残り三チーム
上機嫌で鼻歌を歌うピンキー。
「ふんふふ~ん♪ さっきの戦いで良いもの拾っちゃった~」
「油断するなよ、ピンキー」
チーム鋼の魂と、パンツァースリーを倒した京天桃血。
フィールド制限もかなり狭まってきて、終盤というのを肌で感じられた。
「残っているのは三チームか……。優勝候補のガンガールはまだ残っているはずだ。あとの1チームは……どこだ……?」
「うーん、三チーム九人がフィールドにいるはずなので、三チームフルで残ってるはずなんですよねぇ……」
現在のチーム数、人数が常時表示される。
退場者名は瞬間的に表示されるが、その所属チーム名は出ない。
そのために影の薄いチームだと、個人名までは覚えていないのでプレイヤーからはわかりにくいのだ。
「うーん……まぁ一番強いのはガンガールで、残りの謎の1チームはあんまり派手に動いていないからそこまで重視しなくてもいいんじゃないかな? ――って、敵発見! 聖丸だよ! 単独行動してる!」
狭まりつつあるフィールドを移動中、桃瀬が発砲しながら報告してきた。
「単独行動か……」
「どうする!?」
この場合は瞬時に判断しなければならない。
理由としては、フィールドが狭まっていてそこから逃れている最中なのと、聖丸が逃げてしまうかもしれないからだ。
(この終盤で単独行動……ガンガールは三人残っているはずだ。罠か? いや、聖丸のことだからただの足手まといな行動ということも考えられる……)
追うか、警戒して追わないか。
どちらの行動を取るかというのは半々というところだろう。
「京君……あたしは追いたい。この手で聖丸と決着を付けたい……」
桃瀬の真剣な声色に、京太は応じることにした。
「わかった。ただしおびき出すための罠かもしれない。最初に桃瀬が一人で追いかけて、狙撃されなかったら俺たち二人も出て行くことにしよう」
「わかった!」
首肯した桃瀬は、すぐに前ダッシュで物陰から飛び出して、聖丸が移動した方へ向かった。
京太はそれを数秒観察するも、狙撃はないと確認した。
「よし、罠ではなさそうだな……俺たちも一緒に行くぞ。かおる」
「りょーかいです!」
京太も物陰から出たのだが――その瞬間、殺気を感じた。
他者には説明できない勘に近いものだが、何度もそれに助けられているので身体が勝手に反応する。
「ちっ、スキル【神一重】!」
京太の真横を掠めるライフル弾。
回避しなかったら、眼球を正確に貫いていただろう。
その次のライフル弾も見えていた。
京太の驚異的な動体視力で捉えたそれは、一発目を回避されたと瞬時に判断されて胴体狙いになったものだ。
FPSにおける部位ダメージというのは、頭部が一番高い。
しかし、相手が気付いて回避行動を取っているような場合は人体で小さな頭部に命中させるというのは至難の業だ。
そこで当てにくい場合は面積の大きな胴体を狙うという戦法である。
追加でもう一人分の射撃も放たれてきた。
こちらは若干の正確性に欠けるが、射撃の間隔が早い。
アサルトライフルか、マークスマンライフルだろう。
「クソッ!」
京太は再び遮蔽物へ隠れた。
いくら【神一重】で回避できるとはいえ、これだけの弾幕の中を進み続けるのは難しい。
攻撃間隔、射程距離というピンポイントの弱点を突かれているようなものだ。
以前の渋沢戦は当たり判定が弾幕の最初だけだったが、今回のFPSアバターはきっちりとすべての弾に当たり判定があって相性が悪い。
急いで桃瀬へ通信を入れる。
「桃瀬、こちらは敵と交戦状態になった。たぶんガンガール……銃子とらきめだ」
『了解だよ。こっちは聖丸を
「お、おう。そっちは任せた」
桃瀬のぶっ殺す発言。
それはいつもの各ゲーマーの煽りのような口調ではなく、冷静に怒りを込めて言ったものだった。
よほど聖丸との決着を付けたいのだろう。
「さてと……FPSジャンル最強のアバターとの勝負だ。こちらも気合いを入れていくぞ、かおる」
「はい、勝って撮れ高をゲットですよ!」
二手に分かれた
***
桃瀬は聖丸を追っていた。
時々後ろ姿が見えたときに狙い撃つのだが、すぐに遮蔽物へ隠れてしまって上手く当てられない。
走るスピードは桃瀬の方が速いので、このまま追い続けて有利な場所へ出ればトドメをさせるだろう。
しばらく走っていると、その狙い通りの場所へと出ることができた。
「追いつめたよ、聖丸!」
「くくく……ははは!! それはどちらが追いつめたのかな!?」
「えっ」
開けた地形で待っていたのは、聖丸と三人のチーム――サバイブルだった。
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