徘徊の夜
きじまっち
第1話
自販機の前でコーヒー飲み終えてパジャマのままで海を見にゆく
夜勤へと向かう途中に落ちていた茄子をポストの頭にのせる
矢野さんのおむつを替える薄闇に始発電車の音を聴きつつ
徘徊の内村さんをひきとめてケアセンターで見ている日の出
もし母が生きていたならぼくのいるこのセンターに入所させたか
ふるさとの母の葬儀をおえた夜はきみの乳房にさわれなかった
前向きという暴力をふりかざすきみの背中を抱き締めている
梅ちゃんの誕生日だねおめでとう(だれも見舞いに来てくれないね)
もういちどひとの夫になることを恐れ映画の半券すてる
喰われたくなくて雌から逃げたのか布団のうえにかまきりが来た
ありがとうだけしか言えぬ志田さんに触れて何度も言わせてしまう
さっきまで別れ話で泣いていたきみが笑って肉に喰いつく
ほら見てときみが笑顔で指さした交尾しているミヤマカミキリ
「わたしはね遺産いっぱいあるからねあげる」梅ちゃん皆に言ってる
この先の信号がもし青ならば流されてまた結婚となる
夜勤終えきみに抱きつく「老人の糞をいじった手で触れないで」
莫大な遺産をくれる約束をした梅ちゃんが転所してゆく
お前まで俺を嫌うか公園のベンチの札に「さわらないでね」
終の場へ転所してゆく梅ちゃんのピンクのパジャマ棄てられている
くるくると指をまわしてつかまえたトンボをはなつ梅ちゃんの部屋
徘徊の夜 きじまっち @kijimatrix50
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