京天桃血VS戦車VS巨大ロボ
ミリタリーボマーズを退け、その持ち物を漁っている京天桃血。
その中には大量にボムが入っていた。
「どんだけボムが好きなんだ……」
「名前に入ってるくらいですからねぇ」
「なんでボムに拘りがあるんだろう?」
その言葉に、退場途中だったミリタリーボマーズたちがオタク特有の早口で喋り始めた。
「それを説明するにはFPSの歴史を説明しなければならない。だがさすがにFPSの成り立ちから話していては日が暮れてしまう。ここは爆弾解除のように手早く説明してやろうではないか。今のバトロワやスキル制チームシューター以前の主流とは何か? そう、爆破系ルール! それまではチームデスマッチなどが主流だったのだが、爆弾を設置するテロリスト側と、守備側のカウンターテロリスト側が争う爆破系ルールが流行り、とても戦略の幅が広がって――」
「あ、はい……」
「うちの軍曹殿はヘビーマシンガントークでありますな……。まぁそういうルールで設置型の爆弾を使うので、せめてもの代用としてボムを集めていたであります!」
「がはは! 年寄りたちの昔話ってやつだ! まっ、銃子のお嬢ちゃんは最年少で当時の爆破系の女王となったけどな!」
どうやらミリタリーボマーズのメンバーはそれなりの年齢らしい。
ふと京太は気になることがあった。
「小型のボムは普通に投げ物として落ちているが、建物を爆破するくらいの大型ボムは見たことがない。どこで手に入れたんだ?」
「敵にそんな有用な情報を与えると思っているでありますか?」
「……まぁ、そうだよな」
一見冷たいようだが、これが普通だ。
京天桃血とミリタリーボマーズは勝敗を競った敵なのだ。
「……と、思いましたが、我らミリタリーボマーズに勝った京天桃血に優勝してもらった方が、こちらの評判も上がりそうでありますな」
「少年ジャ○プみたいなノリになってきたな……」
「大型のボムは時間で出現する補給物資に入っていたでありますよ。持ちきれず、まだ一つ残しておいたのでから場所を教えるであります。他の誰かに発見されてなければ健在なはずであります」
彼はマップの座標を指差してくれた。
ここからそう遠くない場所だ。
「京天桃血を絶望一歩手前まで追い込んだボムが入っていたパンドラの箱、最後には京太殿の希望が入っているでありますよ」
「希望……?」
「グッドラック。絶対に銃子嬢ちゃんを呪いから解き放ってやれよ」
ミリタリーボマーズは豪快な笑みをニカッと浮かべながら、その場から去って――否、その前に異変が起きた。
遠くから凄まじい地響きと共に轟音が聞こえてきたのだ。
「な、なんであの二チームが一緒にいるんだぁ!?」
「んー、爆破系FPSと乗り物系FPSは相容れないジャンルだね」
「撤退であります! 撤退! 二度やられるのはごめんでありますー!」
今度こそ戦闘地域から全力疾走で脱出していくミリタリーボマーズ。
残された京天桃血は、音がしてきた方向を呆然としながら眺めてしまう。
「戦車とロボット……?」
京天桃血の三人は、会場に遅刻したためチーム紹介PVを見ていない。
そのせいで大会に戦車とロボットを持ち込んできたバカがいるとは知らなかったのだ。
迫ってくる巨大な戦闘車両と、戦闘人型機械。
さすがに予想外すぎて反応が遅れ、対処できずに棒立ちになってしまっていた。
もう眼前に迫ってきて、戦車の主砲と、巨大ロボのロケットパンチポーズのようなモノが向けられる。
「まずい!! やられる!?」
――そう思いきや、その大口径の主砲も、巨大なロケットパンチも飛んでこなかった。
ますます意味が分からない京太だったが、配信者魂からかかおるがツッコミを入れた。
「あの~? なんで攻撃してこないんですか?」
「お、おい。そんな敵が律儀に答えてくれるはずが……」
その瞬間、戦車とロボの
「よくぞ聞いてくれたぜ!! これには深い事情があってな!! 実は防具として乗り物を強引に持ち込めたまでは良かったのだが、武器の持ち込みはNGということで武装が全部取り上げられて、しかも乗り物による直接の体当たりなどもしてはいけないのだ!!」
「うわ、見て見て京君。めっちゃ喋ってくれてるよ……なんで?」
「そういえば、WROの知り合いが言ってたな……。こういうメジャーではないジャンルのオタクたちは、普段話せる機会が少ないから早口オタクになりやすいと……」
その流れが奇抜すぎて圧倒されていたが、さらに巨大タッグ連合は動きを見せてきた。
戦車ハッチから顔を出している兵士アバターと、ロボの手の平の上に乗っていたパイロットアバターが銃を構えて撃ってきたのだ。
「情けないことに、この豆鉄砲が今のオレたちの武器だぜ! 途中で戦い合った〝パンツァースリー〟と〝鋼の魂〟が銃で撃ち合うも、その装甲に弾丸が通らずに互いに千日手! 途中で意気投合してタッグを組んだということだぜ!!」
「なんてハタ迷惑な友情タッグなんですか!? 配信的にはとても映えますけど!!」
「いや、喜んでいる場合か、かおる!?」
京太たちも撃ち返すが、その分厚い装甲に手持ちの武器ではビクともしない。
生身の人間を狙おうとするも、ハッチやロボアームの隙間を使って、常時遮蔽物で有利な位置取りをしているのと一緒で倒しきれる気がしないのだ。
たとえダウンさせたとしても、土台になっている戦車やロボが安全地帯に移動して復活させてくるだろう。
「チッ、これは意外に厄介だぞ……!」
幸いなことに相手からの射撃はそこまで命中率が高くないので、今すぐにやられるということはなさそうだ。
「銃がダメでも……これならどうだ!」
京太はミリタリーボマーズが大量に持っていた小型のボムの安全ピンを引き抜き、それを投げつけた。
戦車とロボの間で爆発したのだが、表面を少し凹ませただけだ。
「あぁー!? オレたちの大切な乗り物に傷を!? この世界でも修理費が死ぬほど高いんだぞ!? 所持金マイナスになって借金のカタで強化人間にされたらどうすんだ!!」
「知るか! くそっ、ダメージは軽微というところか……これでは破壊しきれない……。逃げるしかないぞ!! 二人とも、ついてこい!!」
「やはり巨大は最強! 乗り物こそ至高! 鉄の塊の前には誰もが敗北するんだぜ!!」
逃げる京太、追いかけてくる巨大タッグ連合。
桃瀬がかおるを抱え、京太もひたすら走る。
アバターの身体能力のおかげで何とか追いつかれないが、それでも背後からの銃弾のまぐれ当たりで少しずつ削られていく。
リスナーたちも、会場の実況もこのまま京天桃血が負けるかと思っていた。
――しかし、京太が向かう先にはミリタリーボマーズが教えてくれた、大型ボムが残っているという補給物資があったのだ。
(まだ希望はある……!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます