第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト 二十首連作部門

漣翠

「猫あるある」

昭和期の固きガラスの金魚鉢中に丸まる猫は流体

人影の絶えたる島の桟橋で風と向き合う若き白猫

バリトンが友よと歌ひ始めるとトロリと伸びる年末の猫

末の子を里子に請われ母親は愛され上手になるにゃあと鳴く

押しのけて後から座る若者はシルバーシートで猫を抱きたる

びょんびょんと跳んで威嚇の愛猫に効果微妙な洗面器の蟹

面痩せの母は多産に疲れ寝る其の美が後の青銅の猫

年かさの猫が戸棚を降りる音それが合図の夜の駈けっこ

風の音雨だれの音停電の夜の猫らが水を飲む音

抱かないで怒ってるのとそっぽ向く尻尾の先が触ってるけど

蜘蛛が居る小さな額擦り付ける悩み絡めて喰っちまうぞと

カリカリをしまうところを見られてる椅子の影から眼を光らせて

膝に乗る画面を覗くリモートが流行ると猫が活発になる

じいちゃんにフィルター付けてオンライン可愛い猫が元気かと聞く

シンプルな名は廃れない家の子は上からミーとミケとミランダ

狩を終え野良で出遭ったネコ耳の君とチャットにふける秋の夜

梅雨空の宅配便を見送った窓に小さく肉球の跡

冬晴れの今日は社の石段で会える予感の猫日和かも

猫団子春一番が渦になり暖められて陽だまりになる

お互いが素直になれるきっかけに君と二人で猫を飼おうか

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第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト 二十首連作部門 漣翠 @Rion

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