三題噺「瓜・嘘・缶」

 「嘘缶」を買った。

 缶の裏を除いてみると、「嘘が入っています」と書かれている。

 一体、具体的な中身は何なのだろう? と思い、振ってみる。

 ……音が鳴らない。

 なら、中身は何もないのか? そう思い、缶を指で弾いてみる。

「いてっ」

 指の爪が割れそうなほどの痛みが襲った。

 なるほど、固形物が入っていてそれで詰まっているのか。

 そして再度、缶の中身を確認する。

 一般的な缶詰だ、正面には昔のような筆記体で嘘缶と書かれており、裏にはバーコードなどがある。

「さて、開けてみるか……いや、どうするか」

 こういうのは、記念に取っておいたり、開けてはイケナイ物のような気がする。

 でも開けたい、開けてはいけない。

 しばしの葛藤の末、開ける事を決意。

 缶の上部にある、プルタブを手にし思いっきって引く。

 すると中には……緑色のなにかが入っていた。

 逆さまにして取り出してみると、その正体がわかる。

「うりぃ?」

 瓜だ……緑色の一年草の野菜、瓜だ。

「嘘って……嘘が入っているのが嘘だったのか」

 騙された、と思い側の缶を乱暴にゴミ箱に入れる。

 瓜はしっかりと家に持ち帰り、調理した。

 おいしかった。

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