第六話 赤毛と金髪
賢也の命は助かった。あんな死にかけた状態からだ。もう死んだと諦めていた所、この目の前の赤毛の女によって助けられた。
「ほんとに生きているのか」
賢也は本当に助かったのか信じられなかった。また転移でもしたのかと思ったが、目の前にはドラゴンの死体の前に佇む赤毛の女がいた。どうやら生きているようだった。
「ドラゴンも死んでるんだよな」
賢也はまだドラゴンが生きているのでは無いかとビクビクしていた。
しかし、そのドラゴンを見てみると首と体が離れていた。賢也の方も体を動かせないぐらい満身創痍であったが、ドラゴンの方は完全に死んでいた。これで生きていたら驚きである。
賢也は命が助かったことにとても安堵した。そして、彼女に感謝しようとした時
「-・ ・・ ・- --・-・ ・・ ・・- --・・ ・・ 」
と彼女は言った。
しかし、賢也は彼女の言っていることが全く理解できなかった。賢也は御曹司の息子のため大抵の言語を理解することができた。
それでも、今彼女が話している言葉は何語なのかも全く検討がつかなかった。賢也は困った。
賢也は彼女の表情から何を言っているのか読み取ろうとしたが、彼女の表情は乏しいようだった。そのため、何が言いたいのか全く分からなかった。それでも、彼女の瞳は宝石のように綺麗だった。
「まいったなぁ。異世界と日本じゃ言語は違うのか… 」
と少し落胆した。
それを聞いて彼女は首を傾げた。
「---- ・・-・・ -・・・ ・・ ・--・ ・・- --・-・ ・・ ・-・ ・- ・・-- 」
と彼女は言った。
すると、そこへ一人の女の子が走って来た。
「---- ・・-・・ -・・・ ・・ ・--・ ・・- --・-・ ・・ ・-・ ・- ・・-- 」
と息を切らせながら言った。そして、少し怒りながらも、心配そうな顔をしていた。その女の子は短い金髪をかきあげた。
「異世界だと髪色が豊富だな」
と賢也が感心していると、その金髪が賢也を指差して
「---・ ・・-- ---- -・ ・・ --- 」
不思議そうな顔を言った。おそらく、彼女は賢也のことを疑問に思っているのだろうと言語の壁があっても理解出来た。
それに対して赤毛の女は説明しているようだった。相変わらず表情の変化は乏しかった。
それに比べて金髪の方はいちいち表情の変化が大きく、身振り手振りも大きかった。
しかし、リアクションが大きいとは故、賢也は彼女達の話に置いていかれていた。分かったことはせいぜい金髪が驚いていたということだけだ。
「言語の壁って大きいな」
賢也は話に置いていかれ、その事を大きく思った。彼はいつも話の中心であった。そんな彼が話に置いていかれるのは少し不満に思ったが、そこは我慢して彼女達の話が終わるのを待った。
赤毛が全て話終えると金髪は頷いていた。そして、何かを思いついたように鞄を漁っていた。
「なんか役に立つものでもあるのか」
賢也は金髪に期待しながら鞄を覗いてみた。
しかし、その鞄の中身は汚く乱雑であり、物が沢山入っていた。とても女の子の持ち物には見えなかった。この鞄の中から持ち物を探すのは一苦労であろう。
実際、金髪も探すのを苦労しているような感じであった。それを赤毛は当たり前のように見ていた。
「ちゃんと持ち物ぐらい整頓しとけよな。その様子じゃ、部屋も汚そうだぜ」
と賢也はあきれながら言った。言語が通じないため、賢也は普段言わないようなデリカシーのない事を金髪に言った。
その言葉が金髪に通じることはなく、黙々と探している。それを先程と同じように見ている赤毛。
そして、とうとうお目当ての物が見つかったようで空に掲げた。
それは赤い宝石が付いたペンダントであった。その宝石は地球では見たことがないような輝きをしていた。
それでも、賢也はその美しいペンダントがこの状況を打開できるものとは思えなかった。
「なんだそれ? それが何か役に立つのか」
と賢也は不思議そうに言った。
金髪はそんな賢也を気にすることなく、ペンダントを渡してきた。
「これを俺につけろというのか。やれやれだぜ。いくら俺が美形だからっていきなり、プレゼントは早計すぎるぜ」
と金髪の行動に呆れながら言った。この男の方が早計である。
「ねぇねぇどおー? 通じる? もしもーし? 」
とうるさく金髪が言った。
「通じているのかな」
としずかに赤毛が言った。
賢也は彼女達の言葉を理解できた。
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