04.刀の有用性

「終わりました」


「持ってみますか」


 佐正はミカゲに刀を差し出す。


「はい」


 ミカゲは恐る恐る刀を受け取る。


(すごい……)


 特段、重いわけではない。

 しかし、持っただけで力が溢れてくるようであった。


「鑑定結果はこちらです」


 佐正はメモ用紙をミカゲに渡す。


 ==========

【刀:重熾じゅうし

 Lv0

 攻撃:AAA

 防御:B

 魔力:B

 魔耐:A

 敏捷:AA


 効果:重量変化

 ==========


(AAA……!?)


「まぁ、だいたいレベル7相当の強さですかね。効果は、正直微妙ですかね。それでも悪くもないですかね」


(れ、レベル7相当……?)


「あの、有難うございます、えーと……すみません、先に確認すべきでしたが、料金の方は?」


 ミカゲは佐正に確認する。


「はい? あ、えーと……あー、じゃあ、50万円」


 佐正は一瞬、豆鉄砲をくらったような顔をした後、少しだけ意地の悪い笑みを浮かべながら言う。


(う……ほぼ全財産……だけど……)


「了解っす、今、手持ちないので、後で引き落としてお渡しします」


「って、ウソですよ? 冗談ですよ!」


 ミカゲが真顔で言うので、佐正は慌てて訂正する。


「え?」


「いや、だから冗談ですって」


「いや、普通に50万くらい払いますって、むしろ払わせてください!」


「えぇ!?」


 謎に食い下がってくるミカゲに佐正は困惑する。


「ひょっとしてミカゲさんって、金持ち? ってか、よく考えたら弟さんがあのアサヒさんだし、当たり前か」


「いや、そんなことはないです」


(ほぼ全財産だし……それに……)


「アサヒからは一円たりとも貰ってませんし」


「え、そうなんですか? じゃあ、なんでそんな払いたがるんですか!?」


「それだけの価値があるからってだけですが……」


「……!?」


 佐正ははっとしたような表情を見せる。


「レベル7相当ですよ? その意味わかりますか?」


「え、そりゃ、わかりますけど……って、……おぉう!?」


 佐正が改めてミカゲの顔を見ると、涙こそ流してはいなかったものの目が赤くなっていた。


「すみません……ちょっと泣きそうです。でも自分にとってそれくらいの話なんです。レベル7相当が使えるってことは……」


 10歳の宝物特性レベルの測定から、15年弱、レベル3以上の力を秘めた宝物が使えるなんて。


(夢にも思わなかった……いや、違う。どれだけ夢想したことか……)


 ミカゲは弟のことは尊敬していた。そこに嘘偽りはない。しかし、尊敬と羨望は両立する。

 どれだけトレーニングを積んで、努力しても届くことのない高み。

 羨ましくないわけがなかったのだ。


 レベル7相当が使える。それはミカゲにとって……


「なんなら……ローン組んでもいいくらいです」


「……こ、光栄です……そんな風に思ってもらえて」


 佐正はしばし呆然とする。


「ただ、改めてお代はいりません」


「え!? なんで!?」


 ミカゲは本気で驚くような反応を見せる。


「その……相棒なんですから……」


 佐正は照れくさそうに言う。


「……!?」


「あと、忘れてそうですが、自分が攻略者になれたのもミカゲさんのおかげなんですよ」


「……!」


(……それについては、揺さん曰く、そうっぽいのだが、なんで俺なのか……心当たりがないんだよな……)


「あ、ちなみに宝物の覚醒には、制約条件があります。まず同時に覚醒させられる宝物の数に上限があります。詳しいことはわからないんですけど、レベルが高い宝物ほどコストが掛かるらしいです」


「な、なるほどです……」


「で、実は自分はすでにその上限に達してて、新たに宝物を覚醒させることができないんですよ」


「え……!?」


「なんですが、一つ特例があります」


「……!」


「わかりますよね? それがレベル0の宝物です」


「!?」


「不思議なことにレベル0の宝物はコスト0。要するに無制限に覚醒させることができるってわけです。これは覚醒師の中でも多分、自分だけの特性です」


(つまり、レベル0の宝物さえ探し出せば、レベル7相当のものが誰にでも使えるってことか……佐正さん、すごすぎる……)


「あと、さっき社長から餞別せんべつでもらったものがありますよね?」


「あ、はい……この鞘です」


 ミカゲは一本の鞘を出す。


「そいつは"集鞘しゅうそう"って言います。これからそいつの能力を説明します」


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