5話

 目覚めると俺は、家の敷布団で寝ていた。


「あだまいだい……」


 こんなに飲んだのはいつぶりだろう。でも楽しかったし、みんなとも仲良くなれたからいっか。

 今は……深夜1時か。思ってたより早い。18時くらいから飲んでたからな。スマホを見ると、グルチャが動いていた。


 皐月 美希、ちゃんと家着いた? 


 美希 着いたよー、ありがと皐月姉 


 皐月 よし。葛城くんは、まあいっか。明日の13時にルノエール集合で。


 美希 笑 男の子だもんね。はーい



 危な、明日の集合時間決まってたのか。完全に記憶にない。個人ラインにもその後メッセージが来ていた。


 美希 凌くん、大丈夫?


 美希 着信履歴 


 美希 着信履歴 



 相当心配させてしまったようだ。俺はグルチャで、家着いてすぐ寝ちゃった。大丈夫。と返事をして水を取りに行った。


 美希から、良かったー、とすぐ返事があった。皐月は寝ているようだ。


 俺はもう一杯水を飲んでから、美希に連絡した。


 俺  電話出れなくてごめん。マジで寝てたわ。


 美希 個別には返事くれないかと思ってたから嬉しい!全然気にしないで


 俺  まだ起きてる? ちょっと電話したい 


 すると、美希からすぐに着信があった。


「もしもし」


「はーい」


「ごめん夜中に」


「んーん! 私も電話したいと思ってた」


 なんだか声色が明るい。酔いがまだ残ってるいるのだろうか。


「あのさ」


「なあに?」


「メガネどこにあるかわかる?」


「あ……あー!! 店に忘れた、かも」


「うおー、やっぱりか。ごめん俺が気づくべきだった」


 俺しか使えないし。


「いや、私が受け取ってたから、私の責任だよ、ごめんね」


「あー、調べたら店始発までやってるわ。俺タクシーで行って取りに行ってくる」


「じゃあ私も行くよ、悪いし」


「いいよ、受け取るだけだし」


「私も行くってば!!」


 突然叫ばれた。な、なに。


「わ、わかったよ怒るなよ」


「怒ってないよ?! じゃあ、1時間半後にお店の前で」


「あい」


 俺は指定時間が思ったより長かったのでシャワーを浴びてから、店に向かった。すると、ミニスカートに着替えて、メイクもなおした美希が立っていた。オンのキャバ嬢のデートの装い。知らんけど。そして、気持ち胸元がいつもより開いてる。やめてくれ、その術は俺に効く。


「凌くん!」


 ニッコニコで手を振ってくる。胸もユサユサと揺れている。震度4はある。


「あの後ギャラ飲み行ってたのに抜け出させちゃった? キメキメじゃん」


 俺は眠い目をこすった。まだ頭痛いな。


「……皐月姉に今の言葉聞いて欲しかった」


 美希も目を細めた、眠いんだろうか。まあでも猫は目を細めるのは親愛の証だし、きっとポジティブな意味だろう。


「ん?」


「なんでもない! いこ」


 店内に入り、店員に声をかけた。座っていた席と忘れ物の形状を伝えると、確認するから席に座って待っていてくれと言われた。 

 俺たちは促されたカウンター席に座った。 


「あるといいね」


「ね、ないと困る。皐月姉が死にかけてまで手に入れたメガネなのに」


「う、確かに」


「凌くん、かけて遊んでたけどその後どこに置いたか覚えてる?」


「……俺そんなことしてた?」


「もしかして、記憶ない? 誇張しすぎた福海雅治してたよ」


「大事なアイテムでそんな……姉御、怒ってなかった?」


「大丈夫、爆笑してた」


「みんな酔っ払いで助かった……実はメカギョジラの真似くらいから、記憶がなくて」


「私がメカギョジラが何かわからなかったやつね」


「メカギョジラっていうのは、ギョジラと戦うために__」


「いや、メカギョジラの説明は大丈夫。どうせメカのギョジラでしょ」


「そう。でも最後に触った記憶があるのがこの店で、俺も美希も持ってない、ってことは、ここにあるか、姉御が持ってるかだな」


「確かに! 少し安心したぁ。あと姉御って呼び方、面白いから辞めて」


「わかった、皐月さんにする」


「ねえ凌くん、女の子の辞めては、ほとんどの場合やめて欲しいわけじゃないんだよ」


「?! 女の子難しすぎだろ」


「はい、抜き打ち女の子辞めてテスト〜」


「どんどんぱふぱふ」


「あの、お楽しみのところすみません、メガネはこちらでしょうか?」


 店員が美希にメガネを見せた。


「……はい、それです。すみません、ありがとうござます」


 美希が顔を真っ赤にして受け取った。ギャラ飲みの酔いが回ってきたのだろうか。


「ふう、一安心だ。じゃあ帰るか」


「待って。こんなに迷惑かけたのに、何も飲まないで帰るのはお店の人に悪いと思いませんか」


 すっごい早口だった。


「確かにそうだな……でももう2時半だし、美希も明日仕事が」


「私は大丈夫。凌くんは明日休みって言ってたよ?」


 言った記憶はないが。


「言っていたようですね。休みです」


 いうて僕アルバイト。当欠も辞さない。


「……私と2人きりだと、いや?」


「いやいや! まったく」


 むしろその逆で、こんな若くて可愛い子と2人で飲むなんて、バチが当たりそうというか、今後3人で動くダンジョン攻略する上で嫌われるようなことをして輪を乱すわけにはいかないと言いましょうか。ウジウジしていると、美希が俺の腕を引っ張った。


「じゃあ、一杯だけ飲も! すみません、メガハイボール2つ下さい!」


 あ、メガの方なのね。実質二杯では?


「あときゅうりとタコワサ」


「私も丁度それが欲しいと思ってた」


 小悪魔な微笑みだ。今までこの笑顔で大量のおじたちから小金を集めてきたんだろう。

 到着したメガハイボールを乾杯して飲むと、若干残っていた二日酔いが迎え酒で消えてしまった。なんなら、飲んでた時のテンションが一気に戻ってきた。


「もうこれ、朝まで飲んじゃうかあ!!」


「いえーい、飲んじゃおー!!」

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