第4話

 ふと、なんだか奇妙な気分になって背筋が寒くなってきた。それも日台も同じようでニンマリとしている。まるで早く俺に聞けともいいたげの目をしていた。


「なんだかなあ。ちょっと、背筋が寒くなってくるような奇妙な話だが、その手紙は俺の友達の一郎が昔に書いたものなのか?」

「ドンピシャだとは思うぞ! そうだよ! 1980年に書いたんだよきっと」

「ふーん」

「あんまり気が乗らないようだな。こういう話はダメなのか? それとも怖いのか? いや、こわいわけじゃないよなお前は。もしかして、急に興味がなくなったとか言いだすなよ。こんな面白い話は他にはないぞ」


 俺もタバコに火を点けた。


「いや、何もかも懐かしいんだ。そうノスタルジーさ。できることなら例え幽霊でも会いたいと思ってな」


 日台は大笑いして、その拍子に手に持ったエスプレッソを少し零してしまった。

 近くを歩いていた気の利いたウエイトレスがすぐにテーブルを拭いてくれた。


「まあ、あれだな。お前さんは要するに懐かしいんだろ。昔の死んだって言う友達に会うのが目的でいいんだな。俺の目的は金さ」


 フリーの心霊写真ライターである日台は家賃のやり繰りで大変なのだろう。昔はその道ではちょっとした有名なライターで、ファンも多かったようだ。だが、このご時世で収入が激減したとも言っている。


 正直、俺は今の時点では弘子のことは眼中になかったように思う。


 洒落た喫茶のテラスから降り注ぐ陽光で、相変わらず日台の顔が眩しかった。

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