16.決戦
ギガントアイロンゴーレムの踏みつけを刀で弾くようにすらした。
パリイやディフレクトと呼ばれる高等技術だ。スキルではなく、純粋な技術だ。
リリィは唖然としてしまう。
「リリィさん、こっち……!」
「あ……」
脚を負傷し、地面にぺたんと座っていたリリィを佐正が抱えるように引っ張り、少しでもギガントアイロンゴーレムから離れた場所に移動する。
その間、おにぎりが警戒するようにギガントアイロンゴーレムとの直線上に立つ。
「ごめん……ありがとう……」
「お礼なら、ミカゲさんに言ってください」
「え……? うん……」
◇
少し前――
「悪い、束砂、やっぱり俺は残る」
「え……?」
戦闘領域外に脱出したミカゲと佐正は話していた。
「ですが……」
「大丈夫、何事もなければ
「いや、すみません、それの何が大丈夫なのかわかりません」
(……確かに)
佐正の言っていることは正しかった。
だが、ここから離れることはミカゲが攻略者に憧れた動機を否定することになる。
だからなんとか佐正に納得してもらわなければ……ミカゲはそう考える。
しかし、その必要はなかった。
「俺も残ります」
「えっ?」
「……俺も残ります。
◇
ドゴォオン
ギガントアイロンゴーレムは
続いて、左腕の薙ぎ払い。
左脚の踏み潰しと攻撃を繰り出す。
ギガントアイロンゴーレムのそれらの攻撃は全て空振りに終わる。
すごい……
その初手三回の攻撃で、リリィは
ギガントアイロンゴーレムの全ての攻撃に対してカウンターを入れていた。
……そこまでなら自分も似たようなことをしていたし、出来ていた。
しかし、ミカゲのカウンターは全てギガントアイロンゴーレムの左脚の同じ個所にヒットしていた。
避ける時点で左脚へのカウンターを意識した位置取りをしている。
と、ギガントアイロンゴーレムが右腕を大きく振り上げる。
そんな大振り当たるわけ……えっ!? フェイント!?
ギガントアイロンゴーレムは右腕を引いたときに自然と身体に寄せていた左腕を裏拳のまま薙ぎ払う。
「ミカゲ……!」
リリィは思わず声が出る。
しかし、その心配は杞憂に終わる。
ミカゲは先程までの3発となんら変わることなく、左腕の裏拳を回避し、一撃を左脚に入れていた。
そして何やらぶつぶつと喋っている。
「和温……頼む……もっと……もっと熱くなってくれ……」
すると、ミカゲの持つ刀がより強い赤を帯びていく。
「熱っ……ありがとう……」
宝物に意思があるかはわからないが、それはまるで、
と……今度はミカゲが自ら動く。
先程から執拗に攻撃しているギガントアイロンゴーレムの左脚目掛けて突進する。
ギガントアイロンゴーレムもそれに気づき、左脚への攻撃を嫌ってか左腕でそれを防ごうとする。
だが、ミカゲはその下がってきた左腕を足場に駆け上がる。
「一番、柔いのは首だ」
ゴ……
ミカゲは力を溜めるように一回転し、そして、全力で刀を振り抜いた。
◇
ギガントアイロンゴーレムもアイロンゴーレムも……なんならコモンゴーレムもジェネラルゴーレムも多少の個体差はあれど、基本的なくせは同じだった。
アイロンゴーレムの討伐が決まってから、ゴーレム系の
弱点部位の確認は勿論、攻撃の予備動作のくせ、フェイントをする際の目線の確認、そしてそれらを加味したイメージトレーニングに多くの時間を費やした。
ミカゲは凡人は凡人なりにやれることは全てやるということを信条にしていた。
◇
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ミカゲは膝に手をつき、肩で息をする。
【コメントのフィルター"通常"に自動変更】
『名無し:あぁあああああああああ』
『ラン:うわぁあああああああああ』
『名無し:やりやがったぁあああああああああ』
『名無し:【速報】特性レベル3(E級)ギガントアイロンゴーレムを仕留める』
『名無し:低特性レベルの希望』
『名無し:ただ佐正の覚醒武器がすごいだけでは?』
『ゆーなて:少し黙れ、お前』
『捨て身:良いものを見た』
(……!)
「ミカゲさぁあああああん!!」
「っ……!」
佐正が抱き着いてくる。
「ミカゲっ!」
更に柳も続く。
柳が担当していたアイロンゴーレムはすでに停止している。
「ありがとう……リリィを救ってくれて、本当にありがとう……」
柳はそんな風に言いながらミカゲの頭をガシガシする。
ミカゲにとって、柳はどちらかというと物静かな印象だったので、少し意外であった。
ドゴン
(……!)
「お前らな……俺のこと忘れてるだろ? 危うく死にかけたぞ……?」
最後に残っていたアイロンゴーレムを倒した七山がそんなことを言う。
そして……リリィはドローンに向かって何やら呟いている。
「皆さん! 注目の新パーティ"アース・ドラゴン"にパーティファボよろしくね!」
=====
【あとがき】
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