20.追跡の妖石
「ん? おい、なんで束砂いるんだよ! お前、熱あるんだろ?」
『名無し:あ、気づいた』
揺が佐正のコメントで視聴していることに気付く。
『佐正束砂*:あ、すみません……観るくらいはできるかなと……』
その発言が自身のポリシーに反していたのか、ぴくりとした人物がいた。
「束砂、体調不良の時はちゃんと
『佐正束砂*:え? り、リカバ……』
「おい、ミカゲ、この佐正とかいう荒らしをBANしろ。すぐにだ」
「承知しました」
『佐正束砂*:あぁああああ、すみませんんn』
佐正はBANされた。
『名無し:NICE BAN』
『名無し:自分のパーティ、BANされてる奴、初めて見たわ笑』
『名無し:よく休めよー』
「それじゃあ、行くか」
「はい」
揺の切り替えは鋭い。
「時にミカゲよ、2層を探す見当は付いているのか?」
「いえ、全く……」
『名無し:そもそもあるのか? 2層は?』
「ないわけないだろ」
揺は視聴者にミカゲらに言ったことと全く同じことを言っていた。
(というか、揺さん、視聴者さんのコメントよく拾うなぁ。見習わなければ……)
『名無し:揺さん、なにか心当たりあるんですかー?』
「なくはない」
『捨て身:ひょっとして、はぐれ?』
「言われてしまったな……あくまで、一つの可能性としてだがな。あ、いつも有難う、捨て身さん」
揺はじと目のままドローンに向けて手を軽く振る。
『捨て身:くぁzwsx』
(捨て身さんは熱狂的な揺さんファンなのかな? 俺らの最初の配信の時からいるし……で、えーと、はぐれ……か……)
確かに、はぐれは"明らかにその階層にそぐわないレベルのモンスターが突如、出現する現象"のことである。
上層であれば、さらに上層から降りてきたと考えるのが妥当だ。ではアンダーなら?
『名無し:今まであんまりアンダーに興味なかったけど、確かに2層以降がないはずのアンダーで、はぐれがいるのは不思議だね』
『名無し:考察ニキ、核心に迫る』
『名無し:知ってた』『名無し:知ってた』『名無し:知ってた』
(……すごいな。こんなに知ってた人がいるのか)
ミカゲは知ったかコメントを鵜呑みにする。
「じゃあ、はぐれ探せばいいんですね……!」
「って、簡単に言うがな、アンダーのはぐれに意図的に遭うのは簡単じゃないぞ。今まで私はそれができなくて何度も断念しているんだ。まさか君が陽炎蜥蜴に二度も遭遇するとは思わなかったよ……」
『名無し:こんなことなら教育的観点などと意地を張らずにはぐれがヒントだと言っておけばよかったですね』
「おい、お前!」
揺は煽りが図星だったのか、怒っているかのような素振りを見せる。
だが、BANなどはしないようで、あくまでもじゃれあいの一貫のようだ。
そこへ若干、蚊帳の外になっていたミカゲがぽつりと呟く。
「いや、だから、その陽炎蜥蜴に"追跡の妖石"を付けてまして……」
「…………え」
『名無し:え』『名無し:え』『名無し:え』
==========
【追跡の妖石】
Lv1
効果:陰と陽の石がある。陰の石を妖獣にぶつけた場合、陽の石はその方向を示す。
==========
◇
「陽の石はこの辺を指してますね……」
ミカゲと揺は追跡の石を頼りにアンダーを移動し、遂に陽の石がくるくると回り出す位置までやってくる。
なお、道中の妖獣は全てミカゲが処理した。
『名無し:蜥蜴いないじゃん』
「そうだな……」
『名無し:追跡の妖石も宛てにならないな』
『名無し:実はレベル3が外したんじゃないの?』
(そう言われると確かに自信がなくなってくる……)
『ゆーなて:CPTMが外すわけないだろ』
(……! こいつ……! 大学の奴か?)
『名無し:CPTMってなんや?』
『名無し:いや、でも……いないって、つまりそういうことじゃないの?』
『名無し:ざわ……ざわ……』
「そうだ。今、私は非常に興奮しているぞ」
揺は言葉の通り、鼻息を荒くし、地面を踏み鳴らす。
「ガチであるぞ。アンダー2層……!」
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