二十句『学校』

三夏ふみ

『学校』

教室で 私はひとり 本を読む



アイツが来たから 帰る そう決めたから





屋上で 飛行雲を タバコがわりに



蒸暑い 揺れてたカーテン 消毒の匂い





校門で 呼ばれる声に 振り向きもせず





凪の街 どこでもない 造り物の午後



錆びた音 上がる階段 開かないドア





他人顔 ゆくあてのない 大通り



こんな日に 限って降らない 青い空



クラクション 君が手を引く ただそれだけ






端と端 見知らぬ景色 流されてく





なんでもない 横たわる 見知らぬ人と






もういいから と つぶやいて




田舎道 聞こえないふり させてよと



そのままで そのままの距離で いてほしい






海風が 髪かき上げて どこかへと


走る声 振りほどいて 波際に


着歴を ひとまとめにして 投げ捨てる




叫んで笑って 馬鹿みたい 君と私は









教室で ひとり私は 本を読む

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二十句『学校』 三夏ふみ @BUNZI

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