またどこかに行くのか?
もともと凌弥は外に出る気になれずにいた。だがその気を無視し、外に出ることにしたのだ。
なぜなら美桜が外に出るから。「知的好奇心を満たすため」というだけの理由で美桜が外出するのなら、凌弥は負けていられなかった。凌弥は勇気の大小で、美桜に負けていると認めたくなかった。
だから凌弥は危険を冒して外出した。
美桜は時々屈んでは土の触り心地をチェックしていた。凌弥は「馬鹿らしい」と思いながらも、なるべく美桜から離れないようにしていた。頭がいい美桜と離れたら、色々と終わる。「退屈だなぁ」と思った。
その時、一筋の閃光が凌弥の片目を刺した。凌弥は顔を顰めながら、鬱陶しげに光があった方向を見た。何もなかった。カンカン照りの太陽が目に焼き付くだけだった。
ここは万年夏なのか? 常に暑い、日差しが異様に強い。なのに夜はちょっと寒い。湿気どこに行った?
突然割れるような頭痛が来たために、凌弥は歯を食い縛りながらイライラした気持ちで頭を思えた。美桜も顔を顰めながら頭を抑えたところを見るに、彼女にも来ているのだろう。
誰かの柔らかな足音が――ここでは歩く時に付きもののザクザクという音はしなかったが――、誰かが近づいてくる気配があった。凌弥は反射的に顔を上げた。足音も無しに近づいてくる奴はろくでもないのが多いから。
*
美桜は近づいて来た子ども ――本当に子どもなのだろうか? ―― と目が合った。瞬く間に頭痛は去って行った。これ以上目を合わせられず、美桜は俯いた。恐ろしい感覚だった。子どもの目は、自分達の魂を何かで測られているようだった。美桜は恐ろしく思いながらも横目でそっと凌弥を見てみた。
凌弥は驚愕しているように目と口が、ついでに鼻も開いていた。そして何かの名称と事象を思い出そうとする時のようにハクハクと口を動かし、記憶の糸口を引っ張り出そうと一心不乱に子どもを見ていた。
「そんなに見たら怖がる」、なぜかそういう考えが美桜の頭に浮かばず、凌弥の記憶力を命綱とした。
なぜなら、さっきまで居た街が白っぽくなり透過されていき、いつの間にか光の空間で突っ立っていたから。
「またどっかに行くのか?」
凌弥は呟いた。
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