第7話

 ブゥンブゥンブゥンテレッテッテッテー♪


 やたら陽気な音楽で目が覚める。

 どうやら音源は依織のスマホらしい。

 自分のスマホで時間を確認すると9:00。

 ……そういえば依織はオフ会があるんだったか。


「ほら、依織。オフ会あるんだろ」

「……んん」


 声をかけると依織はムックリと体を起こした。

 オフ会のときだけは起きるのが早いんだよな。

 いつもこうだったらいいのに……。


「……あ、そうだ。たーくんって今日なんか用事ある?」

「え? いや特に無いけど」

「じゃあ、今日のオフ会ついてきて」

「いいけど……なんで?」


 オフ会は依織と他数名で構成されるゲー友だけで行われている。

 俺も何度かこないかと誘われたが断ってきた。

 俺は一応ゲーマーではあるが、依織や依織のゲー友ほど廃ゲーマーというわけでもないし、普段のゲームにも参加してないからだ。

 そんなわけで、今まで一度も参加したことはないのだが……。

 誘われたことはあったけどついてきてと言われたことは初めてだ。

 

「……今日やりたいゲームが4人必要なんだけど3人しか居ない」

「ああ、そういうことね」


 なるほど、人数合わせか。

 ……そういえば、あの人達と顔合わせるのっていつぶりだろ。

 


 午前9時、渋谷ハチ公前。

 俺と依織は集合場所へとやってきた。

 しかし、まだ誰も来ていないようだ。

 ブーッブーッブーッ

「ん?」

 依織のスマホが鳴る。

 依織がスマホを確認すると、画面を俺に見せてきた。

 そこには、渋谷地下街のマップが表示されていて『ここ』と書かれた矢印がある。


「ここにこいってことか」

「……みたい」

「とりあえず行くか」

「……うん」


 地図のとおりに進んでみると、そこには地下への階段があった。

 階段を下ると、広場に出た。

 一種の休憩スペースのようなもので、多くのベンチが設置されている。

 そこのベンチの1つに見覚えがある目立つ格好をした人達が座っていた。


「お、きたきた!」

「あら本当」


 その人たちに近づくと、こちらに気づいて手を振る。


「お久しぶりです、レイオットさん、ルウナさん」


 レイオットさんははピンク髪で身長がたかい女性で、基本落ち着いてる。

 ルウナさんは茶髪のボーイッシュの女性で、活発な人だ。

 2人とも俺たちより少し年上の人達だ。

 いつもは依織とこの2人でゲームをしている。


「そして〜、カカオちゃんも久しぶり〜!」


 すると、ルウナさんが依織に抱きついた。

 そういやルウナさんってやたらと依織に抱きつくんだったっけ……。


「あ゛〜、やっぱりカカオちゃんのほっぺのもみ心地良すぎぃ〜」


 依織がされるがままに頬を揉まれている。

 上に下に右に左に……。

 まるで餅つきでもしているかのような光景だ。


「……あの、そろそろ行かなくていいんですか?」

「おっとそうでしたね。それじゃ行きましょうか」


 俺達はレイオットさんの案内のもと、目的地へと向かった。

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