第239話どす黒い泉


「こんにちは」


「ステラさんですか?」


「そうです。丸々3日です?」


「そうですね」


ドス黒く、バチバチに危険そうな泉に雫さんが沈んで行って、はや3日


一向にあがってくる気配はない


「変なこと言ってたんですよ。雫さんが」


「どんなことを言っていたんですか?」


「マップのここが光ってるって言ってて」


聖域を歩き回りながら、どこに行っているのかを聞くと


こっち方面でマップが光っている、としか返答が返ってこなかった


「明らかにおかしいこと言ってたのに、、気づけなかったなぁ」


「乗っ取りを警戒してるんですね」


「おかしかったからな」


ブクブクブク!!


「警戒」


突如水が溢れ出す


「肉の触手?」


雫の背から生える肉の触手が地上へと出てき、微動だにしなかった


「???」


「あ!副マス知ってますか?最近ナメと九連さんがいい感じらしいですよ」


「今ここで話すことか?」


「どうせ襲ってこないですし、触手ごときが襲ってきても負けないんで」


「・・・それもそうですね」


気を抜いた瞬間


「ア!」


「杏夏さん!?」


触手に足を掴まれ、泉へと引きずり込まれる


「素が、、フゥ―大丈夫かな?」


泉の中から太陽を直視した時よりも、眩しい光が溢れ出す


ステラの目がやられる


「退避!退避!あの人悪そうな顔してた!」


「副マス!魔力放出して下さい!」


「はいよ!」


タイマン戦で放った触手を優に超えるほどの、触手が杏夏目掛けて襲い掛かっている


「止まれ」


「言霊か」


「雫さん乗っ取られてないですよね?」


「乗っ取られていたら、リアルのお前に言うだろう」


「それもそうですね」


長時間泉に入っていたとは思えないほど、雫さんは濡れていなかった


「あともうちょっとで完全体に成れそうだ」


「それで私と戦うんですね」


体を伸ばし、パキパキと骨を鳴らす


魔力濃度が一気に上がる、魔力が少ない戦士系は車酔いの感覚に襲われるだろう


「言ったら悪いですが、真面目に、油断せずにやる私は強いですよ」


「そうか。基本的にそれ言う時負けてる気がするがな」


「言わないで下さい」


「じゃあ行くぞ」


雫の気配がグンっと強くなる。それと同時に空中にフィアが出現する


「融合」


「・・・あ!」


その時杏夏は思い出す。セレス、ヤド、ミラが融合されていることを


「超超超融合!全部の力を解放だ!」


「装備ページ1!魔導士降臨!神装!神々の杖!魔神の杖!」


「お前と戦うのは2回目だな!」


「先手は貰います。ゴットオブカオス!」


白と黒が混じり合った魔法は、雫に命中し、とてつもない距離まで吹き飛ばさせる


(あの人なら一分ほどで帰ってくる。本気でやらな)


大空に大きな魔方陣を展開する。それと同時に細々とした小さな魔方陣も展開する


「発見」


「最大鼓動だ!」


空中をジェット機を超えるスピードで飛んでいる雫を発見するが


それ以上のスピードを出され、目では追えなくなる


「マップ展開」


「忘却の一撃!」


「鎖よ!」


(耐えろバリア!私にさえ剣が振り下ろされなければいい!)


後ろから救済の剣が振り下ろされる


バッキン!!


「ッチ!影の衣」


救済の剣は杏夏まで届かなく、後ろから迫って来ていた鎖は【影の衣】で回避している


「止まれ時よ」


「覇者たる覇道!」


2秒、3秒ほど時が止まる


「やるやん」


ザクザクザクザク!!!!


「油断しなかったら強いんですよ」


おびただしい数の剣が、雫の体へと刺さる。キューブ鎧を貫通しながら


「クエスト完了だ。手伝いサンキュー」


そんなことを言いながら、雫はまたも黒い泉へと沈んで行った


「ちょうど落ちたら泉に沈む所ですね。なんのクエストだったんだ?」


(というか怖いな。あの人、一瞬で死ぬ所だった。魔方陣使わなかったし)


空中にある魔方陣を消しながら、またも泉の前で雫が帰ってくるのを静かに待つ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る