知識を注入した黒い鳥

 墓参りを終えカーリーと別れたあと、凌弥と同じくらいの少年に会った。

 何となく不健康そうな顔色。マンガに出てくるような美形。ゾッとするほど赤い唇。穿つように凌弥を見つめる目。


 凌弥はその美しい少年から目を離せなかった、少年のギラギラ光る赤色の瞳に吸い寄せられてしまったように。少年は鼠を見つけたハブのようにニタァと笑った。

 軽い頭痛を感じ凌弥は頭を抑えた。頭の中に緑色の思念が流れ込んでくる。凌弥の脳内が不気味な緑色に染め上げられてゆく。凌弥は膝から崩れ落ちた。



 何でこんなとこにいたんだっけ?何でアルなんかに頼って生きてんだ?弱いなぁ、僕。僕、なんてダメなんだ。なんてダメな人間なんだ。なんて生きる価値のない人間なんだ。そうだ、僕は、死にたかったんだ。なんて人間だ。死にたかったのに、何でのうのうと生きてんだァ?


 凌弥は蛇のように顔を上げた。


 ぼくは、いや、オレはもっと偉大なものになれるんだ。誰もがオレを崇め称える、そんな存在になれるんだ。

 地面が泥臭かった。森の葉っぱからしずくが落ちてきた。お気に入りのパーカーに少しずつ染みが広がっていく。視界がどんどん赤と緑に染まって行く。


 少年、ナハァシュ・ニッタテイアは左の口角をどんどん上げ、歪な表情を広げていた。

 凌弥はうつろに首をくるりと回した。ギョロリと青銅色の瞳はどこか虚ろにアルの家を見ていた。


 そういや、アルってなんだっけ?

 ブサイクなのかすら知らないんだぜ?並んでようやくオレ様と身長が同じだって分かるぐらいだァ。あれ、アルの声ってどんなんだっけ?


 高い壁が出来たように凌弥はアルが見えなくなっていった。次第に視界も滲んできた。何もわからなくなった。

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