第2話 あはれなり

 あぁ。私は睡眠欲が消えたのかぁ。森に行っても一切眠くない。ならば、少しこの世界を散歩してみるか。この道は獣道かな。いや、これは街道跡か。所々爆発の後も見受けられる。軍事クーデターでもあったのか。よし、道なりに進んだら次の街があるだろう。


 お、少年が二人、先程の町に進んでいるな。逃した奴らに唆されたのか?まぁ、丁度いい。私も変わらぬ森の景色に飽き飽きしていたのだ。楽しませてもらおう。


「兄さん。やっぱ止めようよ。」


「誰も居ないならそこは食糧が無料で貰える宝箱だ。行かない理由があるか。今日はご馳走だな。ご馳走の為なら恐怖なんてない。」


「そうか。恐怖などないのか。面白い。因みにだが、先程までお前が話していた相手はもうここにいない。ここにあるのは、脱け殻だ。宿主は消滅したのか、別の場所世界に行ったか、それは神のみぞ知る。

 さぁ選べ。この身体を殺し、お前の身体は私に乗り移られるか、それとも私に今ここで殺され、今の抜け殻は私を宿主とするか。私はどちらでも良い。」


「何を言っている…の…だ?」


「解らぬか?なら、私が決めよう。お前は死ね。」


 私は抜け殻の腰から剣を抜き、少年の首に刃を向けた。少年は腰を抜かし走れないようだった。しかし少年は地を這って逃げようとしていた。それがなんだか、面白く、愛嬌が湧いてきた。


「兄さん。冗談ですよ。ごめんなさい。さぁ一緒にいきましょう。」


「お前は...誰だ?」


 私は再び剣を抜き、少年の腕と足を切り落とした。


「アッ...ああああああああああああああ」


 私はその声が途轍もなく不快であった。私は男の首に刃を持っていき振り降ろした。


「待っt」


 私は暫くこの抜け殻で過ごすことにした。川に入り服を洗った。やはり、身体を持つと、移動にかかる時間が非常に長くなった。また、食欲と睡眠欲も復活した。私が新たな町へ移動中一人の騎士に声をかけられた。


「おい。誰だ。現在町から出る事は禁止されている。危ないから私が町まで送っていこう。その前に名を名乗れ。」


「立派な馬ですね。名前ですか?知りません。貴方は?」


「私はサクリフィーチュム。忠誠の騎士。名前を忘れたとはどういうことだ?」


「あ、ごめんなさいね。余計な時間を取らせてしまって。」


 私は自らの首に剣を刺し意識の状態に戻った。


「‼︎」


 サクリフィーチュムは咄嗟に剣を構えガードをした。何かに勘付いたのだろう。流石だ。しかし私を剣で斬る事はできない。私は彼に近づき憑依をした。


「非常に良き。研鑽されている。大切に使おう。」


 ん?


「誰だ!」


          …勘違いか。


 私は馬に乗り町への移動を再開した。


         〜隣町〜


 町では騎士たちが町を守るため武装していた。


「先程出陣した騎士7名のうちの1名であるサクリフィーチュム上級騎士が患われたそうだ。彼は馬に乗りわが町へ近づいてきている。いいか。

 敵はサクリフィーチュムの見た目をした何かだ。情報によれば感染するらしい。もし仲間が感染すれば、その仲間を殺せ。これを聞いてる全員が感染する可能性がある。

 しかし我々はここで戦わなければならない。いいな!」


了解!


「馬に乗れ!槍を用意し、馬場に移動しろ。彼が現れた瞬間、私が突撃する。もし私が病んだなら私に槍を刺せ。」


これは異常事態だ。残りの6名の騎士のうち一名は我が町に帰還し、サクリフィーチュムの事を伝え、残りの5名は偵察を続行し、任務を終え帰還した。あの町は蛆で溢れ、血肉を烏が頬張っていたらしい。町に生き残りは居なく、皆死に絶えていたそうだ。また途中に少年の死体もあったらしい。手首、足首そして首が切れたヤツがな。

はぁ。私はこれが終わった時生きては居ないだろうな。


遂に角笛が鳴った。 



         

         来たぞー




「ほう。非常に美しい城塞都市だ。街が正しかったな。」


ん?騎馬が一騎できた。一騎討ちか?いいだろう。うけてたとう。


「私はユーティティア。最上級騎士、正義の騎士であり、騎士団長である。そなたに一騎討ちを申し込む。そして、私が勝った暁には其方にこの国から永遠に立ち去る事を命ずる。」


「そうか。貴女は女か。では私も加減せねばな。まぁいい。いいだろう。その条件のんでやろう。そうだ。名を名乗らねばな。私の名はサクリフィーチュム、忠誠の騎士だ。」


「それはお前の名ではない。お前が着ている鎧の十字は輝きをなくした。それはお前の心の汚さだ。」


「違うな。ただの金属の酸化だ。まぁいい。始めよう。」 


女は槍と盾を構え、屈強な戦馬に乗り、私に突撃してきた。私は右手で剣を抜き、左手に盾を構え、槍を受け流した。女の騎馬は方向を変え私の馬を狙いにきた。私は馬から飛び降り、剣で槍の穂を切り落とした。

 女はその瞬間、飛び上がりを私の頭蓋骨目掛けて振り下ろしながら、馬から飛び降りた。私は盾でガードし、すかさず盾撃を繰り出した。女はバク転をし私と距離をとった。女は直様体勢を整え、私に槍を投げた。私はそれも盾でガードした。女は帯剣を抜き、盾を構え近づいてきた。私も盾を構え近づいた。お互い、じわじわと近づき、遂に剣を振った。最初の一振りを私は剣で受け、そこから蹴りに持っていった。私は上から剣を振り下ろした。女はそれを剣と盾で受けた。私は盾で女を押し飛ばした。私はそこへ走り高く跳びながら剣を逆手に持ち替え、上から渾身の力で刺した。女は盾で防ごうと構えたが、刄は盾を貫通した。

 

「ああああ」


「哀れだ。何もお前は成せなかった。」 


「どうかな。」


「ああ、死んだか。」


ん?なんだ。騎馬の音だ。まさか。


「何故だ。一騎討ちではないのか。海千山千。許されぬ。」


            つづく
















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