少年と少女の対面
意識を取り戻した
せめてもの礼節として、美桜は正座で部屋の隅に鎮座していた。
これであれば下手にスペースを取ることはない。
凌弥は凌弥で、家族以外の女性に慣れておらず、美桜がいる隅とは真向かいの隅に座っていた。
ビルは「トム」の故郷の人間だと察し、席を外していた。もしこの場にビルがいたのなら、笑いを堪えられなかっただろう。いくら10代前半で同年代の男女とは言え、30分も離れた距離でだんまりは不気味だ。
口を開こうとしない自分に苛立ち、美桜は自分への言い訳を繰り返し、遂には凌弥の観察を始めた。
髪はライトブラウン。青銅のような瞳は感情がグラグラ揺れていることは分かるが、何を考えているのかは読み取れない。思春期特有の周囲のへの強い警戒心?顎は細いが、角はしっかりある。
そこは羨ましい、と丸顎の美桜は思った。
肌は色黒。日焼けではなく、生まれつきのような色。顔立ちも濃ゆく、ラテン系を彷彿とさせる。鷲鼻でなければ美男子の部類に入るだろうなぁ。
九州女性を母に持つ美桜だが顔立ちは薄く、父親が雪国出身であるためか色白だ。
*
凌弥は覚悟を決めた。
正直不安だ。家族以外の女性で親しかったのは、幼稚園児か小1のカーリーだけだった。妹ですら10歳。
それでも、男なら……。古臭い考えだが、背中を押してくれる言葉がほしかった。
「名前、何でしたっけ?」
あ、第一声ミスった。
「美園 美桜です」
良かった。怒られなかった。
「オレは朝緑 凌弥」そうオレは自分の人差し指を向けた時、美園さんが先輩かもしれない、という可能性に初めて思い至った。「……です」
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