ではA級もかすむ……」
英はそんな風に揺にへりくだったことを言う。
「やめい、同じA級だろうに……」
揺はそんなことを言う。
が、実際にA級はもっとも実力差が激しい等級とも言われている。
というのもA級の上のS級の条件が厳し過ぎるのが故に上から下までの差が大きくなるのだ。
(……揺さんは謙遜してるけど、実際、揺さんはA級でもトップクラスだと思う)
「それで、英さんがここにいるのはひょっとして……」
「えー、そうですね、
「なるほど……そろそろ予報の時間だもんなぁ」
(つまり……)
「競合というわけか……」
『名無し:これは……!』
『名無し:盛り上がってまいりました!』
『名無し:英? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。だけど揺、負けないよ』
こうして、アース・ドラゴンvs川崎シーカーズの英、ミラコンビとの
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