11 時雨を誉めながら朝日を待とう。

 明朝、パトリックとローズはキャサリンと共に馬車で実家へ。

 コチラは、ウォルターと共に馬で実家へ。


 そこでは特に怒られる事も無く、それこそ母上にまで謝られる状態になっていて。

 ウォルターを待たせているからと、直ぐに馬で学園に帰る事に。


 ただ、想像以上に状況は変わらなかった。

 少なくとも、自分の周りでは。


 なんせ友人らしい友人が居ませんでね。

 それこそ男の同級生が数人、知り合い程度で。


 殆どは面倒に巻き込まれたく無いからと、遠巻きのまま。

 ですよね。


 そう1日目は何事も無く過ぎ。


 2日目も、平穏に過ぎるかと思ったのに。


『君がイーライ?セシル家の』

「あ、あの」


『あぁ、僕はハワード家の次男、ライアンだよ』

「あの、はい、どうも。それで、その、宜しくとは?」


『下手に君と仲良くして、あのお姫様や取り巻きに文句を言われたくなくて遠慮していたんだけど、友人にと思って』


「あぁ、ありがとうございます。けど、まだちょっと」

『だからだよ、理由は聞かないし、先ずは僕を盾に使ってみてくれないかな?』


「あぁ、はい、ありがとうございます」

『うん、僕は図書館に良く居るから、もし何か困ったら訪ねに来て』


「はい、ありがとうございます」


 コレを皮切りに次々と友人知人候補が現れ、正直、凄く疲れた。


《お帰りイーライ》

「あぁ、パトリック、疲れたよパトリック」


《だろうね、よしよし》


 もうすっかり、抱き締められて頭を撫でられる事を喜んじゃってるワケだけど。


「何でココに居るの?」

《教員の間でも問題になっててね、だから君を男性職員寮の方で一時預かる事になったんだよ》


「ごめん」

《ぁあ問題って言ってもアレだからね、問題になる前に対処しようって事だから。それで僕はその保護者、学園で安全に過ごせる様に、暫く落ち着くまで付き添うって感じ》


「そう言えばローズ嬢は?」


 あぁ、結界を作ってくれた。

 そっか、聞かれたらマズい事も有るんだった。


《アレも、ローズは寮から全然出て来ないから、キャサリンが付き添い役になった。下手にウチから出せば甘やかしだって事になるから、お祖父様からのメイドって事で》


「すまぬ」

《大丈夫、イーライは良い子にしてたって聞いてるし、問題は周りだよ。近付いて来たヤツらの名前、覚えてる?》


「流石にメモした、はい、綴りが間違ってるかもだけど」

《大丈夫、特徴も書いて有るし、偉いねイーライ》


 何しても褒めてくれんの。

 しかも今は後ろから抱き締められながらメモを一緒に読んでる状態で、どう見ても恋人です、本当に。


 本当に、凄い嬉しいんだけどさ。


 恋の魔法が解ける3ヶ月後、それこそ半年後が超怖い。

 素っ気ない態度とか、それこそ冷たくされたら。

 死ねる。


「やっぱり、甘やかすの程々にしてくれないかな、飽きられるのが凄く怖い」


《イーライ、可愛いね》


 キスの嵐。


 違う違う。

 それ止めろって言ってんの。


「パトリック」

《イーライが可愛い事を言うんだもの、このまま》


 ノック。

 誰かからの訪問って、学園に入学して初めてなんだけど。


「凄い、初めて誰か来た」


《僕が出るよ?》

「ぁあ、うん」


『イーライ』

「あぁ、ウォルター」

《凄い良いタイミング》


『職員寮の前で待とうかとも思ったのだけれど、荷物を運ぶ係にでもなろうかと思って』

《若干邪魔したよねって言ってるんだけど?》


『始めるなら向こうの寮の方が安心出来るのでは?』

《確かに、じゃあさっさと準備して行こう》


 始めるて。

 いや、落ち着いたら後ろもとは言っちゃったけど。


 落ち着く、の定義から話し合うべきだろうか。


『コレだけかな?』

「あぁ、うん」

《よし、じゃあ行こうか》




 私の部屋の隣りに、イーライが入居する事に。

 更にパトリックはイーライの部屋の目の前。


 食事も、共同浴場でも一緒に過ごせる。


 問題さえ無ければ、今の状況は最高なのだけれど。


「待って待って、落ち着いたらとは言ったけど」

『居場所、寝場所は落ち着いたと思っているのだけれど』

《飽きられたくないんだって》


『ぁあ、可愛いねイーライは』

「待ってってば」

《準備がまだだった?お腹を擦ろうか?》


「いや、凄い快便だったけど」

《じゃあ大丈夫、慣らすだけだから》

『ゆっくり、徐々に、だから大丈夫だよイーライ』


《イーライがおねだりしてくれるまで、徐々に、ゆっくり進めようね》

『だから大丈夫、リラックスして』

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