6 指輪は泣かない。
ゆっくり休んで、ゆっくり朝食を食べて、ボーっとして。
前なら、考える事は殆どが恋愛関係で。
それこそ適当に生きて、死んで、それで良いと思ってたのに。
今はもう、すっごい大役が回ってきちゃってんの。
何とか前世の知識が少しは有ったからココまで評価されてるけど、神童も成人過ぎればって、アレ平凡な転生者の事か。
成程。
あぁ、そうか、目立つ子供は既に他の貴族達も目を付ける筈だから平凡な子供から探すとか?
でも、逆に平凡過ぎてバレる、とか。
有るのか?
難しいなぁ。
仮に平凡過ぎてバレるのを防止するのに、ちょっと良い所は有るけど目立たないって、凄い難しい。
しかも年相応の振る舞いって、そこまで出来たら本当、天才だわ。
羞恥が過ぎて死にたくなりそうだから絶対に無理だけど。
でもアレか、そうだよな、婚約者が居なかったら落ちこぼれ寸前だったとしても良かったんだよな。
けどなぁ、アイツら馬鹿なのは凄い馬鹿だから、変に標的にされても困るしな。
しかも後から力を発揮したらしたで、やれ裏金だズルっ子だ。
粛清してぇ。
けどなぁ、基本的には親とか乳母が悪いんだし。
しかも両方の親が悪いってのは、流石に、そこまでは。
アレか、ウチの母親みたいなのが多いのか。
そして抑えられなかったウチの父親、時点で向こうの母親か。
ローズの親父さん大丈夫かな、結構繊細な人だし。
けどなぁ、子を取り上げるワケにもな、腐っても自分の子なんだし。
いや、学園が1つしか無いからこうなるんじゃね?
なら
いや、蠱毒になんないか、コレ。
大丈夫か、分からないな。
流石に教育学とか何も分からないし、それこそ良い大人が揃ってんだから、誰か1人位は考えた筈で。
いや、偶に誰かが通報しただろって言って、実は誰も通報しないとかって現象が有る位だし。
確認してみるか。
「パトリック、ちょっと聞きたいんだけどさ」
《ん?》
男子姿のままでも愛らしいイーライが、パトリックに尋ねに来たのは、落ちこぼれた子息や令嬢の処遇。
退学後の扱いや、その受け皿になるような更なる学園創設について。
生徒会会長も務めた事が有るパトリックに、創設に携わった者と遠縁でも有る私の答えは。
「無いのかい」
《問題に問題が重なって、そのままって感じ。例え有ったとしても、通う事自体が不名誉になってしまうからね》
「そこも追い出されたら不名誉だけど、そっか、それが出るまで最不名誉は不良学園に飛ばされる事か」
《だね》
そう考え、他の者はそこで諦めたのだろう。
イーライもそこで終わるか、更に考えるのか。
「あぁ、パトリックの事を性悪だと言えなくなった」
《良い案が出たの?》
「良いと言うか、微妙」
《取り敢えず言ってみようよ》
「もっと下を作る、それこそ今の学園を上として、中、下と作って。下では平民の問題児の面倒を見させて、課題をこなせるまで卒業不可。ヤばいのはいきなり下送り、マシなのは中、それか廃嫡かを選ばせる」
《そんなにローズの事で負担を掛けたんだね、ごめん》
「いや、アレは別に、そのまま上で大丈夫だと思う。それこそキャサリンの問題を起こしたヤツは中で、そこでもバカしたら下、それでもダメなら。ほら、親って子を中々見捨てられないじゃない、手放せる切っ掛けが必要なのかなって」
『荒削りだが良い案だと思う』
《下の種類を増やす、とかね。それこそ男女別で、とか》
「けどなぁ、多分、上には戻れないと思うんだよね。色んな意味で」
《あー、それこそ自覚が出たら恥ずかしい、とかってなるだろうしね》
