第3話

「おい、自分で歩け」

「……嫌」

「今日もお熱いねー!」

「やかましい!」


 現在、遅刻しないように走っているのだが、俺の背中にはゲーム中毒者が引っ付いている。

 まるでユーカリの木に引っ付いているコアラだ。

 運動部の俺が結構本気で走ってるのに落ちる気配はない。布団を話さない握力は伊達じゃない。

 そしてそんな俺と並走しているのは同じく遅刻しそうな友達の瑞館春樹みずたてはるき

 コイツは俗にいう陽キャだ。

 クラスの中には友達しかいないというコミュ力を持っている。


「おはよう、三坂ちゃん!」

「……おはよ」


 俺の背中の上の依織と瑞館は手を振りあってる。

 コイツら呑気だな。


「…………10!」


 校門の前の生徒指導の園崎そのざきがカウントダウンを始めた。

 遅れたら反省文を書かされるから遅刻はしたくねえ!


「うおおおおおおおおお!」

「ちょっ、槙野!」


 俺は全速力を出して瑞館を置いていった。

 すまない、わが友よ。

 お前の雄姿は忘れない。


「……閉めろ!」


 園崎がそう言った時には、俺はギリギリ校門の間を通り抜けた。

 ちなみに瑞館は届かず、閉まった校門と正面衝突した。

 あ、園崎に捕まった。

 反省文、頑張れよ。

 

「ほら、起きろ依織」

「……んにゃ」


 俺の背中の上で爆睡していた依織が降りて高1用の昇降口へ向かう。


「……ありがと」

「へいへい」

 

 昇降口に入る寸前、振り向きざまにそう言ってきた。

 ……これだからうちの幼馴染は。

 憎めないんだよなぁ。

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