「それこそもう、もう何個か作って、最初から上が無理そうな子は他に行かせた方が良いと思うんだけど。そこかぁ、どうしてウチのが入れないんだ、ってか」
《そうそう、直ぐに呼び出したがるし、直ぐに怒鳴り込んで来るしで。今はかなりマシになったみたいだけど、当時は結構大変だったみたい》
『試験も改良に改良を重ねて、今でも改良を続けているらしい』
「そっかー、前年度の問題とか気にしてもなかったもんなぁ」
《学園内に資料が有るけど》
「卒業しとくべきだよね?」
《政務に関わらないなら必要無いんじゃない?》
「んー、問題はどうしたら目を付けられないか、なんだよなぁ」
《僕もまた通おうかなぁ》
『どれでだ?』
「どれって?」
《まさか、流石に職員だよ、それこそ警備だって良いし》
『あぁ』
パトリックは知らないのか、あの魔道具の事を。
「先ずはフィンランドの事を調べて、近日中に3人で戻って、長期休みに長旅に耐える訓練」
《その合間も定期的に情報収集するとして、ただ近隣諸国の様子がねぇ》
『今は良くても、その時にどうなっているか』
「あー、今そんな不安定なの?」
《ううん、特に不作とか疫病の流行も聞かないけど、何処にでもバカは居るから》
「で、念には念をって事か」
《船でスウェーデン、そのまま陸路で横断、船。だね》
「焦りとかじゃないんだけど、やっぱり情勢が安定してるウチに行きたいなぁ」
《そんなに男同士でしたくない?》
いや、全然アリです。
アリですけど。
「ほら、疫病が流行ったら、それこそ5年とか待つ事になりそうだし」
《そんなに子供が欲しい?》
「いやー、自分のと言うか、2人の。それこそ、こう、でも良いし」
『流石にイーライの頼みでも、それは無理だ』
《それこそイーライの子ならって感じで、僕らはそこまで、なんだけど》
「それはまだ若いから、じゃあ良い年になって欲しくなった時に、はいもう無理ですよって。そうなるのがイヤだ、それこそ子供が欲しいからって」
付き合い始めは特に、しかも若い時は要らないと思ってても。
それこそ本能なのか、男も女も子供を欲しくなって、そうやって別れる事になって。
《ごめんね、僕らも欲しくなるかもって事だよね》
『今は要らないから今後も欲さないとは限らない、その為の下準備、か』
「そうそう、って言うか本当に手に入るかどうかも有るし。うん、旅行、外遊のつもりで行こう」
《なら、傷心外遊って事で、学園に事情を話して課題を貰っておくとか》
「けどフィン語がなぁ」
それこそ英語と、日本語は未だに頭の中で喋ってるし、後はフランス語がちょっとだけ。
第2言語でフィンランド語を取ってる同期生は、殆ど知らないヤツだし。
《ふふふふ、僕が話せるって言ったら?》
「都合が良過ぎて警戒する」
『第2言語はシベリア語だった記憶が有るんだが』
《君と一緒で隣接する国を家で習ってたんだよ》
『あぁ、私はドイツ語で、裏がデンマーク語だった』
「つか口調が不安定だなぁ」
『すまない、どうも真面目な話ではこうなってしまって』
「まぁ、今は良いよ。つか凄いな王族」
《それこそ継承権持ちはもっとだよ、フランス、スペイン、イタリア、ドイツ。それが最低限だからね》
「しぬ」
《幾ら通訳が有能でも、結局は生き物だからね、人質を取られて嘘を言う可能性も有るから》
「それで身内に居れば、か」
《けど流石にね、定期的に教師とは会って話してるけど、ちょっと復習させて欲しい》
「それはうん、宜しく」
コレは、ウォルターにアン公女の病気が遺伝してる可能性が有るから、医学が進んでるドイツ語だったのなら。
パトリックは何でだ?
陛下、こうなるって分かってた?
いや、まさか。
まさか。
《どうしたの?》
「メアリーには性癖を教えた?」
《あぁ、うん、えっ》
「いや、その後って事だよね?」
《えー、そんな事で?》
「けどだってそうじゃない?」
《えー、どうしよう、意外と優しい?》
「意外とって言うか、優しいよ?」
《そう?》
「いや結構普通、いや普通じゃないけど、結構思い遣りが有る方だと思うよ?」
《だって家ではスウェーデン語を途中まで習ってて、もっと出来るわよね、とか言ってフィンランド語にさせられたんだけど。あぁ、そうなのかなぁ》
「つか何て言ったの?」
《可愛い男の子が好きです》
「あぁ」
《でも子供の言う事だよ?》
「それこそ本気度が伝わったとか?」
《まぁ、かもだけど、それこそイーライが受け入れてくれないなら、無意味になるんだし》
「それこそ」
それこそ、転移者、召喚者と呼ばれる人間が現れたら。
あの禁書室には無かったけど、それこそトップ専用の禁書室が更に有る筈で、そこに本当の事が書いて有る筈。
もしかすれば多言語を操り、絶大な力を持つ転移者が来たら、正に核弾頭の様な存在になる。
善人か悪人か、それこそココなんて簡単に滅ぼされるかも。
いや、それより強いのが魔王だし。
魔王の事はそれこそ禁書室には有ったけど、その本が無いのって相当って事だよなぁ、転移者。
御伽噺にも無いのが不思議だったけど。
いや、それこそ転移者詐欺とか有ったら大変な事になるし、暫く発禁状態のままなのかな。
《どうしたの?》
「いや、緊急事態になったら難しいよなと思って」
《まぁね、それこそ魔王が居るから戦争なんてしてられないけど、バカは何処にでも居るから》
そもそも世界が平和なのは、魔王が一心にヘイトを稼いでくれているから。
もし魔王が居なければ、それこそ国同士が揉め、どこぞの世界と同じ悲劇を辿る事になる筈。
必要悪。
と言うか居て貰わないと困る存在、魔王。
だからこそ殆どの国はもう触れず接触せず。
何故なら、地形を変えてしまうから。
それこそ、この世界の人間の汚点が増える事になる。
それは転生者も含む。
何故、どうして抑えられなかったのか、と。
「そうなると、主な争いってやっぱり、結晶の奪い合い?」
《だからこそ自由にして良いって言われた事に驚いたんだよ、何だかんだ言っても、基本的には保護か囲うつもりだろうって思ってたから》
『私は、柄の無い諸刃の剣だ、と。収めるべき鞘に収まるモノなのかと』
《あぁ、羽根付きの》
「羽根付き柄無し諸刃剣、厄介だなぁ」
『しかも可愛い』
「それで君らが柄で鞘か、成程」
あぁ、コレ、下ネタっぽい。
しかもオッサン級の駄洒落。
《どっちがどっち?》
無垢なる破壊力よ。
自爆じゃんコレ。
「それは、追々で」
あんなに優秀な子だって分かってたら、ローズや些末な者の撒き餌になんて使わなかったわ。
確かにパトリックが守りたかった気持ちも分かるし、でも、コレも国の為。
でも、もう少し早めに意思確認をすべきだったわ。
けど、でも、よ。
まだまだコチラだって盤石とは言えない、それこそお互いに警戒して丁度良かった。
と、思えれば良いのだけれど。
『また寝る前に考え事かい、メアリー』
《ウォーターオパールの事よ、もう少し、どうにか出来たんじゃないかって。意図しないにしても、過分に苦しめてしまったんだもの》
『コチラが手を掛け目を掛ければ、それだけ別の意味で注目させてしまう、その意味でもしょうがなかったんだよ』
《けど、でも、よ》
『それこそ原石だったんだ、未知数の原石。それにだ、却ってブラフになっただろう、まさかあの原石がそんな扱いを受けただなんて。なら自分達の思う原石とは違う種類なのかも知れない、と、気にはしても他の優秀な者に常人なら関心を寄せる。もしかしたらコレこそが追い求めた原石かも知れない、そうであってくれ、とね』
《それでも、幾ら時代が良くなったにしても、婚約破棄された事は汚点よ。それこそ性癖を歪ませてしまったかも知れないじゃない》
『それか、元からか。それに問題は不幸な結末を迎えるかどうか、死が不幸な結末では無い、不幸なのは望まぬ結末を迎える事。出来るだけ手助けをして、後は見守る』
《その見守るのが大変なんじゃない》
『可愛い子なんだろ?』
《そうなの、飴色の髪の毛に、時折青にも緑にも見える大きな瞳で……》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます